玉置浩二がロシア国立交響楽団と初共演伝説的な一夜のライブ・レポート公開

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今年で5周年目を数える玉置浩二【PREMIUM SYMPHONIC CONCERT】の最新シリーズ【THE EURASIAN RENAISSANCE “ РОМАШКА(ロマーシカ)”】が、7月19日、東京芸術劇場にてツアー・ファイナルを迎えた。

【PREMIUM SYMPHONIC CONCERT】は、玉置とオーケストラの共演によるコンサート・シリーズで、2015年2月の初演から今年4月の”薬師寺公演”まで、実に80近くにもおよぶ公演数を誇る。その5年間の集大成として、6月に福岡でキックオフしたのが、新たなコンサート・ツアー【THE EURASIAN RENAISSANCE “ РОМАШКА(ロマーシカ)”】だ。

とりわけ7月17日に東京・サントリーホール 大ホール、19日に東京芸術劇場で行われた追加公演は “特別公演”とも題され、日本から遠く離れたモスクワを本拠地とするロシア国立交響楽団《シンフォニック・カペレ》の参加を受け、特別な演奏プログラムや演出を用意。かねてより海外楽団との共演を望んでいた玉置にとって、悲願が叶った形であると同時に、大きな挑戦として実現したコラボレーションでもあった。

なお会場では、玉置浩二の肖像画ポスターが限定先行販売された。この肖像画は、これまで同シリーズ公演のアートワークを手掛けてきた横尾忠則が、本公演のため特別に書き下ろしたもの。横尾本人が「最初は真正面から見た玉置浩二さんの肖像画を描いたが、これは玉置さんじゃないと思った。その時、阿修羅像の三面体が頭に浮かんだ。そこで玉置さんを阿修羅像にしてしまおうと考えた。『命を与える者』の象徴です」と語る通り、鮮烈な仕上がりとなった同作は、音楽ファンのみならずアート・ファンの間でも大きな話題を呼んでいた。

公演は、14型大型編成、総勢約100名に及ぶロシア国立交響楽団のパワフルな演奏で、より一層のふくよかさ、威勢の良さを宿した「歓喜の歌(管弦楽)」によって開幕。 その後「キラキラニコニコ」「いつもどこかで」に続いて披露された「ぼくらは. . .」は、本ツアーに際し、新しくオーケストラ編曲されたもので、絶妙なバランスで抑揚するオーケストラ・サウンドのなか、玉置の艶やかなヴォーカルが揺蕩っていく。

そして終盤に向けて、一気にうねりを上げる演奏に伴い、玉置もクライマックスを印象付ける倍音ヴォイスのロング・トーンを披露すれば、客席からこの日最初の歓声が。続く「ロマン」と「FRIEND」も本公演のために新たに編曲されたものとなっており、本公演のチャレンジングな側面が感じられる2曲で第1部の幕は閉じたのだった。
 

玉置浩二【THE EURASIAN RENAISSANCE “ РОМАШКА(ロマーシカ)”】

第2部は、ロシア国立交響楽団による「ダッタン人の踊り」からスタート。ロシアの作曲家、アレクサンドル・ボロディンによるオペラ『イーゴリ公』からの選曲で、まさしく雄大なロシアの国土を連想させる、哀愁と情熱を兼ね備えた演奏に、“ロシアで最も優れた交響楽団”と称される彼らの本領が垣間見える一幕に。

コンサート・マスターを務めるアンドレイ・クドリャフツェフは、「心で歌っているという印象。魂を使って声を出しているように感じます」と玉置の歌声に太鼓判を押しているが、今回の特別公演においては、指揮者のデヴィッド・ガルフォースの存在も欠かせなかった。

新編曲の一つ「行かないで」の悲愴から一転、演奏が勇ましく、スリリングな空気感を纏い始め、玉置の歌声にもダイナミズムが溢れた「JUNK LAND」では、そんな両者を繋ぐピンと張り詰めた糸が千切れないよう、終始気を配り続けるデヴィッド・ガルフォースの指揮者としての手腕が光った。

「ワインレッドの心」〜「じれったい」〜「悲しみにさよなら」と安全地帯の楽曲を繋げるメドレー、オフマイクで驚異の声量を見せつける場面も見られた「夏の終りのハーモニー」で第2部が終了するも、観客の興奮は冷めることなく、コンサートはアンコールへと突入。

ベートーヴェンの「田園」に自身の代表曲「田園」を続ける心憎い演出では、総立ちの観客も手拍子でコンサートに参加する。そして再びマイクを通さない肉声の歌を、玉置が約1分間にわたり披露した「メロディー」で、伝説的な一夜はフィナーレを迎えたのだった。

【THE EURASIAN RENAISSANCE “ РОМАШКА(ロマーシカ)”】の東京芸術劇場公演の模様は9月16日12:00よりテレビ東京系全国6局ネットにて放送予定となっている。今年4月29日に行われた玉置浩二ビルボードクラシックス公演、「PREMIUM SYMPHONIC CONCERT IN 薬師寺」の模様も合わせた特別番組として放送予定。

【PREMIUM SYMPHONIC CONCERT】に関しては、5年間にわたる集大成の結実によって新章をスタートさせた玉置だが、11月16日には安全地帯として、初の阪神甲子園球場ライブ【安全地帯 IN 甲子園球場 「さよならゲーム」】が控えている。ヒット曲や名曲を織り交ぜたセットリストになるとのことだが、そこに立つのは“今”の安全地帯であり、あくまで現在進行形のバンドとしてのパフォーマンスが期待できるだろう。この日限りの大規模ライブ、往年のファンならずとも必見だ。

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