小坂忠「ほうろう」再現ライブを記念してTOKYO FMで特番放送、松任谷正隆・さかいゆうとの対談が実現
小坂忠「ほうろう」を再現させるライブの開催を記念して11月4日 11:00よりTOKYO FMで特別番組の放送が決定した。
1975年に発売された小坂忠のアルバム「ほうろう」。ティン・パン・アレー、細野晴臣(B)、鈴木茂(G)、林立夫(Ds)、松任谷正隆(Key)の4人がレコーディング・メンバーとして参加した本作は、今もなお、数々のミュージシャンに影響を与え、日本のソウルミュージックの礎を築いたアルバムとして聞き継がれている。
そんな小坂忠「ほうろう」を100年後も響かせるべく、11月26日に一夜限りのスペシャルイベント、「新日本製薬 presents SONGS & FRIENDS 第2弾 小坂忠『ほうろう』」が開催される。このイベント開催を記念して、TOKYO FMでの特別番組の放送が決定した。番組では、小坂忠と松任谷正隆、さかいゆうという世代を超えた2組との対談が実現。その番組の内容の一部が遂に、明らかになった。
2018年10月某日、小坂忠と松任谷正隆の対談が行われた。これは、11月26日に東京国際フォーラム ホールAにて、小坂の名盤「HORO」(1975年)を名だたるアーティストが再現するライブ「新日本製薬 presents SONGS&FRIENDS 小坂忠『ほうろう』」が開催されることを受け、ラジオ番組の収録として実現したもの。
当日のライブには小坂本人も出演するほか、松任谷が総合演出を手がけることとなっており、同ライブへ向けた話題はもちろん、かつては“小坂忠とフォージョーハーフ”、“ティン・パン・アレー”として共に活動するなど、40年以上にわたって盟友として親交を重ね、同時に日本の音楽史に名を残してきた両者だからこそ語ることのできる、貴重なトークが繰り広げられた。
最初の話題は“出会い”。松任谷にとって「一生で一番緊張した」、「60歳を過ぎても、あの日以上に緊張したことはない」という人生初のレコーディング現場が小坂と一緒であったことから始まり、後の配偶者・荒井由実(「SONGS&FRIENDS」初回開催は彼女の「ひこうき雲」である)も小坂のアルバム「ありがとう」に、ピアノとしてレコーディング参加していたことなど、冒頭から濃いエピソードが次々に飛び出していく。
本来は番組スタッフが進行を務める予定であったものの、2人のトークがあまりにも滑らかに弾むため、ほぼフリートーク形式の対談となり、フォージョーハーフを結成するにあたり埼玉県の狭山を生活の拠点にしていた際のエピソードなど、興味深い内容も明かされた。生活道具を揃えるために一緒にバザーに行ったこと、ボウリング場のナポリタンがご馳走だったこと、劣悪な環境でのイベントに“はっぴいえんど”らと出演したことなど、いつの世代のバンドマンも味わうような青春時代の思い出話、苦労話ではあるのだが、そんなエピソード一つ一つを取っても登場人物がレジェンド揃いであるため、収録スタジオには何度も驚嘆の声が上がっていた。
今回のメインテーマとなる「HORO」に関しては、それまで小坂をフォークシンガーだと思っていたという松任谷がその認識を改めた一枚であるといい、「生きている」アルバムであると振り返る。小坂本人にとっては、自らのルーツがカントリーバンドから始まり、だんだんと音楽性やボーカルスタイルが定まりつつあったタイミングで生まれた作品であると語られた。
また、彼が歌うきっかけとなった存在としてレイ・チャールズやナット・キング・コールの名前が挙がり、そういったルーツと向き合った「HORO」という作品が、本格的なソウルシンガーとして活動する現在の小坂に至る、源流的な作品であることがわかる発言も。 また、収録曲の「ボン・ボヤージ波止場」のリズムから松任谷がインスピレーションを受けたことで、とある名曲の誕生につながったことも明かされている。
そして最後は「SONGS&FRIENDS」当日に向け、どんなライブにしたいか?という話題に。小坂は、自身の歌やティン・パン・アレーのメンバーそれぞれの、音楽性における変化や重ねた経験がどのように作用するのかが楽しみだと語り、松任谷は自らと知り合う前の小坂の姿も「HORO」以降の小坂の在り方も、その両方が見える内容にしたい、と意気込みを口にしていた。
ライブ当日は、小坂に影響を受けた様々なアーティストたちが世代やジャンルを越えて集い、それぞれが歌や演奏で「HORO」の楽曲を彩ることになる。それは間違いなく大きな見どころの一つといえるが、さらにはこの日の対談でも多くのエピソードに登場したフォージョーハーフやティン・パン・アレーのメンバーがプレイヤーとして集結するほか、プロデューサーを武部聡志が務め、オリジナルプロデューサーとして細野晴臣が登場するなど、時代を象徴する面々が集うことも見逃せないだろう。
そして何より、円熟味と圧倒的なパワーを併せ持ち、まさしくレイ・チャールズを彷彿とさせるかのような、現在の小坂の歌声と魂はいま触れておくべきもの。「HORO」を愛聴している人、70年代の音楽シーンを体験してきた世代は当然のこと、後進たちの音を通して当時の音楽を知った世代にとっても、またとない貴重なライブとなることは間違いない。また、番組ではこのイベント「SONGS & FRIENDS」に参加するアーティストである、松任谷由実、槇原敬之、田島貴男、Charから小坂忠へのメッセージが届くという。お聴き逃しなく。
撮影:高田梓
文:風間大洋