韻シスト、結成20周年を迎え地元・大阪のなんばHatchで豪華ゲストを迎えた熱狂の3日間
6月15日から17日に韻シストの「20th ANNIVERSARY 〜NeighborFood SPECIAL3DAYS〜」が大阪・なんばHatchで開催された。以下、ライブレポート。
1日目:6月15日
今年結成20周年を迎えた生ヒップホップバンドのパイオニア、韻シスト。5月12日には、大阪・アメリカ村三角公園前の特設ステージで「GO TO NAMBA HATCH 3DAYS!!」としてフリーライブが敢行され、約2000人の人だかりとなる熱い盛り上がりを見せた。その勢いに乗ってついに実現した「20th ANNIVERSARY 〜NeighborFood SPECIAL3DAYS〜」のライブ模様をお届けしよう。
入り口付近には数多くのフラワースタンドが飾られ、20周年の祝福ムードに溢れていたなんばHatch。三日間に渡って、各日に豪華ゲストが迎えられていたのも大きな話題で、初日のゲストとして登場したのはCharaとKenKen。KenKenは今回、DJとしても登場し、開演前から舞台上で目立っていた。開演時間になるとBASIとサッコンが現れ、「ついに始まりました!」と宣言。なんとなくユル〜イ感じにも思えた幕開けだが、二人が「せっかくKenKenがDJやってくれているから…」という振りで、なんとKenKenは、その場でベースを取り出して演奏を始めるというサプライズな展開に。「韻シスト、20周年おめでとう〜!俺の人生を救ってくれてありがとう!友達でよかった!」と熱い祝福&お礼を述べると、さらに爆音で圧巻のプレイを炸裂させていく。そして、「韻シストに大きな拍手を!」とみんなに促して、バンドメンバーが登場すると、さらに大きな拍手歓声が湧きあがった。
ここからテンポよく次なるゲストにバトンタッチ。会場の熱気も一層高まっていく中、呼び込まれたのはCharaだ。さすが一瞬で目が奪われるファッショナブルな存在感を放ち、会場の雰囲気をイッキに華やかに塗り替える。サックスとキーボードが入った韻シストBANDをバックに7曲を披露。コーラスするShyoudogに対して、「Shyouちゃんの声、イイ!枯れてる声大好き」と嬉しそうに言葉をかける場面も。一曲目の「Junior Sweet」に始まり、「ミルク」、YEN TOWN BANDの「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」も盛り込まれ、甘くキュートなキラーボイスでみんなのハートをキュンとさせていく。BASIのラップと甘く絡む「intimacy」、さらに韻シストとのコラボ曲「I don’t know」ではサッコンが呼び込まれる。Charaをセンターに3人の歌声が優しく重なり、みんなのシンガロングも加えてピースフルな空気が満ち満ちていった。ラストに再びCharaがソロで歌ったのは「やさしい気持ち」。エレガントな動きを見せながら高揚した声を上げて存分に惹きつけた。
締めを飾るのは韻シスト。Shyoudogのベースを合図にバンドの演奏が始まり、まずはBASIが、続いてサッコンも呼び込まれてフロント2MCが揃い、サッコンが「楽しんでますか?」と声をかけると一段と大きな歓声が湧きあがる。メンバー全員ブラックスーツで揃えたスタイリッシュな佇まいが超クール!序盤から「Move it」「Party is…」など、ノリノリのパーティーチューンが繰り出されてみんなと熱く一体化。「Hatchで三日間連続ライブをやるのは、韻シストが初めてらしいです」とBASI。サッコンは「人のつながりで20年できたんかなと」振り返りつつ、KenKenにCharaを紹介されたことなど、しばし二人で韻シストの歴史を話す場面も見られた。「KenKenがこの曲に救われたと言ってくれた」(サッコン)という「I Ain’t Alive」はじんわりと胸の奥に染み込んでいった。「Party Six」から再びファンキに上げて行き、頭上でミラーボールが回転。「Don’t leave me」ではみんなの体が楽しそうに揺れて、会場全体が軽快なクラッピングに包まれた。
