C&K、ももいろクローバーZ
THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2019
2019年10月5日(土)鹿児島市・桜島多目的広場&溶岩グラウンド【薩摩ステージ】
■SHANK
SHANK
開会宣言で登場した主催者タブゾンビと観客による、「将来、なんになるの~?」「こーむいーん!」という、鹿児島の人にしかわからないコール&レスポンスでお互いのグルーヴを確認したあと、今年の『THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL 2019』のトップバッター、長崎出身SHANKの3人がリラックスした様子でステージに登場。そして、庵原将平(Vo,Ba)による、もはや何を言ってるのかわからないぐらいテンションの上がった自己紹介のあと、「Surface」~「Good Night Darling」「Hope」「Life is…」とメロディックパンクチューンを立て続けにプレイ。朝10時というかなり早い時間ながらも、桜島におけるおそらく令和初のクラウドサーフがさっそく発生。
庵原は、「出れてうれしいッスわ!」とひと言。『サツマニアンヘス』は今年で2回目のまだ若いフェスだが、やはり地元九州のフェスには他とは違う思いがあるだろう。そして、雲ひとつない天気に映えるスカチューン「Frustration」で軽く体を揺らしたあとは、「Honesty」で再び加速し、サーファー続出の「620」へとつなぐ。30分という短い時間ながら、様々なタイプの曲を配置することでパフォーマンスにしっかり展開をつける。トップバッターの重圧なんてまるで感じさせない。ステージ運びも落ち着いたものだ。
今日の3人のテンションが如実に表れていたのがMC。庵原が「晴れてよかったッスね。このままでいくと、ももクロが始まる頃には死人が出るから、加減してってね!」と注意を促せば、松崎兵太(Gt,Cho) は「酒は水分補給にならんからね」と冗談交じりに付け足す。そして、「二日酔いのヤツが言うな!」という庵原のツッコミでひと笑い。こんなリラックスしたやり取りに続くのが、今日の天気にぴったりな「Weather is Beautiful」。うーん、なんていい時間なんだろう。
終盤、ミドルテンポの「Wake Up Call」で、再び空気を変えつつ、最後は「Set the Fire」から「submarine」へとバトンを渡し、オープニングと同じようにショートチューンで締めくくった。「バイバーイ!」と終始、自然体を貫いたまま3人はステージを去ったのだった。
取材・文=阿刀 “DA” 大志
SHANK
■雨のパレード
雨のパレード
上手(かみて)から、大澤実音穂(Dr)、福永浩平(Vo)山崎康介(Gt,Syn)が一列に並ぶという変則的なフォーメーションで薩摩ステージに登場したのは、雨のパレード。メンバー全員が鹿児島出身という彼らは、去年に続き2年連続の出演だ。
「調子はどうですか? 最初から盛り上がっていけますか?」という福永の言葉から、「Ahead Ahead」でライブがスタート。ダンサブルなサウンドに熱い生命力を注ぎ込むような大澤のタフなビートにのせて、今年から新体制になり、新たなスタートを切った雨パレの“これから”にかける想いが力強く歌い上げられていく。全員が黒の衣装に身を包み、都会的でクールな印象を漂わせるバンドだが、その音楽には心の内側で燃える情熱がたしかに宿ってた。
「ただいまー!」とあいさつを交わし、シンセサイザーやサンプリングパットを駆使した深遠なサウンドとフィジカルなバンドの演奏が融合した「Count me out」で軽やかに薩摩ステージを踊らせると、MCでは、「和田中を出て、情報高校に行きました」「高校の頃、グレイスヒル・オーシャンテラスという結婚式場で働いてました、すごいでしょ(笑)」と地元ネタを挟んだ福永。そんな地元の友人の結婚式に向けて作ったというホーリーなラブソング「Story」で会場を温かい愛でで包み込んだ。
最後は、フェスの主催者であるタブゾンビについて、福永が「俺は兄のように慕ってます」と熱く語ると、そのタブをステージに呼び込んだ「Summer Time Magic」のコラボで終演。トランペットの音色と溶け合った爽快なサマーチューンが、夏の終わりにスペシャルな思い出を作ってくれた。
取材・文=秦 理絵
雨のパレード
■家入レオ
家入レオ
灼熱の薩摩・大隈エリアで拳をあげたくなるアクトが続いた後だけに、家入レオの登場は逆に際立っていた。ドラマチックなピアノのフレーズに乗せ、正面を見据えて直立した彼女の第一声は<もし君を許せたら 誰かを愛せるかな>というシリアスな「もし君を許せたら」だったのだから。一転、「僕たちの未来」の曲間では「サツマニアン、全部全部、ここに届けて!」と求心力抜群な声の力でフィールドを一つにしていく。
福岡県出身の彼女は初めての“ヘス”の地で、オーディエンスの熱中症にも気を使いながら、「暑いけど、こんな青空の下で音楽を楽しめるって最高じゃない?」と、自分らしく歩く人の、その道を照らす青空に感謝するような歌唱で「Spark」を響かせた。
さらに強い日差しの中でも踊り、何かに挑みかかるように動き、時に膝をつき、全身でエモーションを表現する「Overflow」は、16ビートに乗るファイティングソングの趣き。ものすごいスタミナだ。
デビュー曲「サブリナ」では「本気見せろ、お前らー!」と煽るだけあって全力で歌いながらステージの端から端まで走る。気がつけばお父さんに肩車された小さな女の子も、そこにいるほとんどの人が拳をあげている。エンディングはみんなにジャンプさせ、薩摩エリアごとふわっと持ち上がったように見えた。
