イ・ジョンヒョン、入隊前ラストライブのWアンコールで「どんなに離れていても、いつでも愛してる」大合唱
CNBLUEのギター&ボーカル、イ・ジョンヒョンが6月15日、神奈川・パシフィコ横浜国立大ホールで「LEE JONG HYUN Solo Concert in Japan -METROPOLIS-」のファイナル公演を開催した。
1月24日に約2年ぶり2枚目となるソロアルバム「METROPOLIS」を発表し、あわせて2月に横浜、大阪でライブを開催。今回はその追加公演(神戸、横浜)となり、本公演と併せて8公演で28,000人を動員した。
ライブレポート
本公演の初日は、2月1日のパシフィコ横浜国立大ホールで行われたが、直前にCNBLUEのフロントマン、ジョン・ヨンファの入隊が急遽発表となり、3月に決まっていたCNBLUEのファンミーティングでのヨンファ不在が伝えられ、ファンの不安が募っていたタイミング。ジョンヒョンは自身のライブで「そんなに簡単に倒れる4人じゃないんで!」と、ファンの不安を払拭してくれた。
そして、ジョンヒョン、ジョンシン(ベース)、ミンヒョク(ドラム)のCNBLUEメンバーも相次いで年内の入隊を発表。ジョンヒョンにとって、この追加公演が、入隊前最後のライブとなる。
しばらくの間、ジョンヒョンの姿が見られなくなるということで、ライブ開始前から気持が急いて、ファンは立ち上がり、会場に流れるアルバム「METROPOLIS」の音源に合わせて手拍子を送る。
客電が落ち、ミラーボールに当たるまっすぐな光が満ちた中、幻想的な「Intro」に乗ってジョンヒョンが登場。スーツをまとったその姿は、4月末まで韓国で放送されていた彼の主演ドラマ『その男、オ・ス』の役柄のようだ。
愛用のPRSのギターを肩に掛けると、そのギターが紡ぐカッティングが印象的な「Starry Places」がスタートすると同時に、会場中が沸き立った。
「今日が、ファイナルです。わかってると思うけど、このライブが終わると、(会えない時間が)けっこう長いです。今日はカメラが入ってるので、その間に思い出せる映像を作りたいので、みなさんの気持ちを見せてもらってもいいですか?」と、「Foxy」のコーラスパートを点呼を取るように1階から3階まで、順に確認。
ジョンヒョンの厳しい指導に徐々に大きくなっていく声を聴いて、演奏がスタート。リズムに乗ってペンライトを揺らすファンにマイクを向けると「フー!」と返ってくる大きな掛け声を聴いて「最高!すげーな、今日」と満足そうな笑顔を見せた。「Only Beauty」では、ジョンヒョンのギターに呼応するようにシングアロングをファンが生み出したが、バンドの音を止めて、ファンの声にじっくり聴き入るジョンヒョンの姿が印象的だった。
幼少期に日本に住んでいたこともあり、日本語が堪能なジョンヒョンは、MCでも饒舌だ。「映画『生きる街』の舞台挨拶で、若い女の子に“社会に出るのが怖いからアドバイスをしてほしい”って言われて、仏作家、ポール・ブールジェの“考えたとおりに生きないと 生きてるとおりに考えてしまうから”という言葉を贈りました。いつも幸せになれるように、頑張ってと言いたかった」という話を日本語でサラッと言う。
「僕ももう、そういう年になった。若くないんで」と笑うジョンヒョンに客席から「オッパ(お兄さん)、まだまだ若い」という声が上がると、「オッパじゃないから!ウソうまいですね、奥さん(笑)」と、客席のファンと会話をするように、ときにファンに突っ込まれながらトークが進むが、こんなやりとりにも、彼の気さくな人柄がよく見える。
今回は主演ドラマの撮影などもあり、しばらく時間が空いた中での追加公演。前半の楽曲は、バンドやコーラスのアレンジが変わっている部分もあったが、後半部にはセットリストに変化が見られた。
CNBLUEのジョンヒョン曲のセルフカバーのセクションでは、原曲よりも軽やかなアレンジになった「Lucid dream」が追加され、また、2月にはボーカリストに徹していた「voice」で、「よし!」という気合と共に「どうしても寂しくて」と、ギターを肩にかける。やっぱりジョンヒョンは、ギターを弾いている姿が一番似合うなと、誰しも思ったはずだ。
そして初期の若さあふれるこの曲を聴くと、バンドらしいライブ感に身体が反応してしまう。ファンのこんな気持ちと同じように、この日はオープニングアクトで事務所の後輩バンド、N.Flying(エヌフライング)がCNBLUE曲のメドレーを演奏したことを受け、「N.Flyingどうでしたか?うらやましい。僕もバンドでやりたいんですよ」という本音もポロリ。
