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KICK THE CAN CREW、16年ぶりの武道館ワンマン開催「みんなと楽しむために、曲を作ってるんだなと思います(KREVA)」

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9月1日に、「現地集合〜武道館ワンマンライブ〜」を開催したKICK THE CAN CREW。2018年に入ってから初めてのワンマンライブであり、約1年前に武道館で行われた「復活祭」はゲストを招いての内容であった。武道館ワンマンは、2002年11月の「Live at 武道CAN」以来となる。つい先頃の8月29日には、約15年ぶりとなるフィジカルシングル「住所 feat. 岡村靖幸」もリリース。また、前日の武道館では「908 FESTIVAL 2018」が繰り広げられていたので、2日連続の参加を果たした来場者も少なくないはずだ。

本編開演前、KICK THE CAN CREW史を彩る数々のトラックをプレイして場内を温め、満場のオーディエンスの期待感をプッシュするのはDJ・熊井吾郎だ。巨大なDJブースのスクリーンに映し出される「901(くまい)ふぇす❤︎」の文字にもシャレが効いている。最後には“性コンティニュー”をドロップし、喝采を浴びていた。

BSスカパー!での生中継も行われた今回のライブは、あらためて登場した熊井吾郎がファストなビートを繰り出し、「住所 feat. 岡村靖幸」収録の新曲“Keep It Up”からスタートだ。ステージ中央にリフトで登場したKICK THE CAN CREWの3人は、KREVAが黒、LITTLEが赤、MCUが白で纏めた衣装で大歓声を浴びる。のっけからスリリングなマイクリレーを繋ぐのに、不思議と安心感を抱かせてしまうこの3人の鉄壁のコンビネーションはどうだろう。

続いて“全員集合”を切り出したかと思いきや、KREVAが「今日やるならこっちだろう!」と中断し、あらためて《現地集合!》のフックで長年のファンも新しいファンも分け隔てすることなく巻き込んでゆく。そう、このどこまでもオープンな雰囲気こそが、KICK THE CAN CREWの真骨頂だ。「言ってなかったけど、KICK THE CAN CREWの武道館ワンマンは16年ぶりらしいです!」と告げ、ドープなグルーヴに満場のハンドクラップを弾けさせる“なんでもないDays”、そのままクラップで繋ぐ“GOOD TIME!”と、たとえ特別な日ではなくともパーティの必然へと持ち込む理不尽なエネルギーが痛快だ。

「喋り出したら、座ってもいいですよ」とオーディエンスへの気遣いを見せて、今回のライブでは“千%”で語られたところの《経て からの ここ》、つまりKICK THE CAN CREWの歴史をみんなで振り返るという趣旨を説明する。まずは“スーパーオリジナル”で自分たちの貫いてきた拘りに熱を込め、視界一杯に拳が掲げられた状態で壮麗なサウンドの“タカオニ2000”へと持ち込む。そしてなんと、オリジナル版の“タカオニ”を一部だけ繋げるというドラマティックな展開だ。その直後には、今度はオリジナル版の“カンケリ”が“カンケリ01”へと連なってゆく。最高だ。パフォーマンスとしては僅か数分の間だけれど、音楽は一瞬で、人それぞれに多くの記憶を呼び起こさせる。

そして、スロウなBPMでループする“千%”のトラックの中、女性シンガー・YURIが呼び込まれ、ソウルフルで伸びやかな歌声が届けられる。“千%”のイントロは、レコーディングされた彼女のコーラスのテンポを速くしたものらしい。つまり、これは“千%”制作風景の再現だ。“M☆A☆G☆I☆C”(久保田利伸 meets KREVA)にも参加していたというYURIを見送って届けられる“千%”は、《経て からの ここ》の意味が以前よりもずっと深く共有される、感動的なパフォーマンスとなっていた。

