ハナレグミと手嶌葵、「Veats Shibuya」オープニングイベントのツーマンライブ大盛況にて終了
ハナレグミと手嶌葵のツーマンライブ「PREMIUM SEATED」が9月27日に東京・Veats Shibuya(ビーツ・シブヤ)にて開催された。
本イベントは、ビクターエンタテインメントが運営するライブハウス「Veats Shibuya(ビーツ・シブヤ)」の記念すべきオープニングイベントのラストを飾るライブで、初の試みとしてスタンディングのフロアに観客席を設置。純粋に歌声だけで聴き手の心を震わせる2人のヴォーカリストの競演をライブハウスならではの近さで、ホールのように椅子に座ってゆっくりと体験できるプレミアムな一夜となっていた。
小花花の黒のロング・ワンピースで登場した手嶌葵は、オオニシユウスケ(Gt)、大坂孝之介(Key)の3人編成で映画『西の魔女が死んだ』主題歌の「虹」からライブを始めた。目を閉じて、胸に手をあてながら、独特の吐息交じりの歌声をまっすぐに発し、アルバム「Ren’dez-vous」収録の大貫妙子が作曲し、手嶌自身が初めて作詞を手がけた「ちょっとしたもの」では聴き手にささやかだけど確かな希望を届けた。さらに、昨年12月にリリースされた第4弾となる映画音楽カバーアルバム「Cheek to Cheek〜I Love Christmas〜」から、映画『リトル・マーメイド』の「Kiss The Girl」と映画『昼下りの情事』の劇中でも起用され、サッチモも歌ったジャズナンバー「C’est si bon」のカバーをチャーミングに歌唱。
MCでは今年すでに6回も中国で公演していることを報告し、「たくさんの方に「好きです」「愛してます」って、愛を告白してもらえるので嬉しいなと思います」とはにかんだ。さらに、手嶌が敬愛する加藤登紀子がデビュー10周年を迎えた彼女に書き下ろしたワルツバラード「想秋ノート」やフジの月9ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」の主題歌としてヒットした「明日への手紙」で包容力のある歌声で会場を包み込む。ここで、観客を見渡し、「私のことを初めて見た方もいらっしゃると思うんですが、割と(身長が)大きい割に、声が小さくてごめんなさい」と笑顔で弁明すると、場内からは笑い声が上がった。最後は、ビル・ワイルダーの映画『お熱いのがお好き』でマリリン・モンローが歌唱した「I Wanna Be Loved By You」をアコギとピアニカの伴奏をバックにパフォーマンス。可憐で繊細な歌声の連なりによって観客を映像的な歌の世界に引き込み、楽曲を重ねるたびに拍手が大きくなっていく、聴き応えのあるステージとなっていた。
続くハナレグミは、LITTLE CREATURESの鈴木正人(Ba/Key)と大友良英のニュージャズ・クインテットや菊地成孔のDCPRGに参加していた芳垣安洋(Ds)によるトリオ編成。冒頭で観客に向かって「出来たばっかりだからちょっと緊張感ありますよね。でも大丈夫ですよね」と話しかけて、初めてのライブハウスに訪れて少々緊張気味な観客の心と体をほぐし、2003年にリリースされたフォーキーな名曲「ハンキーパンキー」を歌い始めると、フロアからは大きな歓声と拍手が沸き起こった。ナイジェリア出身のシンガーソングライターであるアシャの楽曲に永積自身が日本語で歌詞をつけた「360°」では言葉にならないフレーズやハミングでグルーブを生み出し、「家族の風景」はギターのアルペジオの一音一音に感情をグッと込めるように演奏。ここで、Veats Shibuyaの場所が、90年代に渋谷系ブームを巻き起こした中心地であったことを振り返り、「ライブハウスができるべき場所なんです。ビクターが作ってくれて嬉しい」と感謝の気持ちを伝えた。
そして、鈴木がベースからエレピへ、永積がアコギをシェイカーに持ち替え、マイケル・ジャンクソン「Human Nature」をカバー。エレピが途中でシンセベースとなるユニークな展開で、90年代のアシッドジャズブームを牽引したレーベル「トーキングラウド」発のUKソウルシンガー、オマーのカバー「There’s Nothing Like This」は、アーバンなボッサのアレンジで届けた。「両親が聞いてた井上陽水や吉田拓郎と、実は同じくらい影響を受けている」というカバー2曲に続き、「音タイム」では客席を右と左に分けてコーラスを指導し、見事なハーモニーを生み出し、<Veats、おめでとう!>と歌詞を変えて祝福した「明日天気になれ」では、ジャングルとアフロが交差したようなご機嫌なビートに合わせて大きなクラップが巻き起こった。演者も観客も興奮に包まれる中、家族愛や人間愛、友情や失恋など、様々な愛のかたちを歌で織りなした本編は、エレキギターとエレピ、ドラムによる「きみはぼくのともだち」を暖かくも涼しげな、優しくも寂しい歌声でじっくりと聴かせて締めくくった。
アンコールではまず、まずハナレグミのトリオが登壇し、日本では「時の流れに」と和訳されているポール・サイモン「Still Crazy After All These Years」をカバー。秋のニューヨークシティの夜景が目に浮かアーバンソウルのアレンジで観客を酔わせた後、手嶌葵とサポートメンバーを迎え入れ、キャロル・キングの不朽の名曲「You’ve Got a Friend」をデュエット。いい歌を、いい歌声といい演奏で聴かせることに徹した2組は、まさにプレミアムの名にふさわしいスペシャルなハーモニーと音楽の素晴らしさが詰まったアンサンブルを響き渡らせ、1週間で5日間開催された記念すべきオープニングイベントは最高の形でフィナーレを迎えた。
撮影/石井亜希
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