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Spotify「バイラルトップ50」で1位。無名音楽家が約1カ月で成し得たこと【Kotaro Saitoインタビュー】

アーティスト

Kotaro Saito

2018年8月7日にリリースされたKotaro Saitoの楽曲「秒の間」が、音楽配信サイト「Spotify」の「バイラルトップ50(日本)」において1位(※1)に。さらに「Brainstorm」が2位(※2)にランクインした。ほぼ無名と言っても過言ではない音楽家がなぜここまでの結果を出すことができたのか、今回は彼のインタビューを交えつつその裏側に迫る。

※1:2018年9月17日 「秒の間」Spotifyリンク
※2:2018年9月1日〜9月4日 「Brainstorm」Spotifyリンク

 

そもそも“Kotaro Saito”って?

冒頭で「ほぼ無名」と紹介したKotaro Saitoだが、実は2014に大手広告代理店から独立後、主にCM音楽クリエイターとしてすでに音楽業界では活躍しており、「国際連合」「ワコール」「Z会」「ネスレ」などの国内外の大型案件のCM音楽制作をおこなっている音楽クリエイターであるとのこと。

今回「Spotify」の「バイラルトップ50(日本)」で1位と2位にランクインした2曲に関しては、自身2枚目となるオリジナルアルバム「BRAINSTORM」に収録されていた楽曲なのだというが、なぜCM音楽クリエイターとして活動している彼がオリジナルの楽曲を世にリリースすることになったのか、彼に質問を投げかけてみた。

 

 

「音楽の価値、もっというと音楽家の未来を変えるきっかけを創りたい、それが原点であり目標なんです」

「ご存知の通り音楽の価値って、2000年代に入ってから劇的に変わってしまったと思うんです。インターネットやアプリを通して音楽を楽しめる機会が広がったと同時に、音楽に課金する機会自体が少なくなった。

こういった事実自体は僕自身、とても良いことだと思っているんです。リスナーの立場で考えれば、いとも簡単に大量の音楽に触れあえますしね。

ただ、音楽家として同じく業界を見てみると、日々生まれている楽曲の評価が上がりづらい世の中でもあるなと……。であればそんないまを憂うよりも、いまの時代に合った音楽家が評価される道筋をつくれたら良いなと。こういうと偉そうに聞こえてしまうかもしれませんが、これは僕の夢であっていつかそんな時代になればよいと本気で思っています。

だからこそ、本業であるBtoBの仕事だけでなくひとりの音楽家としてリスナーの皆さんを向いた楽曲制作をおこないたいと思ったのが、オリジナル楽曲をリリースするきっかけになったんです」

 

 

「バイラルトップ50」1位になるまでにKotaro Saitoがおこなった3つのこと

エンドユーザーを向いた音楽業界においてはほぼ無名の彼が、なぜ「Spotify」の「バイラルトップ50(日本)」に2曲を1・2位にランクインさせることができたのか、いよいよここからはその核論について触れる。

「第一に僕が決めたことは自分の楽曲を配信するにあたって、さまざまなサービスを使っていますが、メインの土台を『Spotify』に絞ったというところが重要だったかなと思います。

『Spotify』はシーンに合わせて音楽を聴くという、現代のニーズに合った設計がされたサービスであることと、一般ユーザーにも開かれたプレイリスト文化があり、新しい楽曲をユーザーに発見してもらおうという風土が非常に強いこと、あとはグローバルな目で見た際のシェア率の高さをみたうえで、主戦場を決めるにあたっては企画当初からほぼ一択でしたね。

結果、アプローチ先を絞ったことで、早期に目標を達成し、ゴールイメージを更新し続けられたのかなと。」

具体的にKotaro Saitoがおこなったことは以下の3つのこと。

STEP1/リスナーインサイト深耕
STEP2/キュレーターとの接点構築
STEP3/プロモーションの強化

【STEP1/リスナーインサイト深耕】

「売れる音楽をマーケティングするのではなくリスナーとの共感の接点をマーケティングするんです」

さまざまな事柄がデータサイエンスによって見える化され、売れる楽曲をマーケティングしたうえで制作をする、なんて光景も音楽業界においては珍しくない時代になったものの、Kotaro Saitoのいうマーケティングはそこではないという。

「いろんなタイプの音楽家や、いろんなケースの音楽制作の現場があると思うので、僕自身売れる音楽をマーケティングすることはひとつの手法としてアリだと思っています。

ただ、僕の場合はそもそも目指しているのが純粋に自分の楽曲をより多くの人に広く深く聴いて欲しいということなので、その登り方は少し違うかなと。『広く深く』聴いてもらうために、音楽を届ける先の人々がどんな生活をしていてどんな感情を持って生きているのか、という部分に関してはきっちりとマーケティングをおこなうべきだと僕は思っています。