そして「そもそも僕、歌う人じゃないですから(笑)。でも、ソロコンサートができるまでになるとは思っていませんでした。デビューから10年、ここまで応援してくれて、ありがとうございます」という感謝の言葉も間違いなく、彼の本音だ。
「次は切ない曲だけど、カッコいい(CNBLUEの)4人の姿を思い出しながら歌います。泣いちゃダメだよ」とイタズラっぽく言って歌い出したのは、ジョンヒョンの1stソロアルバム「SPARKLING NIGHT」に収録されていた尾崎豊の「I LOVE YOU」の韓国語カバー。続く韓国楽曲「When I was young」も、追加公演で新たに加えられたナンバーだ。
そして、この日最高に盛り上がったのは、ファンの<どんなに離れても、いつでも愛してる>というシングアロングが彩る、CNBLUEの楽曲「Blind Love」だ。「デカい声で!」というジョンヒョンの声に応えるファン。うれしそうな笑顔で客席にマイクを向けるジョンヒョン。ライブならではの幸せな空間がそこにはあった。
ジョンヒョンは「この感じ、ヤバいね。この曲、自分の曲の中でも好きなんです。僕は努力が上手い人じゃないけど、みなさんの応援に対する責任でここまで来ることができた。いつになるかわからないけど、次のライブもできるように、応援してください!」と感謝を伝えた。
「最後は明るく!笑顔でみんなと一緒に歌いたい!」とアコースティックギターを弾きながらスタートしたのは、カントリー調の「HEAD TRIP」。ファンからの「Hey Ho!」という掛け声もバッチリだ。ラストの「SHINE DROP」では、カメラ目線で愛嬌をふりまき、ファンを沸かせて、公言通り楽しい雰囲気で本編を終了した。
アンコールは、「Moonlight Swing」でダンサーとリズムに乗る姿を披露。バンドメンバーの紹介を終えると、彼らにむかって「また、3年後くらいに会いたいですね」というジョンヒョンに、客席から悲痛な声が上がる。
すると、「一番悲しいのは、僕ですよ。行くのは僕ですから。でも、当たり前のことですからね」という本音が再び。そして「切ない気持ちを慰めましょう」と歌い始めたのは、現在ロングラン上映中のジョンヒョンも出演している日本映画『生きる街』挿入歌、「ひかりのまちで」。ジョンヒョンの柔らかく暖かな歌声が、会場中を包み込んだ。
「最後は幸せな笑顔で帰ってほしい。思いっきり笑顔で、思いっきりデカい声で、倒れるくらいに!」と鼓舞すると、「ご主人のかた!前に出てきてください」と男性ファン有志を集める。5人の男性ファンをステージに上げて「Starlit Night」のサビを歌わせると、男性ファンは<この世界で輝いてる 君と僕の話を知ってる 変わらずそばにいてくれる ジョンヒョンの心が光らせている>と替歌で応酬。
アコースティックギターのイントロで曲が始まると、ステージの男性ファンと客席のファンは一緒に、サビを<ジョンヒョンの心が光らせている>と歌い、ジョンヒョンは<君の心が光らせている>と歌う。お互いの愛が伝わる瞬間だ。客席にマイクを向けてファンの大きな声に聴き入るジョンヒョン。ステージの上のジョンヒョンも客席のファンも、笑顔だ。音楽だけが作り出せる、最高の一体感と暖かい笑顔がそこにはあった。
すぐさま沸き起こるイ・ジョンヒョンコールにWアンコールで応えると、「最後の最後ですから、思いっきりデカい声で!」と<どんなに離れても>と歌い出すと、ファンが<いつでも愛してる>とすぐに並走。「最高!」と言いながら「Blind Love」を歌うジョンヒョンは、ファンの声を聴きながらゆっくりステージの上を歩いて手を振り、とにかく笑顔で、同じ場所で同じ時間、同じ曲を楽しむ様子を頭の中に刻み込んでいるようだった。
彼にとっては、“入隊前最後のライブ”。とかく悲しいムードになりそうなものだが、ジョンヒョンは彼らしい正直さと明るさで、最後まで笑顔を見せて、ファンも笑顔にしてくれた。先に入隊したヨンファは、2019年の除隊までに、書き下ろしのソロ曲5曲を連続配信するプロジェクト「FEEL THE FIVE “Y”」をスタートさせた。
8月29日には、CNBLUE初のジャパン・ベストアルバム『Best of CNBLUE / OUR BOOK [2011 – 2018]』もリリースされる。昨今は入隊中にも作品がリリースされたり、入隊前に準備されたさまざまな企画が発表されるので、大きなブランクは感じられなくなってきた。ジョンヒョン自身も「早くバンドをやりたい!」と切望していたが、楽しかった思い出を胸に、ジョンヒョンの、そしてCNBLUEの帰りを待ちたい。
取材・文:坂本ゆかり
写真:平野タカシ