「季節が過ぎるのが早いから、やれるときにやっておかないと」と挑む夏ソング“Summerspot”は、以前からライブでの成功が難しいと語られていたナンバーだ。「間違えたら最初からやり直しますよ。スカパー!さん、すみません!」と笑いを誘い、熊井吾郎もヴォコーダーでコーラス参加するパフォーマンスへ。しかしこれが、パズルのようにラップが組み合わされてゆく、鮮やかなマイクリレーの名演になった。場内は大喝采である。

「ありがとう、ブドウカーン!(LITTLE)」「できたーっ!! やることはやった!(KREVA)」と本人たちも満足げで、MCUに至っては「(Nintendo)Switch、持ってきた?」とか何とか言いながらKREVAと楽屋に引き返してしまいそうな素振りである。それを《まだ何も終わっちゃいないぜ!》と呼び止めるLITTLE。“イツナロウバ”で大歓声を攫うという流れもお約束だ。それにしても、幾ら季節の移ろいが早いからと言って、ここで“クリスマス・イブRap”まで届けてくるのは可笑しかった。

さて、熊井吾郎による緩急自在のMPCビートソロの間、三者三様に衣装をチェンジして“LIFELINE”からのセンチメンタルな楽曲群へと持ち込む。海や大地の雄大な景色が映し出される映像も美しい。“ユートピア”の後には、「昨日来てくれた人もありがとう。みんなと楽しむために、曲を作ってるんだなと思います(KREVA)」「最初に出てくるときにさ、みんながいい顔してるじゃん。緊張なんか吹っ飛んじゃった!(MCU)」「フェスとかにも出て、俺たちのタオルを持っている人がいたりすると、すげえ力になります(LITTLE)」といったふうに、3人は口々に感謝の思いを伝えるのだった。

ライブ終盤は、“TORIIIIIICO!”から火球の吹き上がる“神輿ロッカーズ”、MCUの《来年で46です》に大きくどよめく“地球ブルース ~337~”と、怒涛のようにお祭りチューンが畳み掛けられる。満を持して飲み会マスターの本領を発揮する“マルシェ”では、テープキャノンも発射されて今まさに最高潮だ。しかしそれだけでは終わらない。鋭いビートに乗せてエモーションを弾けさせる“sayonara sayonara”、そしていつの時代もモラトリアムに捉われた人々のアンセムと化す“アンバランス”が、激しく胸を揺さぶってくる。心の機微を描く3人のラップは、今日も変わらぬ力で働きかけてくることを証明するステージであった。

アンコールでは、まず“完全チェンジ THE ワールド”へと向かうKICK THE CAN CREW。肩の力が抜けているように見えるパフォーマンスでも、とりわけ「KICK!」以降の近作曲は、触れるたびに、高度な技術が注ぎ込まれていることが分かる。最新シングル曲“住所 feat. 岡村靖幸”で、当の岡村靖幸本人はMVを用いた映像での出演に留まったけれども、その代わりとばかりにオーディエンスにコーラスパートをレクチャーし、全員で甘く滑らかなサウンドのディスコグルーヴを乗りこなしていった。リアルな生活感に満ち溢れたこのラブソングは、《in the house/in the house》と楽しげな歌声に彩られる。LITTLE、MCU、そして熊井吾郎と並んで挨拶するKREVAは、「じゃあ、当然ですね、現地カイサーン!!」と掛け声を残し、今回のステージを締めくくるのだった。

Photo by 西槇太一

セットリスト
M-1 Keep It Up
M-2 全員集合
M-3 なんでもないDays
M-4 GOOD TIME!
M-5 スーパーオリジナル
M-6 タカオニ2000
M-7 カンケリ01
M-8 千%
M-9 SummerSpot
M-10 イツナロウバ
M-11 クリスマス・イブRap
M-12 LIFELINE
M-13 ユートピア
M-14 TORIIIIIICO!
M-15 神輿ロッカーズ
M-16 地球ブルース~337~
M-17 マルシェ
M-18 sayonara sayonara
M-19 アンバランス
EN-1 完全チェンジTHE ワールド
EN-2 住所 feat. 岡村靖幸

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