ここで、BASIから待望のニュー・リリース8枚目のアルバム「IN-FINITY」が8月1日にリリースされることがアナウンスされた。その中から「この3DAYS、一曲ずつチョイスしてやります!」ということで、宇宙初プレイされた新曲「踊るtonight」。最高にグルーヴィンかつダンサブルにみんなを盛り上げて、本編ラストは「ひょっとしたら」。「時間はアッという間、20年つなげて、今ここいます。音はいつでも君を待っている」(サッコン)そう言って、希望を感じさせるリリックをみんなに届けて、「サイコーの1日をありがとうございました!」と明るいムードでフィニッシュ。
その後、「今日はせっかくなんで、楽しいアンコールにしましょう!」とTAKUが声を上げ、再びKenKenを加えて、「120%」と熱いセッションを展開。BASIとサッコンがフリースタイルでラップし、バンドの演奏も一層加熱して、会場全体が大きく沸き立つ。最後は、「哀愁のチューン」をみんなでリフレーンして初日の幕は降ろされた。
2日目:6月16日
2日目は、オープニングのMCにFM802のDJパーソナリティ、中島ヒロト氏が登場。まずは、この日のゲスト、フジファブリックの山内総一郎と韻シストのTAKUによるユニット、“激論”を紹介すると、盛大な拍手に迎えられて二人が登場。韻シストともフジファブリックとも違うアコースティック・デュオのようなシンプルなスタイルが新鮮な印象を与える。
「高校の時からつるんでいた」(TAKU)という二人はお互いライバル心を燃やしながらギターの腕を磨いていたという。そんな10代の思い出を大阪弁で和やかに語り合い、地元茨城のライブハウス・ジャックライオンの店長・眞柴さんも交えたトークタイムへと発展。その後、韻シストの「DEAR」をみんなの手拍子を交えた“激論”ヴァージョンで聞かせてくれた。
続いて、この日のゲスト、フジファブリックが登場。音量を上げて、疾走感あるロックチューンで飛ばしていく。ちょっとファンキーさも感じさせる「バタアシ Party Night」、スカっぽく小気味よい「夜の中へ」、キーボードが攻撃的な「虹」ではギターも高らかになり響いてボルテージも最高潮に。MCでは、「夢を語り合っていた一番近いギタリスト」と山内がTAKUとの思い出を語り、「一緒に韻シストを観に行ったこともある。その何年後かにTAKUが韻シストに入った時の顔が忘れられない…」とも。「僕らは来年15周年。これからも皆さんどうぞよろしくお願いします。最高にドープなバンドです!」と思いを伝えた。後半には、韻シストの「Don’t leave me」をカバー。歌いながら、「20周年おめでとう〜!」と何度も叫ぶ山内。その後、「ダンス2000」で、鍵盤が熱を帯びて大揺れとなり、エモくエッジの立った「Surfer King」、ラストは「若者のすべて」で刹那の熱い情景を胸に焼き付けさせた。
2日目の韻シストは、まずTAKUが現れ、次にTAROW-ONEが現れて、セッションするようにスタート。そこにShyoudogが加わり、ループするような演奏に。MC2人も現れて、「MOVE IT」「PARTY SIX」とノリよく展開していく。「一丁あがり」では、1階2階、それぞれの観客に声をかけながら、「イッチョアガ〜リ」「ユガ〜リ」とコール&レスポンスで熱く盛り上がる。途中のMCタイムになると、オープニングユニットとして出た“激論”に触れ、「あったかい感じが良かった。もっと聞きたかった」とBASIがいえば、「今後も(“激論”)続けていきたい」とTAKU。
後半に入ると、昨日発表された8月1日リリースのニュー・アルバム「IN-FINITY」から新曲「Don’t worry」を披露。タイトなブレイクビーツにメロディアスなサビが印象的なナンバーだ。この新曲を歌っている時に、リリックを飛ばしてしまったというBASIに、サッコンが「やってしまった時は、歌に変えるしかない」と言って、歌い出し、コミカルな味がある「オ〜ッシ」で場内の空気を和ませる。