なぜか、という質問に対してはシンプルに『ちゃんと聴いて欲しいから』というしかないんですけど(笑)」

決して「売れる音楽」をマーケティングしてアウトプットするのではなく、現代を生きるリスナーのインサイトをマーケティングにより抽出し、そこから先は感性によって創造する。それこそがKotaro Saitoのつくる音楽なのだ。

【STEP2/キュレーターとの接点構築】

「まずはキュレーターに知ってもらいプレイリストに選んでもらうことが大事なんです」

楽曲リリースの3日後には「Spotify」のオフィシャルプレイリスト「Midnight Chill」を含む国内外のプレイリストにそれらが収録されることになったと語るKotaro Saito。当初からプレイリストの存在にこだわった彼がおこなったこととは?

「楽曲が完成し、リリースする段になってまずおこなったことは『Spotify』上で影響力があるキュレーターとの接点をつくったことです。

日本よりもはるかに市場が成熟している海外のプレイリスターにコンタクトし、自分の楽曲をプレゼンしました。より多くの人に自分の楽曲を聴いてもらうためには、直接リスナーに向けた施策を投じるよりも、彼らのプレイリストに楽曲を入れてもらったほうが面積は広いですから。

ちなみに『Spotify for Artists』はもちろんのこと、海外でしかリリースされていない『SubmitHub』や『Playlist Push』などもプレイリスターとの接点をはかる上で非常に便利だと思うので、ぜひ参考になれば同業の方には使ってもらいたいですね。」

【STEP3/プロモーションの強化】

「一にも二にも自分自身、自分の楽曲を徹底的に言語化することが基本だと思っています」

上記「STEP2」をおこなった結果、楽曲のリリースからわずか18日で「Spotify」の「バイラルトップ50」にまずは1曲目がラインクインしたという事実が物語る通り、やはりプレイリスターとの接点強化は必須のようだ。その上で「STEP3」として重要であるとKotaro Saitoが語るプロモーションの強化の内容に関して聞いてみた。

「音楽業界って何事も感性で語る人が多いと思うんです。まさに僕もそうなのですが(笑)。ただ、前段でもお伝えした通り、音楽の在り方が変わりつつあり、フォローいただいている方の数がさほど多くない僕が感性で世の中に自分の存在をアピールしてもリーチ力には限界があるのではと思ったんです。だからこそ、なぜその楽曲をつくってどんな人にどんなシチュエーションで聴いてもらいたいのか、ということを徹底的に端的に伝える努力をしてみました。

その上でプレスリリースを打ってみたり、『note』のようなアプリで自分がおこなっていることをリアルタイムで紹介してみたり、SNS上でアプローチをかけたりした結果、伝わりやすさが功を奏したのか予想以上に『Spotify』上のストリーミング数に効果が跳ね返ってきたんです。

こういった作業って、本来はたとえばマネージャーやPRを担う方々の仕事だと思うのですが、僕自身いかんせんひとりなので(笑)。でも、これらを自ら行ったからこそ、猛スピードで情報が淘汰されるインターネットの渦の中で適宜最適なメッセージを発信できたのではないかなと思っています。」

Kotaro Saito note「https://note.mu/kotarosaito

 

 

結論、なぜ「バイラルトップ50」にて1位になったのか

当初から明確なゴール設定とそれに向けた戦略を引いていたこと、さらに先述した3つの施策を実行したことが結果につながったと語るKotaro Saitoだが、彼いわくこのこと自体はさほど重要ではないという。

「僕たちのように音楽を創っている人間にとっては、シンプルに楽曲をより多くの人たちに聴いてもらうことが目標であり、ゴールだと思うんです。だからこそ、今回紹介させてもらった3つの施策って、とても重要なことではあるんですが、これらを遂行すること自体をゴールにすることは危険だなと常に考えています。

なぜならば本質的に大事なのは楽曲の中身であり、これらの施策はあくまでも僕たちが作業すべき楽曲制作の時間を最大限確保するために、それ以外の作業をどうやったら効率的にまわせるのかを考えた末に出てきた正解です。つまり、一番重要なのはいかにして楽曲制作の質の良い時間を自分自身が捻出できるかだと思います」

 

 

Kotaro Saitoの今後

今回は彼の作品に関して言及することはなかったものの、自身がCM音楽制作で培った、たった数秒で人々の心をつかむためのインサイト深耕スキルを活かした「聴き手の具体的なアクションを促進させる音楽」というアプローチ、すなわち彼の提唱する「Life Style Music」に関しても今後の展望が気になるところ。ちなみに次作に関しては2018年末にリリース予定とのことだ。

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