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須田景凪、自身2度目のライブとなる東阪ワンマンで全14曲を披露

アーティスト

須田景凪

2013年からボカロP“バルーン”として活動し、昨年シンガーソングライターとしても活動を始めた須田景凪が、自身2度目となるライブを開催した。

「須田景凪 LIVE 2018 “Dolly”」と銘打ったツアーで、東京・渋谷WWW Xと大阪・梅田Shangri-Laの2カ所で行われ、チケットは即ソールドアウト。今回では9月2日に行われた梅田Shangri-Laのステージをリポート。まだまだはっきりとした素顔を目にしたことのないファンも多く、しかも彼自身初めての大阪でのライブということもあって、会場は開演前から期待を胸に集まった超満員のファンの熱気で溢れかえっていた。

雨音のSEとバックスクリーンに映し出されたバラの花の映像とともに登場した須田は「街灯劇」からライブをスタート。クールな表情でギターをかき鳴らしながら儚くも強さを感じる歌声を会場に響かせる。

「須田景凪です。今日はよろしくお願いします」と歌声の勢いとはギャップのある控えめな声で短く話し、続く「メーベル」へ。シーケンサーを用いたピアノサウンドや電子音と生バンドの演奏とが重なり合い、独特の世界観を作り出していく。

バルーン名義で発表した「雨とペトラ」のセルフカバーも交えながら、オープニングから場内に漂う独特な緊張感も味方につけて、矢継ぎ早に曲をたたみかけていく。ボカロではない須田自身の歌声でのライブに、オーディエンスは目を輝かせながら手を挙げたりリズムに乗ったりと思い思いに楽しんでいる。

再び雨音が流れていつのまにか閉じられていたバックスクリーンの幕が開き、映像クリエイター・アボガド6によるミュージックビデオの映像が流れて始まったのは「Cambell」。物憂げな雰囲気のバラードと映像とが融合し、曲の世界観をよりストーリー的に表現していた。

ここからはゆったりとした曲が続き、どこか心の叫びのようにも感じる須田の突き抜けるような歌声が、観る人をどんどん引き込んでいく。とりわけ「アマドール」では美しいメロディとシンセサイザーのハーモニーが孤独感のある歌詞をより強調していた。「(フロアとステージとの距離が)すごい近いですね。こんなに近いと思わなかった(照れ笑い)。でもすごく楽しいです、ありがとう」と言葉少ないながらも、彼の素直な気持ちがMCから感じられてオーディエンスからも笑みがこぼれる。

須田の歌詞には孤独感や憂いを含んだノスタルジックなものが多いが、不思議と暗さを感じない。特に「レディーレ」では、オレンジの照明が部屋に差し込む鮮やかな夕日のような効果を与え、切なさの中にもどこか温かい印象を感じさせた。

いよいよライブはラストスパートへ。サイケなギターリフから始まる「鳥曇り」からバルーンの代表曲である「シャルル」で会場のボルテージは一気に上昇。サポートメンバーである堀正輝(Drs)が4つ打ちのビートを刻み、Awesome City Clubのモリシー(Gt)とボカロPの有機酸(Ba)も飛び跳ねながら楽しそうに演奏している。

「ポリアンナ」では手拍子を煽り、続く「レド」で会場の盛り上がりはピークに。「次で最後の曲になるんですけど」という須田が切り出し、まだまだ聴かせてほしいと願うオーディエンスからの強烈な声援を浴びつつ、須田が、ツアータイトルとなった楽曲「Dolly」について「『須田さんって優しそう』『真面目そう』って言われることがあるんですけど、優しいっていうよりも、人間として駄目なんじゃないかとか、真面目っていうよりも愚かなんじゃないかとかって思う時が週4日ぐらいあって(場内笑い)。そういう矛盾はあるんだけども、そう言っていても仕方ないので、無理矢理でも前を向いていこうという気持ちで書いた曲です」と告げて、その「Dolly」へ。レトロなピアノサウンドが耳に残るこの曲を映像とともにエモーショナルに歌い上げて本編が終了した。

鳴り止まないアンコールの声に呼ばれて須田が再びステージに戻ってくると、まずはサポートメンバーをそれぞれに紹介し、しばし場内が和やかな雰囲気に包まれた後、須田が、もしかすると幼い頃に来たことがあるかもしれないけど、自分の足で訪れたのは初めてという大阪の印象を「賑やかで楽しい場所」と表現。そして「また絶対大阪でライブします」とオーディエンスと約束をして、何気ない日常の中にある過去や未来、そして今について綴った「密」をしっとりと歌いあげ、強烈な拍手と声援が鳴り止まぬ中、彼は両手を合わせて小さくお辞儀をしてステージを去り、記念すべき大阪での初ライブが終了した。

アンコールを含め、約1時間半というコンパクトな構成だったが、その中に須田景凪の音楽がしっかりと凝縮されていて、とりわけ彼の繊細さと強さを兼ね備えた歌とメロディセンスの素晴らしさを充分に感じさせるライブだった。彼の今後の飛躍に注目だ。

取材&文=村尾ひかり(Talking Rock!)
Photo by Taku Fujii

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