「DEAR」では、先の“激論”がカバーしていたのを、「2階席で聞いていた」というShyoudog。「めっちゃいい歌やな。あれ、俺が作ったから」と嬉しそうに話しつつ、「韻シスト続けてきて良かったと思います。ありがとう!音楽は形が無いけど、ずっとずっと残っていく。そんな曲をもっと作っていきたいと再確認した」そう言ってから、スモーキーな味わい深い歌声を聞かせてくれた。
さらに、フジファブリックがカバーした「Don’t leave me」について、「愛情たっぷりのカバーをしてくれて、ありがとうございます」とBASI。サッコンは「フジファブリックらしいカバーをしてくれて、ほんまありがとうやな。韻シストも本気を見せとこう。みんな、何も言わんでもやってくれますよね?」そう言うと、みんなのクラッピングが一斉に高まっていった。そして、「ちょっと懐かしい曲で終わりましょう」(BASI)とラップとソウルフルな歌が重なる「Daily a life」で本編を終える。
アンコールでは、サッコンがメンバーとの出会いを語りだし、「音楽が友達を作ってくれた。仲間を信じて、音楽を信じてやってきてよかったな」と感慨深げに話して「ON & ON」を。その後、再びフジファブリックの山内総一郎を呼び込んで、「フジファブリックの「パッション・フルーツ」を演奏。「哀愁のチューン」と続き、二日目の幕を下ろした。
3日目:6月17日
3日目のスペシャルゲストは2人。まずは、BASIが現れて、「彼と彼の仲間が大好きです!全員、酔いしれてください!」と紹介して、Rickie-G(以下、リッキー)からライブがスタート。サックスを含むバンドはアコースティックな音色が心地よく、リッキーがアコギを持って登場すると、割れんばかりの大歓声が起こった。
「REBELUTION」では、ボーダレスな気分を掻き立てて、パッション溢れる歌とサウンドで心を自由に解き放ち、みんなも拍手で応える。リッキー自身も笑顔で、「楽しいな〜」と言いながら、「今日はこのステージで歌えることが超幸せ。韻シスト、20周年おめでとうございます!僕は学生の時から、めっちゃかっこいいじゃんと思って韻シストを聞いていた。ここに立てることがすごい光栄。やばい(笑)。スタッフにも感謝です」と幸せそう。そして、メンバーと同じ神奈川出身の大先輩ということで、なんと、サザンオールスターズの「いとしのエリー」をカバー。甘い歌声で気持ち良く歌いあげると、大拍手に包まれ、あちこちから、「リッキー!」の声が飛び交った。さらに、「生きてるって素晴らしい」と歌う「Life is Wonderful」では、ハープを吹き鳴らし、クラップも合わさってパワフルで温かみがあるボーカルで魅了。アーシーな音の温もりと、人間味溢れる歌世界がじんわりと伝わってくる「Follow Your Heart」まで、会場全体が大きな愛に包み込まれるようだった。
ここまでで既に会場全体の熱気は相当高くなっていたが、次なるゲストとしてPUSHIMが登場するとさらに加熱!韻シストとともに、一曲目からアッパーに攻めていき、高揚させるPUSIMの歌と、BASI&サッコンのラップが絡む「TO THE NEXT」で大歓声が湧き上がり、まさに沸騰状態に突入。「Dreamin」ではギターのTAKUとも絡むように、甘い雰囲気で掛け合うラバーズを聞かせ、「楽しんでますか?最後の最後まで楽しんで行ってください」と言って、力強い掛け声とともに、「Rising Sun」ではステージを右に左に動いて、気合の入った歌声で煽っていく。パワフルかつ艶やかな歌声で、みんなを突き動かしていった。後半には、ボブ・マーリーの「Could you be loved」をアップテンポでカバー。
MCでは、「“PUSHIM姉さん”とか言ってるけど、あんまり変わらへんし」と言いながら、親しみを込めて、「長いことやってきたよね。おめでとう!」と祝福。そして、「韻シストにいい歌もらいました」と、’05年の「Don’t stop」に収録されていた「Dear」で、たくましくて温かい歌声にじんわりと浸らせる。歌い終わると、サッコンが彼女の額の汗を拭いている姿も微笑ましく映った。ライブ中はお酒は控えていると言うメンバーに、「もうええんちゃう」と、ビールを進めて、みんなで乾杯する場面も。ラストは「Forever」。これまた盛大なクラップに包まれて、場内はお祭りのような状態、「この状態が永遠に続けばいいなあ」とサッコンがつぶやいていたが、PUSHIMの圧倒的な歌声にBASIとサッコンのコーラスも重なる至福の時間。永遠に続いていきそうな最高に幸せなコラボが目の当たりにできた。
