「Early Noise Night vol.5」に羊文学、カネコアヤノ、SPiCYSOL、ドミコの4組のSpotifyプッシュアーティストが集う
Spotify がプッシュする旬のアーティストが集うイベント、「Early Noise Night」の第5 回目が5月16日(水)代官山SPACE ODDにて開催された。これからの活躍が期待できる気鋭のニューカマーたちを、入場料1000円で観られるということで、毎回耳の早い音楽リスナーから好評を博する本イベント。ヒップホップにフィーチャーした前回とは打って変わり、今回は羊文学、カネコアヤノ、SPiCYSOL、ドミコといったバンド編成のアクトたち。オーディエンスがアーティストの周囲を囲う恒例のセンターステージにて、4組が白熱の一夜を繰り広げた。
本イベントにオフィシャル・メディアとして参加するSpincoaster クルーによるDJ タイムを経て、The xx の“VCR”をSE に今夜のトップバッターとして登場したのは、塩塚モエカ(Vo. /Gt.)、ゆりか(Ba.)、フクダヒロア(Dr.)によるスリーピース・ロックバンド、羊文学。今年2月にリリースした2nd EP『オレンジチョコレートハウスまでの道のり』のオープナー・トラックとなる“ハイウェイ”を1曲目に披露。淡々とした演奏ながらも、その鋭い一音一音からは、内に秘めた熱のようなものが伝わってくる。凛とした塩塚モエカのボーカルは、その内省的とも取れるリリックを、時に優しく、そして時に突き放すかのように投げかけてくるようだ。3ピースという必要最小限の編成ながらも、その息の合った演奏はまさに適材適所。所々で引き算的な演出を活かしながら、常に絶妙なバランス感覚をみせつける。
先述のEP からは他にも“ブレーメン”、“涙の行方”を披露し、最後はデビューEP『トンネルを抜けたら』より“Step”で終了。MC も言葉少なげだったが、その静かなる情熱は確実にオーディエンスに届いていたのではないだろうか。
2番手として登場したのは、独自の世界観を擁するシンガー・ソングライターのカネコアヤノ。
元・踊ってばかりの国の林宏敏(Gt.)、Gateballers の本村拓磨 (Ba.)、HAPPY のBob(Dr.)という盤石のメンバーを引き連れてのバンド・セットということで、音源以上にパワフルかつアグレッシブなステージを展開。カネコアヤノは骨太なバンド・サウンドに飲み込まれることなく、まるで手綱を握りながら荒馬を乗りこなしていくかのよう。また、その小ぶりな体全体を使って演奏を、そして音楽を全力で楽しんでいる様を表現していた。
4月末にリリースされたばかりのニュー・アルバム『祝祭』から“ロマンス宣言”、昨年リリースの2nd EP『ひかれあい』収録の“とがる“、同じく昨年リリースのアルバム『群れたち』収録の“春”といった楽曲は、いずれも作品より数段アップテンポでタフなグルーヴを放つ。林宏敏によるドリーミーなギターが光る“祝日”では、伸びやかな歌声を自在に操るカネコアヤノの姿に思わず鳥肌が。最後はこれまで以上にパンキッシュな掛け合いでこの日の会場のピークを更新した“恋しい日々”、そしてソリッドなギター・リフが飛び出す“アーケード”で終幕。MC も一切なく、そそくさとステージを後にする彼らとは裏腹に、会場には凄まじい熱気が立ち籠めていた。
「Surf Beat Music」を掲げ、ロックやR&Bなど様々なジャンルを横断する4人組、SPiCYSOL(スパイシーソル)はこの日のラインナップの中ではやや毛色が異なる存在と言えるかもしれない。しかし、イベントの後半戦開幕を告げる3組目としてステージに登場するやいなや、彼らは会場の空気をがらりと塗り替えていく。
KENNY(Vo. / Gt.)の艶やかな歌声と共にアーバンな世界観が溢れ出す“Sex On Fire“で、一気にオーディエンスを魅了する。「どこ向いて喋っていいのかわからないです(笑)」と、特殊なセンターステージ仕様に戸惑う素振りをみせながらも、その立ち居振る舞いは堂々たるもの。
オーディエンスとの掛け合いもお手の物で、昨年5月にリリースされた配信限定シングル“Cyanotype”へと流れ込んでいく。欧米を中心としたポップ・ミュージックのトレンドでもあるダンスホール〜ムーンバートン的なリズムを取り入れた爽快なナンバーであり、それを日本語詞中心の歌モノへと昇華する手腕はお見事だ。
新曲だというメロウかつスムースなR&B“Monsoon”ではシンセやコーラスを担当するPETEがトランペットを吹き、爽やかな風が通り過ぎたかのように会場をクールダウン。MCにてアルバムを7月にリリースすることをアナウンスし、そこからの先行曲となる予定だという“GOOD DAY“では、何気ない一日を彩るかのような、ポジティブなヴァイブを届けてくれた。
続いて4組目、今夜のトリを務めるのはギター・ボーカルのさかしたひかると、ドラマーの長谷川啓太からなる2人組、ドミコだ。
昨年リリースの2nd アルバム『hey hey,my my?』から“マカロニグラタン”、“バニラクリームベリーサワー”、“こんなのおかしくない?”を流れるように披露。合間合間に挟まれるセッション的な展開も含めて、そのパフォーマンスからはまるで貫禄のようなものまで感じさせる。
「SXSW」やUS ツアーなど、国内外問わず様々な舞台を経験してきたからだろうか、MC は少なくとも演奏だけでオーディエンスを踊らせ、そして納得させる説得力がある。
独特の言語感覚を擁するさかしたのリリックは、音の響きとして秀逸で、メロディアスなフロウと相まり耳に残るようなフックの効いたラインを連発。また、ループや多様なエフェクトを駆使したそのギター・プレイもお見事。時にはベースの低音もギターで鳴らし、次々と重ね合わせていく。
もちろん、そんなフリーキーなスタイルを支えるのは、相棒である長谷川啓太のパワフルなドラムだ。今回はふたりが向かい合うセッティングだったため、まるで楽器を通じて会話をしているかのような、そんな親密感も醸し出していた。
そして、ソリッドなギターとストレンジなポップネスにすっかり魅了されたオーディエンスからの拍手に応える形で、アンコールに“ミッドナイトネオン”を演奏し、この日のステージに幕を下ろした。
確かなセンスとジャンルやシーンを横断したラインナップで支持を集める「Early NoiseNight」。今回は多様なバンド・サウンドの在り方を提示すると同時に、早くも次なる開催への期待を煽る一夜となったのではないだろうか。
文:Takazumi Hosaka or 保坂隆純(Spincoaster)
羊文学 セットリスト
1.ハイウェイ
2.ブレーメン
3.ドラマ
4.涙の行方
5.Step
カネコアヤノ セットリスト
1.ロマンス宣言
2.とがる
3.春
4.ごあいさつ
5.祝日
6.恋しい日々
7.アーケード
SPiCYSOL セットリスト
1.Sex On Fire
2.Cyanotype
3.Monsoon
4.GOOD DAY(仮)
5.Honey Flavor
ドミコ セットリスト
1.マカロニグラタン
2.バニラクリームベリーサワー
3.こんなのおかしくない?
4.まどろまない
5.united pancake
6.くじらの巣
EN1.ミッドナイトネオン
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