尾崎裕哉 初単独フルオーケストラ・コンサート注目の東京公演、尾崎裕哉&尾崎豊作品を管弦楽の響きとともに

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尾崎裕哉 フルオーケストラ・コンサート 7月24日 東京芸術劇場

7月24日、尾崎裕哉が東京芸術劇場で初の単独フルオーケストラ・コンサートを開催した。以下、ライブレポート。

26歳で終止符が打たれた父親の墓碑銘にはこう刻まれている。<生きること。 それは日々を告白してゆくことだろう>――尾崎裕哉にとって初めての単独フルオーケストラ公演(7月24日@東京芸術劇場)を観ている間中、その墓碑銘が通奏低音として胸中に吹いていた。

柳澤寿男指揮によるフルオーケストラとの助走が終わると、3曲目から尾崎豊の「ダンスホール」、「優しい陽射し」、「OH MY LITTLE GIRL」がメドレーで続奏される。主役の足元を木漏れ日状のライトが照らし、“組曲”の物語性を巧みに彩る。熱烈な尾崎豊ファン以外にも既知の名曲揃いでありながら、その実、毀誉褒貶なR&R的神話の影に隠れがちな流麗にして珠玉な旋律&歌詩を丁寧に掘り起こしては歌い継ぐ――そんな尾崎裕哉の意思が透視できる構成だ。

さらに「サムデイ・スマイル」、「想像の向こう」と2曲のオリジナルを挟みつつ、世代を越えた不朽の人気愛唱歌「僕が僕であるために」へと、(さながら1枚の音盤上を針が進んでゆくかのように)ジョイントされる流れは見事の一言に尽きる。その繋ぎの瞬間を喩えるならば、<豊/裕哉>という永遠の見えない壁(=重圧)に挑んだ末、気づいてみたら<豊=裕哉>の奇跡的な架け橋が開けていたかのよう。
 

尾崎裕哉 フルオーケストラ・コンサート 7月24日 東京芸術劇場

休憩を挟んで後半の滑りだしはオケ演奏のみの「カヴァレリア・ルスティカーナ」が流された。映画『ゴッドファーザーPART III』の最後に流れるマスカーニ作品にして、本公演の音楽監督・須藤晃氏のお気に入り曲。尾崎父子への献歌として選んだと思しき心憎い演出だ。

中盤は尾崎裕哉自身の“日々の告白”が織り込まれた「つかめるまで」、「愛か恋なんてどうでもいいや」が連打され、フルオーケストラ効果の粒立ちが従来以上の歌詩の染みを覚えさせる。「I LOVE YOU」の後は、父の背中を遠望しながら自らの居場所を模索していた季節を描いた作品「27」。まさにこの公演当日、29歳を迎えた尾崎裕哉は“僕が僕である”場所に堂々と佇んでいた。迫力あるクワイヤ(合唱団)を含む総勢100名で歌い上げた「Glory Days」は圧巻。それは亡父の遺志と“それから”を高らかに歌い上げ、その蘇生=継承を誓うラスト曲として聴衆を魅了し、スタンディングオベーションの喝采に塗れた。

そしてアンコールはファースト・シングル曲の「始まりの街」。彼の道程を灯しつづけてくれた人たちへの想いを綴った歌詩で締め、父・尾崎豊が未踏の地平へと歩む決意を誓った。

文:末次安里(OutThere編集長)

東京公演に引き続き、 8月12日には兵庫県立芸術文化センターを舞台に注目の公演が開催される。

セットリスト
尾崎裕哉オリジナル
・Glory Days
・始まりの街
・君と見た通り雨
・音楽が終わる頃
・サムデイ・スマイル
・想像の向こう
・Moonlight
・27
尾崎豊作品
・Forget-me-not
・I LOVE YOU
・僕が僕であるために
・ダンスホール
 ・優しい陽射し
・OH MY LITTLE GIRL
ほか

指揮:柳澤寿男
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団
音楽監督:須藤 晃

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