asobiusの多幸感に満ちたファンタジーワールド、レコ発ツアー「we need YES」初日ライブレポート

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9月9日、東京・渋谷O-nestにてasobius企画「we need YES 東京編」が開催された。対バン相手にカフカを迎えた東名阪ツアー初日、ライブは大きな盛り上がりを見せた。

爆発音のような会心の一撃でカフカのライブはスタート。その音圧に会場がグッと前のめりになる。演奏されたのは、ポップだがノイジーに響く「Ice Candy」。まさしく夏の終わりの季節を描いた曲は、聴く者の心に甘く優しく溶けていく。続いて演奏されたのはダンサブルなナンバーの「ニンゲンフシン」。スラップとカッティングがグルーヴィーな1曲なのだが、そこにのる歌詞は<人があまりにも信じられません>という辛苦な内容。しかし<誰よりも僕を今 信じてる>と結ばれるこの曲で、ニンゲンフシンに陥りながらも苦しいときを共に越えてきたasobiusへ、敬意を示しているようにも見えた。

その後も「彼女は海で」「Night and Day」とステージは続いていく。「改めて自分の心を感じて欲しい」というMCに導かれ始まったのは「マネキン」だ。<何回だって傷ついたって 僕を僕にしてるもの>というリリックが、痛みを力に変え前に進んできたカフカをそのまま表現しているようだった。感傷に浸る暇など与えず「雨」へと繋がれる。ベースを弾かずにタムを重ねる中間部のセッションは、雨が次第にひどくなり豪雨になっていくさまを表しているよう。感情をそのまま吐き出したような演奏に思わず息をのんだ。

続いて演奏されたカフカきってのパーティーチューン「City Boy City Girl」にフロアが揺れ、高く手が上がる。そしてそのままギターリフが美しく響く「Night Circus」へと繋がれ、最高潮の盛り上がりを見せた。ラストソングとなったのは、3拍子で展開される「あいなきせかい」。心の叫びをそのまま映したようなメロディックなギターソロに、思わず涙腺が刺激される。「そのままのあなたでいい」と大きな愛を残し、彼らはステージをあとにした。

幻想的なSEを背にasobiusは登場した。パワフルなタム回しで沈黙を破ったのは、始まりの1曲にふさわしい「sons of the sun」。初っ端から繰り広げられるファンタジーな世界に、自然とフロアからは手があがる。続く「flash」では伸びやかなファルセットを響かせ、「ice age」では鉄琴の音色により銀世界を表現して魅せた。

後半の封切りをしたのは、壮大な世界が広がる「I’m in the love」。ゴスペルのように深く尊く紡がれる甲斐の歌には、音楽で世界と人と繋がっていきたいという思いがこれでもかと詰め込まれていた。

“世界から独りぼっちをなくそう”というコンセプトで作られた「YES」のリードトラックである「tonight」は、寂しい夜に寄り添って励ましてくれるような空気で満ちていた。

彼らが舞台から消えるとすぐに、規則的な拍手が会場に響きアンコールへと転じる。1曲目に演奏されたのはカフカの「night circus」のカバー。ポップかつメランコリックなアレンジはasobiusだからできたものと言っても過言ではないだろう。

たくさんの愛を会場に届け、多幸感に包まれるなかツアーの初日を締めくくった。

asobiusリスタートともいえる東名阪ツアー「we need YES」。環境が変わっても人が変わっても、彼らが伝えていきたいものは“愛に溢れた優しい世界なのではないか”と感じさせる幸福感に満ちたライブだった。このツアーは、今後も愛知、大阪と続いていく。誰も悲しまなくていい優しい音楽を感じに、ぜひライブへ足を運んでほしい。

文:坂井彩花
写真:umihayato

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