3日目の韻シストは「Theme of CLASSIX」をプロローグに、BASIが「ようこそ、なんばHatch 3DAYS最終日へ。さらに上げていってもいいでしょうか?」と声をあげ、『PARTY SIX』からアッパーでグルーヴィンな展開に。
MCでは、「昨日一昨日とちょっとカラーを変えて勝負してきたけど、やっぱ今日はパワーえげつないですね!」とサッコンも興奮ぎみ。今回の3DAYSは、彼らが偶数月にやってきたイベントのSP版ということで、会場のスケールは違えど、「クラブっぽい感じがむちゃくちゃ出てます!」と嬉しそうにコメントしていた。
後半は8月に出るニューアルバム「IN-FINITY」からの新曲「OLD SCHOOL Lav’in」を投下。ソリッドな攻めのファンキーチューンで、間奏のドラムソロやラップの掛け合いもあり、とにかくカッコイイ。「PARTY IS…」では、「ワンスアゲイン」と何度かダメ出ししつつ、一層ボルテージも上がってみんなが賑やかに「パーティー」を連呼する。本編ラストは「哀愁のチューン」で一旦締められ、アンコールへ。PUSHIMとリッキーが甘い雰囲気でデュエットする「Turn yore light’s」から始まり、メロウな歌モノでみんなを贅沢な気分で浸らせる。「極上の歌声ありがとうございました!」(BASI)、「反則やわ」(サッコン)と絶賛の嵐!お次は、PUSHIMとのコラボ曲「Don’t stop」で、MC2人と一緒に色っぽく絡みながら、「ドント・ストップ・ベイベー!」と煽って、みんなを熱く熱く揺らし続けた。
最後に、リーダーのShyoudogが、「ほんま嬉しい。ほんまにやってきてよかったと思った」と実感込めて口にし、TAKUも「自分が大ファンの皆さんがお祝いに駆けつけてくれて、めっちゃ嬉しい。神様にイイ3日間をプレゼントしてもらった」、TAROW-ONEも珍しくトークする場面に「めっちゃ緊張するわ…」と言いつつ、「僕が一番後に(韻シスト)入っているから、(メンバーに向けて)出会ってくれてありがとう。これからもよろしくお願いします!」と、それぞれが素直に今の心境を言葉にした。
そして、「音楽のおの字も知らない、そんな俺らもひょっとしたらいけるかもと、20年やってきた」(Shyoudog)「最後は、ひょっとしたら、ひょっとするかもという歌を贈ります」(BASI)そう話して、この盛大な三日間の最後の最後を飾るナンバーとなったのは「ひょっとしたら」。PUSHIMやリッキーはもちろん、この日の出演者全員がステージ上に出てきて一緒に歌い、オーディエンスもシンガロング。BASIが時折、「そうやな、わかるよ」と合いの手を入れながら、歌い続け、ホームならではのどこまでもあったかいムードに包まれて、ピースフルな大団円となった。“NeighborFood”とタイトルされているように、遠い存在ではなく、すぐ近くにいるような親近感を抱かせ、人と人の温かいつながりがあってこその20周年を実感させてくれた彼ら。オープニングから、幕間、クロージングまで、常にDJが居て、音楽が満ちていたのも韻シストらしい趣向だなと思えた。
今年は20周年のお祝いムード満開で、今後の活動もさらに活発化していきそうな韻シスト。ライブ中も、何度かアナウンスされていたように、8月1日には8枚目となる20周年記念アルバム「IN-FINITY」がリリースされる。そして、9月16日には、「たとえばボクが踊ったら、#002」と題した、新たなスペシャル・イベントで韻シストとPUSHIMが再び共演する事も決定。このイベントにはさらに、The Birthday、SPECIAL OTHERSといった、超強力ラインナップが揃っておりこれから、続々と追加アーティストも発表される予定だ。更にアルバムツアーも近々解禁される予定なので、楽しみに待っていてほしい。
Photographer:ハヤシマコ