「SPRING BREEZE 2018」が終演、心地よい春の日比谷野音にくるり、ペトロールズら6組登場
今回で3回目となるスペースシャワーTVが主催するライブイベント「SPACE SHOWER TV Presents SPRING BREEZE 2018」が、4月15日に日比谷野外大音楽堂にて開催された。
今回ラインナップされた出演者は、くるり、竹原ピストル、CHAI、ペトロールズ、MONO NO AWARE、LUCKY TAPESの6組。
それぞれが独創的な音楽表現を追求しているバラエティに富んだバンド/歌うたいの貴重な共演は、イベントの開催発表時から大きな注目を集め、チケットはソールドアウト。開演前から自由なスタイルで音楽を楽しもうとするオーディエンスたちが発するとてもいいムードが会場に流れていた。
また当日の早朝まで嵐が吹き荒れていたが、雨は昼ごろには止み、イベントタイトルを象徴するように快適な春風を浴びれられるなかで、トップバッターを務めたMONO NO AWAREのライブがスタートした。
浮遊感に満ちたまどろんだサウンドスケープを現出させた1曲目の「me to me」の後半に雲間から陽光が差し込む。そんなドラマティックな状況も味方につけた彼らは、2曲目の「井戸育ち」で熱量の高いプレイをドライブさせていった。
新曲「東京」は、ラテンやファンク、あるいはサビの童謡然としたメロディなど様々な要素を併せ持った構造を持ちつつもシンプルな聴き応えを誇っており、バンドの進化を如実に感じさせるものだった。
2番手に登場したのは、“ニューエキサイトオンナバンド”を標榜するCHAI。「Sound & Stomach」から始まった彼女たちのライブは、ファンクやニューウェイヴを独自のクリティティビティをもって自分たちのものにした音楽性の魅力を、確かな演奏力とキュートなパフォーマンス力で浮き彫りにする見事な内容だった。
自己紹介や1stフルアルバム「PINK」の宣伝もエンターテイメント化してみせ、初見のオーディエンスも楽しく巻き込む。
CHAIの“NEOかわいい精神”をUSインディに通じるサウンドプロダクションでメロウに表現した「アイム・ミー」と「sayonara complex」を鳴らし終えると、4人は忘れがたい余韻を残してステージを去っていった。
3番手のLUCKY TAPESは、3管のホーンセクションを含む総勢9人の編成でステージに登場。「intro」を経て鳴らされた「レイディ・ブルース」から、管楽器がいることの強みを存分に活かし、洗練されたポップソングの魅力を会場に浸透させていった。
アンサンブルの様相は軽快な気持ちよさを押し出すだけではなく、絶妙な緩急をつけながらときにソリッドなアプローチを見せ、ときにジャジーにスウィングする。特にラスト2曲の「Gravity」や「シェリー」はもはやクラシックな佇まいを放っていた。
夕暮れ時の4番手に登場したのは、この唯一のソロアーティストにして、唯一の弾き語りのライブアクトである竹原ピストル。
彼は「今日は仲間に入れていただいてありがとうございます。竹原ピストルと言います」と口にしてから、テレビCMで多くの人が耳にしたことがあるであろう1曲目「よー、そこの若いの」を歌い始めた。
竹原はあくまで会場にいるすべての人と1対1で向き合い、まさに“1曲入魂”といったスタイルで、次々と彼の歌うたいとしての生き様をダイレクトに投影した歌を紡いでいった。全11曲を歌い終えると、オーディエンスから大きな拍手と歓声が湧き上がった。
5番手のくるりがステージに登場したころにはすっかり陽が落ち、会場は少しの肌寒さを覚えながらもそれを心地よく感じる“夜の野音”ならではの情感に包まれていた。
まずは岸田繁、佐藤征史、ファンファンの3人がドラムレスの状態で「ブレーメン」を威風堂々と奏で、そこからギターとキーボード、ドラムのサポートメンバーが加わった編成で「ハイウェイ」へと繋げていった。
そのサウンドはオーガニックな感触がある一方で、刺激的なグルーヴが通奏低音のように流れていて、歌はどこまでも力強く躍動していく。
度肝を抜かれたのはインストゥルメンタルの新曲「東京オリンピック」で、プログレを彷彿させる複雑な構成によって築き上げられたこの曲は、ロックからブラックミュージック、クラシックまであらゆる音楽のメソッドを昇華してきた くるりだけが形象化できる総合音楽的なすごみを、まざまざと提示していた。
トリを飾ったのは、ペトロールズ。チャーミングなコーラスワークが印象的な1曲目「シェイプ」を皮切りに、3ピースバンドならではの音の隙間の妙趣を体現すると同時に、3ピースとは思えない奥行きに彩れた音楽力でオーディエンスの身体を揺らしていく。
ジャンルの記号性にとらわれない底知れぬ色気を帯びたグルーヴをじっくり高めていった「闖入者」と「インサイダー」「not in service」。静と動を行き来するアンサンブルのカタルシスがたまらない「ホロウェイ」。
ペトロールズ流の深淵なラブソング表現が極まった「Tallasa」と本編ラストの「KA・MO・NE」まで、徹頭徹尾、名演と呼ぶにふさわしいパフォーマンスを見せてくれた。
そして、アンコールに応えて披露した彼らの代表曲の1つである「雨」によって、「SPRING BREEZE 2018」はまさに大団円を迎えた。
なお、この日のライブの模様は、6月3日23時よりスペースシャワーTVで特別番組として放送予定なのでお見逃しなく。
取材・文:三宅正一
撮影:古渓一道
セットリスト※出演順
・MONO NO AWARE
M1.me to me
M2.井戸育ち
M3.マンマミーヤ!
M4.東京
M5.イワンコッチャナイ
M6.駆け落ち
・CHAI
M1.Sound & Stomach
M2.ボーイズ・セコ・メン
M3.自己紹介
M4.N.E.O.
M5.ぎゃらんぶー
M6.アイム・ミー
M7.sayonara complex
・LUCKY TAPES
M1.intro
M2.レイディ・ブルース
M3.体温
M4.NUDE
M5.Balance
M6. Gravity
M7. シェリー
・竹原ピストル
M1.よー、そこの若いの
M2.LIVE IN 和歌山
M3.みんな~、やってるか!
M4.ぼくは限りない ~one for the show~
M5.Forever Young
M6.俺のアディダス
M7.ちぇっく!
M8.Its my life!!
M9.隠岐手紙
M10.Amazing grace
M11.狼煙

・くるり
M1.ブレーメン
M2.ハイウェイ
M3.ハイネケン
M4.東京オリンピック
M5. 琥珀色の街、上海蟹の朝
・ペトロールズ
M1.シェイプ
M2.闖入者
M3.インサイダー
M4.not in service
M5.ホロウェイ
M6.Talassa
M7.KA・MO・NE
EN.雨