大貫妙子 アナログ復刻盤発売記念イベント開催、傑作誕生に秘められたエピソードとは
大貫妙子がRCA在籍時にリリースした諸作のアナログ復刻が今年5月からスタート、第1弾として発売された「MIGNONNE」(1978年)に続き、7月25日には「ROMANTIQUE」(1980年)、「AVENTURE」(1981年)の2作も発売。この2作品の発売にあわせ、8月26日、タワーレコード渋谷店B1F CUTUP STUDIOにてインストアイベント「パイドパイパーハウス(タワーレコード渋谷店)2周年記念!大貫妙子×牧村憲一(プロデューサー)スペシャル・トークショー&サイン会」が行われた。
タワーレコード渋谷店5Fにて展開している「パイドパイパーハウス」は、かつて大貫妙子も在籍していたシュガー・ベイブのマネージャーを務めていたこともある長門芳郎が70〜80年代に南青山・骨董通りで営んでいたレコード・ショップ。2016年よりタワーレコード渋谷店内の特設コーナーとして復活し、往年の同店を彷彿させるこだわりの品揃えで、今なお多くの音楽愛好家から熱い支持を集めている。
同店では今回の復刻盤の発売前日の7月24日より、多数の貴重なコレクションを展示した「大貫妙子メモラビリア展」も開催中だ。
この日行われたのは、長門芳郎を司会に、「ROMANTIQUE」「AVENTURE」のプロデュースを手がけた牧村憲一を交えてのトークショー。「このお二人がいなかったら私は存在していなかった」という大貫の言葉からスタートした鼎談(ていだん)は、シュガー・ベイブに始まり、ソロ・デビューから「ROMANTIQUE」に端を発する“ヨーロッパ三部作”に至る、大貫妙子がその類稀な音楽的表現を確立するまでの、キャリアの中でも特に重要な時期をフォローしたものとなった。
終始リラックスしたムードで、ときに話が脱線することもあったが、長い付き合いのこの3人だからこそ語れる貴重な証言が次々と飛び出し、会場を埋め尽くした約150名のファンもその会話に熱心に耳を傾けていた。
ここまでアナログ盤で復刻された3作品について、大貫は次のように語っている。
「歌もこの頃は下手だと思っていたし、聴くのがずっと嫌だった。でも、今回復刻するにあたって改めて聴き直してみたら、あれって思うくらい嫌なところがなかった」(「MIGNONNE」について)
「「MIGNONNE」を作ったあとに牧村さんに出会わなかったら音楽を辞めていたかもしれない。そんな時期に作った作品。(旧知の方も含め)集めてもらったミュージシャンが、どれだけヨーロッパの音楽や映画が好きで、詳しいかがよくわかったし、レコーディングではそんなみんながすごく楽しんでやってくれた」(「ROMANTIQUE」について)
「フランソワーズ・アルディなんかのフランスの音楽も大好きでよく聴いてきたけど、それまでアメリカの音楽ばかり追いかけてきたから、こういうヨーロッパ的なテイストが意外に自分にも合っているんだっていうのを発見できた」(「AVENTURE」について)
また、「『ROMANTIQUE』のシンセは、弾いてくれた坂本(龍一)さんの顔が浮かんでくるくらいすごく音がよくなってる。ぜひアナログ盤で聴いてほしい」とも語っており、自身のレガシーを改めて見つめ直し、こうして再び理想的な形で世に問えたことに感慨もひとしおだったようだ。
こうした形で登壇してのトークショーというはこれまでほとんど例がなく、ファンにとっても非常に貴重な機会だったのは間違いない。この秋から冬にかけては「Cliché」以降の作品のアナログ復刻も予定されており、その折にはまたこうしたイベントを期待したいところである。トークショー終了後は、大貫妙子サイン会となり、来場者が購入したアナログ盤ジャケットに大貫妙子がサインをし、ファンとのつかの間の交流が持たれた。