HY、全国47都道府県ツアーが地元・沖縄からスタート 最終公演は沖縄コンベンションセンターに
HYが8月にリリースした初のセルフカバー・ベストアルバム「STORY 〜HY BEST〜」を引っさげて、全国47都道府県ツアー「HY STORY TOUR〜うさがみそーれ めんそーれ そーれそれそれ ゆくいみそーれ」を、9月22日、沖縄・宜野湾海浜公園屋外劇場からスタートした。
通常2500ほどのキャパシティであるこの会場で、立見席を入れ3500人を動員したこの日の公演は、もちろん完全ソールドアウト。会場となった宜野湾海浜公園屋外劇場は、2002年の初のワンマンライブをはじめ、2010年に行った162公演のツアーの初日など、HYにとって節目節目でライブを行ってきた想い入れの強い場所。さらに2002年から全4回行われた同会場でのライブで、今回がHY史上、最高動員数を記録するなど、始まる前から今のHYへの期待が溢れていた。
ツアーの初日にこの会場を選んだことを新里英之(Vo&Gt)は、「これは20周年に向けてのスタート。20周年に向けて、もっと大きな一歩を踏み出していけるように、という想いでこの場所から始めたいと思いました」と話している。
開演15分前のバックステージ、「ばっちりです」と親指を立てる宮里悠平(Gt)と許田信介(Ba)、新里はステージ脇から会場を眺めながら「緊張する」と漏らす固い表情の中にも、最高のライブにしようという強い決意が感じられる。
超満員の観客に向かって「叫べー!」という名嘉俊(Dr)の絶叫でライブは始まった。開演時間にはそれまで降っていた霧雨も上がり、上空では今この会場にいる人たちの清々しい心を映したように青空も見え始めている。
記念すべきベストアルバムを携えてのツアーということで、「AM11:00」や「366日」「ホワイトビーチ」などHYの代表曲はもちろん、HYにとってもシンカー(仲間)にとっても想い出に寄り添っている曲が次々と歌われる。HYの歌とともに紡いできた自身のストーリーを思い浮かべているのだろうか。会場の誰もが、一緒に歌っている姿が印象に残った。
さらに仲宗根泉(Key&Vo)監修による恒例の“イーズーコーナー”では、メンバーの熱演が笑いを誘う。楽しむところは全力で楽しみ、歌を聴かせるところは徹底して聴かせる。この自由な表現とオンオフ感がHYのライブの楽しみのひとつだ。それはこのツアーでも変わっていない。
沖縄を感じさせる曲が始まると、宮里の奏でる軽快な三線の音に合わせて会場全体がカチャーシーを舞う。沖縄でのライブということもあるが、練習なしでカチャーシーの手踊りが即座にできるのも18年の活動の中で培ってきたHYとシンカーとの絆を感じる景色だった。
最後にサプライズの発表があった。47都道府県を巡った来年3月23日(2002年にHYが初めて宜野湾海浜公園屋外劇場でワンマンライブを行った記念日)に、また、20周年の企画の始まりとして、ツアーのファイナルを、沖縄コンベンションセンター展示棟で行うことが発表された。また来春には13枚目のオリジナルアルバムを、さらに冬に行う全国ツアーも同時に発表された。
2時間半の時間を感じさせないほど充実したライブだった。終了後、新里はこう話してくれた。
「今までここ(海浜公園屋外劇場)でやったワンマンの中で、今日は一番お客さんが来てくれた。20周年目に向けて“HY第2章”をスタートしていこう!という気持ちでいたので、今日この景色が見られたことがツアーの励みになりました」
4回目の47都道府県ツアーとなる「HY STORY TOUR〜うさがみそーれ めんそーれ そーれそれそれ ゆくいみそーれ」は、12月24日守山市民ホールまでの前半31公演がすでにソールドアウト。来年1月12日札幌市教育文化会館から始まる後半も、9月22日に発売が開始されると同時に、SOLD OUTが次々発表されるなど、まさに今年に入って快進撃を続けるHYの勢いを証明しているようだ。
ツアータイトルの言葉は「うさがみそーれ」=「お召し上がりください」「めんそーれ」=「いらっしゃい」「ゆくいみそーれ」=「ひとやすみしていってください」を意味する。この沖縄方言ネーミングはHYツアー恒例で、今回もまさに両手を広げてシンカーを待っているHYメンバーの気持ちが、沖縄らしい言葉でユーモアいっぱいに表現されている。
ツアー初日、シンカーからのたくさんの想いとパワーを全身で受け取ったHYは、ここから全都道府県へと旅立っていく。新たなストーリーと出逢うために…。
取材・文/伊藤博伸