WANIMA、「Everybody!! TOUR」アリーナ編が大阪城ホールよりスタート
3月11日、WANIMAが「WANIMA EVERYBODY!! TOUR」アリーナ編を大阪城ホールからスタートさせた。
14,000枚のチケットは即完売。WANIMAのバンドカラーでもある、赤・黄・緑のラスタカラーに染まった大阪城ホール周辺は開場前から熱気に溢れていた。
皆、WANIMAのライブを楽しみにしているのはもちろん、今回のライブは大阪城ホール初となるセンターステージでのアリーナスタンディング形式。誰も味わったことのない体験への期待で、多くのファンが心を踊らせていたはずだ。場内の扉をくぐると、アリーナエリアの中心に配置された正方形のステージに対してあちこちから驚きの声が上がり、「え!?これ、ヤバくない?」と小走りで自分のエリアへと急ぐファンが続出。開演までは80年代〜00年代初期のヒット曲、CM曲、珍曲などが流れ、ライブ中の諸注意が記されたプラカードを持ったカッパの着ぐるみが客席を練り歩く。観客をとことん楽しませようとするWANIMAらしい姿勢がうれしい。
定刻17:00を少し越え、BGMに合わせて大きな拍手が鳴り響くなか客電が落ち、最新作「Everybody!!」にも収録されているオープニングSE「JUICE UP!のテーマ」が鳴り響く。メンバーがステージに姿を現すと、ホールの中心へ向けて14,000人の大歓声が放たれた。
皆の笑顔と歓声を体中で受け止めながら3人が奏でたのは、最新作から「OLE!!」。オープニングから満面の笑みで一気に曲を畳み掛け、14,000人は拳を突き上げ、歓喜の踊りでそれに応える。3人の演奏には重量感があり、それでいてライブバンドらしいグルーヴ感で全身が揺らされる。冒頭の数曲だけでもバンドの好調な様子が伝わってくる。「WANIMAと皆さんのとんでもない一夜がやってきました!」というあいさつから始まったKENTAのMCは異常なほどハイテンション。
それは「MCで声が枯れそうや」とKENTA自身が苦笑いするほど。それでも彼はステージ上を駆け回り、14,000人の顔を全て見んばかりの勢いでホール中を見渡す。KO-SHINの開催宣言から始まった中盤戦は、底抜けの明るさで押しまくった序盤からは雰囲気を変えて、「CHEEKY」からスタート。タイトな演奏はキープしながらも、観客をあの手この手で盛り上げることにも余念がない。しかし、WANIMAのライブは「楽しい」のひと言で済ませられるようなものではない。「THANX」では3人とも引き締まった表情でメッセージを届け、KENTAはステージに何度も拳を打ち付けた。爆音かつ、高速で演奏が鳴り響くなかでも、3人の一挙一動にグッとくる。
ライブのちょうど中盤では、「もう手を挙げるのとかキツイかなと思ってこんな時間を用意しました」とアコースティックタイムへ突入。KO-SHINはアコギ、FUJIはパーカッション、そして、KENTAはハンドマイクで、数々の人気曲をいつもと違うアレンジで聞かせる。ここで改めて気付かされるのはWANIMAの曲のよさ。どんなアレンジだろうが、メロディの瑞々しさが際立っている。この日は3人の演奏だけでなく、演出も群を抜いていた。楽曲の展開に合わせて緻密な動きを見せる照明、予想外の展開で楽しませる特効、そのまま商品化できそうなぐらい見応えのあるスクリーン映像、最前列でもスタンドの最後方でも楽しめるような工夫が随所に凝らされていた。しかし、決して演出過多には陥らない。あくまでも主役はステージ上の3人なのである。
後半戦は、「東北も、熊本も、みんな、ともに生きるよ!」というKENTAの叫びとともにかき鳴らされた名曲「ともに」からスタート。WANIMA初のバラード「SNOW」では、客席のあちこちで自然発生的にスマホのライトが掲げられ、感動的な場面となった。「オドルヨル」ではタイトル通りのダンスタイムに突入し、14,000人が本能の赴くままに踊り狂った。他にも趣向を凝らした演出と抜群の構成でこちらの集中力を一切途切れさせない。どこで切ってもエンディングになり得ると言っても過言ではない内容だ。しかし、今やこれだけの大会場を熱狂させるまでになったWANIMAも、そのスタートは小さなライブハウス。大阪での初ライブは100人も入れば満員になるほど小さな場所に、2、3人の客を集めたところから始まったという。そんなエピソードを披露したあとにKENTAは叫んだ。「WANIMAをここまで連れてきてくれてありがとう!これからもWANIMAの3人をよろしくお願いします!こんな見た目やけど、死ぬまでみんなの味方やけん」と。
“エビバデ!”のコールアンドレスポンスで会場一体となって本編を終えたあとはアンコール。ここでプレイしたのは、「Everybody!!」未収録の新曲「りんどう」で、この日が初披露となった。彼らの故郷・熊本では秋になるとりんどうの花が咲く。上京して以降、故郷のことを思うとき、そんなりんどうの姿がKENTAの胸に浮かぶようになったという。これは3人がこれからも歌い続けていきたいと強く願っている曲で、特に3月11日という日に披露したかったとその想いを語った。<弱いままで強くなれ><何処にいても枯れないように 願い歌う 祈りの詩>と歌われるこのスローチューンは、郷愁を呼び起こすメロディとシンプルなアレンジが印象的。この日一番の熱と想いがこもった演奏に、皆はじっと耳を傾けた。
新曲の初披露を終えたあとは、アナログながらも前代未聞の手法でアンコール曲を募ったり、最後の、本当の最後まで質の高いライブを繰り広げ、大喝采のなか2時間半に及ぶステージを終えた。文句のつけようのないロックエンターテインメントだった。これが10年代のロックショーなのだ。自らを常に更新し続けながら、WANIMAは新たな価値観をシーンに打ち立てようとしている。近所の兄ちゃんのような親しみやすいルックスとキャラクターだが、類まれなる才能と、想像を絶する努力と、鉄壁のチームワークでシーンを駆け上がってきたWANIMAの冒険はまだまだ続く。