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ユニコーン、笑顔に包まれる30周年ツアーファイナル

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今年、デビュー30周年となるユニコーンは、全アルバムとオリジナルアルバムには収録されていないシングル曲や配信曲、メンバーそれぞれの50祭テーマソングをリマスターしたCDボックスセット『UC30 若返る勤労』をリリース。

その発売日の12月6日に、福岡からツアー“UC30 若返る勤労”をスタートさせた。ツアー前のインタビューでは、5人全員が「今が最高!」と語っており、ベスト・コンディションでのアニバーサリー・ツアーは各地で絶賛されつつ、ついに大阪でファイナルを迎えたのだった。

注目のオープニングは「雪が降る町」。ユニコーンを代表する年末ソングの決定版だ。30周年記念ライブのスタートはどの曲なのかとあれこれ考えて肩に力の入っていたファンは、意外な選曲に一瞬、驚いたものの、大喜びで表情豊かな演奏に身をゆだねる。それにしても♪どうか元気で お気をつけて♪と結ぶナンバーを1曲目にもってくるセンスが、さすがユニコーンだ。おそらく一筋縄ではいかないライブになるのだろうと予感して、わくわくが止まらない。

次にビックリしたのは、「Hystery-Mystery」だった。この曲は、再結成後、ライブで一度も演奏されていない。しかもデビューアルバム『BOOM』の1曲目に入っている。ということは、この曲でユニコーンに出会った人も多いはずだ。 30周年の感慨が、ジワジワ背筋を襲ってくる。観客は久々の人気曲に酔いしれたのだった。

中盤はドラムの川西幸一が歌う「ロック幸せ」、ベースのEBIが歌う「夢見た男」、ギターの手島いさむが歌う「オッサンマーチ」を立て続けに。奥田民生がドラムを叩いたり、ABEDONがベースを弾いたりしてサポートする。全員が歌い、5人だけで演奏を完結させる“ユニコーン・スタイル”を堪能する。

絶好調と言うだけあって、ライブは快調に進む。ABEDONがピアノを弾きながら歌う「R&R IS NO DEAD」で風格を感じさせたかと思ったら、「ヒゲとボイン」では奥田をはじめとするメンバーが激しく会場をあおってヤンチャな一面をのぞかせる。バンドブーム真っ只中の87年にデビューして、ブームの盛り上がりの原動力のひとつとして大活躍。「バンドは楽しい」というコンセプトを若い世代に広めたユニコーンの魅力を、集約したセットリストがたまらない。

続く「SAMURAI 5」で暴れまくったABEDONは、終わるとさすがに息を切らせている。それもまた楽しいムードを醸し出す。このバンドだからこそ、このメンバーだからこそ、このキャリアだからこそと言いたくなるシーンが次々に展開される。

ユニコーンは1993年に一度、解散し、16年間のブランクの後、2009年に再結成された。つまり30周年といっても、“実働期間”は半分にも満たない。そのことの意味をよく知っている5人は、「雪が降る町」でライブをスタートさせて照れてみせ、完全復活を決定付けたアルバム『シャンブル』からの曲を要所要所に置いて“30年目のユニコーン”を全力でファンの眼前にさらけ出す。このフェアなやり方に、心から拍手を贈りたくなった。

ラストは解散前の最後のシングル「すばらしい日々」と、アルバム『ヒゲとボイン』収録の「車も電話もないけれど」だった。どちらもスケールが大きくて明るい曲で、ユニコーンらしい“愛”が描かれている。ユニークな音楽作りとウイットに富んだライブ・パフォーマンスで、今もJ-ROCKをリードする偉大なバンドの本領を見せてくれた。

アンコールは得意のお遊び(?)タイム。復活後の大ヒット「WAO!」の途中で、ABEDONがリードして“ユニコーンのイントロクイズ”に突入する。自分たちが作った曲なのに、なかなか正解しないから、場内は爆笑の連続だ。ユニコーンのもう一つのテーマである「音楽で遊ぶ」楽しさを、ここで披露する。最後はやはり『シャンブル』からの「サラウンド」で締めた。

帰途につくオーディエンスたちは、みんな笑顔。この日のライブは二度とないと心から思えて、不思議な満足感が押し寄せてくる、実にユニコーンらしい30周年ライブだった。

text:平山雄一
photo:三浦憲治

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