パスピエ、キャリアを総括する初の日比谷野音ワンマン“印象H”大成功
パスピエが10月6日、東京・日比谷野外音楽堂で初の野外ワンマンライブ「パスピエ 野音ワンマンライブ “印象H”」を開催した。
成田ハネダ(Key)の「初の野音という節目に、我々が大切にしてきた印象、という言葉をつけました。これまで積み重ねてきた音楽を存分に味わってもらえる舞台にして待っています」というコメント通り、結成10年目を目前にしたパスピエの軌跡をダイレクトに体感できるステージが繰り広げられた。
白のバックライトに照らされながらメンバーが登場、オープニングSEを演奏し、大きな歓声が巻き起こる。さらに黒を基調にしたワンピースに身を包んだ大胡田なつき(V)が姿を見せ、両腕を左右に広げて一礼。3rdアルバム「娑婆ラバ」に収録されたミディアムチューン「素顔」からライブをスタートさせた。
成田ハネダのクラシカルな旋律と大胡田の叙情的なボーカルが絡み合い、早くも大きな感動が生まれた。さらに「ヨアケマエ」では大胡田がエンディングでシンセを演奏。
また「贅沢ないいわけ」では三澤勝洸が華やかなギターソロを放ち、「永すぎた春」では露崎義邦(Ba)がしなやかなベースプレイで楽曲に深みを与えなるなど、メンバーのセンスと技術が活かされた演奏によって、パスピエ独自の世界観を描き出してく。
5曲目は「チャイナタウン」。バンドを代表するアンセムがライブ前半から披露され、会場は圧倒的な興奮に包まれた。
「今日の天気も(前日まで)“曇りかな、もしかしたら雨かな”ってなってたけど、本当に最高だし、皆さんも最高です。今日は来てくれてありがとうございます! 虫の声も聞こえて、いい感じ。たまにはこういう外で解放的なのも良くない?! パスピエの初・野外ワンマンライブ。最後まで楽しんでいきましょう!」(大胡田)という挨拶の後も、パスピエの独創的な音楽性、優れたポップネス、質の高い演奏を堪能できるシーンが続いた。
1stフルアルバム「演出家出演」に収録されたダンスチューン「シネマ」では観客が左右に手を振り一体感を演出。「ネオンと虎」では80年代ニューウェイブ・サウンドの進化型と称すべき音像を響かせ、成田の美しいピアノに導かれた「花」では、エモーショナルなバンドサウンドとともに大胡田が叙情的なメロディを歌い上げた。
そしてライブ中盤のハイライトは「脳内戦争」だった。メジャー1作目のミニアルバム「ONOMIMONO」に収録されたこの曲が演奏されたのは、2015年12月の日本武道館公演以来。ショルダーキーボードを持ち、ステージの真ん中でド派手なソロを弾きまくる成田をはじめ、メンバーが積極的に観客とコミュニケーションを取る姿も印象的だった。
さらに「このままいくよ!」という大胡田の煽りとともに、和のテイストを取り入れた「とおりゃんせ」、パスピエの楽曲のなかでももっともアッパーなナンバー「フィーバー」などを披露。個性豊かな楽曲によって野音全体のテンションも一気に上がった。
「パスピエはもうすぐ結成10年。9年の間にライブハウスもやったし、フェスにも出させてもらったし、武道館みたいな大きい場所でもやって。そこに日比谷野外音楽堂が加わって本当に嬉しいです。初めの日がみなさんと一緒でよかったなって」(大胡田)
「自分たちとって“印象”は始まりの言葉。パスピエという名前自体が印象派の作品だし、以前やっていた対バンシリーズの名前も“印象A”から始まって。また今回、新しく始めるという意味を込めて“印象H”というライブをこんな素敵な場所でやれて嬉しいです」(成田)
という心のこもったMCを挟み、ライブは後半へ。「ON THE AIR」「裏の裏」「MATATABISTEP」と人気曲を次々と放ち、心地よい高揚感を生み出していく。
さらに「毎日、音楽をやりながら私たちは生きていくので。またお会いしましょう」という言葉に導かれた「最終電車」、そして、観客の大合唱が響き渡った「S.S」も。大きな拍手と歓声に包まれ、本編が終了した。
アンコールでは、メンバーが改めて挨拶。「今日は大成功だと思います! しどろもどろになりそうなくらい、気持ちが高鳴ってます」(露崎)、「今日言いたいことは一個だけ。晴れてよかった! こんな最高なライブができてうれしいです」(三澤)、「外だと気持ちがオープンで優しくなれるよね。また一緒にライブしようね」(大胡田)という言葉からも、“初めての野音”に対する強い思いが伝わってきた。
「楽しくてテンション上がってるなか、調子に乗って新曲やってもいいですか?」(成田)と出来たばかりの新曲を披露。続いて新体制となって初めての作品「OTONARIさん」の収録曲「正しいままではいられない」によって、さらなる高揚感へとつなげた。最後はダブルアンコールの「ハイパーリアリスト」。パスピエの9年間のキャリアのなかで生み出された楽曲を解放的な空間のなかで堪能できた、大充実のライブだったと思う。
撮影:Yosuke Torii
セットリスト
01 素顔
02 ヨアケマエ
03 贅沢ないいわけ
04 永すぎた春
05 チャイナタウン
M C
06 シネマ
07 ネオンと虎
08 トロイメライ
09 花
10(dis)communication
11 脳内戦争
12 とおりゃんせ
13 蜘蛛の糸
14 フィーバー
15 マッカメッカ
M C
16 ON THE AIR
17 裏の裏
18 MATATABISTEP
19 最終電車
20 S.S
ENC.01
21(新曲)
22 正しいままではいられない
ENC.02
23 ハイパーリアリスト
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