「ヤバい! 楽しい。いよいよ夏締めだなと思うんだけど、みんなと過ごせて嬉しかった」と彼女とギタリスト二人のアコギで、「君がくれた夏」をシンプルかつ豊かに聴かせるという、凝縮された30分を展開して見せたのだった。1秒たりとも無駄にしない、初めての場所に挑むことの意味を全身で体現してくれた。日焼けで顔を真っ赤にしながら歌い続ける彼女のかっこいいこと……ここにいられてよかった。
取材・文=石角友香
家入レオ
■04 Limited Sazabys
04 Limited Sazabys
「アラバキでタブさんに会ったとき、“俺、誘われてないっすよ”って、自分でゴリ押しをして。ここに来たくて帰ってきました」と、GEN(Vo,Ba)が直談判をして、今年の出演が決まったという04 Limited Sazabys。「サツマニアン、準備できてる?」と問いかけてからスタートした「swim」を皮切りに、メロディックパンクを土壌に自由なアプローチで鳴らす多彩なロックナンバーを薩摩ステージに投下していく。
KOUHEI(Dr)が叩き出す高速ツービートが、曲に込めた“前進の意思”を加速させる「My HERO」から、“パオ パン パン パン”という可愛らしいメロディが踊る「Kitchen」へ。先日、さいたまスーパーアリーナでの主催イベント『YON EXPO』を成功させ、また一回り大きなバンドへと進化を遂げたフォーリミの、強靭でありながら、人懐こいロックサウンドは、たとえフェスでも、まるでワンマンのような親密な空間を作り上げてしまう。
「これは未来からのメッセージ!」と叫んでから突入した全編英語詞の「message」、攻撃的なロックナンバー「fiction」「Montage」を間髪入れずに畳みかけた中盤。前日に鹿児島入りしたGENが、「ホテルで夜風が気持ちよくて窓を開けてたら、カメムシがガンガン入ってきた」と話し出し、それにHIROKAZ(Gt)が「ちゃんと注意が書いてあったよ」と冷静につっこむMCでも会場の笑いをさそうと、「自分自身に生まれ変われ!」と力強く伝えた「Squall」は圧巻だった。“こんなはずじゃない”と悔しさを原動力に何度でも立ち上がれと歌うメッセージは、バンドが歌うからこそ強い説得力がある。
取材・文=秦 理絵
04 Limited Sazabys
■HEY-SMITH
HEY-SMITH
KEMURIの次にHEY-SMITHがくる、という流れ。スカパンクの先輩から後輩へとバトンを託すようにつながる、このタイムテーブルが最高すぎる。
「大阪からきたHEY-SMITHです! ぶっ飛べー!」。初っ端からハイテンションに煽りまくる猪狩秀平(Gt,Vo)の言葉を皮切りに、「Endless Sorrow」からめくるめく狂騒が薩摩ステージを埋め尽くす。Task-n(Dr)が叩き出す性急なビート、満(Sax)、イイカワケン(Tp)、かなす(Tb)によるホーン隊が繰り出す陽性のフレーズをバックに、猪狩とYUJI(Ba/Vo)のツインボーカルが熱く吠えると、フィールドの熱狂は最高潮へと高まっていく。
「俺たちのライブは自由にやってくれ!」という叫び声を合図にポップなメロディが弾けた「Theme Of Hey」のあと、「音楽は世界で唯一認められている合法ドラッグです。バキバキにキメて帰れよ!」と、猪狩。日常の鬱屈をすべて吹き飛ばすような底抜けに楽しいヘイスミのライブでは、そこにいる全員を“仲間”と呼ぶ。
かなすがスタンドマイクを客席に向けてお客さんの声を巻き込んだ「Don't Worry My Friend」から、この夏、何度歌ったかわからないという爽快な「Summer Breezez」、祭囃子のようなリズムに全身の血が湧き立つ「We sing our song」、そして、わずか1分間の演奏に6人のプレイヤーの怒涛の猛攻を詰め込んだ「Come back my dog」まで、突風のように駆け抜けたステージ。悲しみと理不尽が溢れかえる日常だからこそ、感情が“楽しい”の一色で埋め尽くされるヘイスミの音楽が、やっぱり私たちには必要だ。
取材・文=秦 理絵
HEY-SMITH
■MONGOL800
ZIGGYの余韻に浸っている間に、薩摩の前にはとんでもない数の人が集まっていた。大隅のほうにまで人が溢れ出し、観客を誘導するスタッフが忙しなく動き回る(最終的には場内パンパン)。ここまでの注目を集めているのはMONGOL800だ。今日は、テナーサックス(SCAFULL KINGのNARI!)とトランペットを従えての登場。そして、「あーそびーましょう!」と「PARTY」をプレイ。ホーンが入ることでサウンドは豊かになり、いつもとは違った雰囲気ながら、新たな魅力を楽曲に吹き込んでいる。
3人に戻ってのパフォーマンスになったのは国民的名曲「あなたに」。やっぱり、この曲は強い。ステージ前から後方にあるPA卓前までみんなが大拍手である……ていうか、上江洌清作(Vo,Ba)から紹介があって初めて気づいたけど、サポートギターがHEY-SMITH猪狩秀平じゃないか! こんなのも今年の『サツマニアン』らしくていいし、ギター脱退というネガティブな要素をプラスに変えたバンドのアイデアに拍手を送りたい。
「OKINAWA CALLING」はただでさえお祭りチューンだが、今日はトランペットと男性ダンサー(上江洌の先輩らしい)まで現れ、お祭り騒ぎに拍車がかかっている。しかし、ピークタイムはまだだ。続いて流れ始めたのは、90年代からよく耳にしているあのダンスビート。そして、安室奈美恵「TRY ME ~私を信じて~」のカバーが始まる。なんとなくロカビリーっぽい雰囲気のあるアレンジで、原曲から大きくかけ離れている。これがまた面白い。演奏後、上江洌は猪狩がギターを弾いたことで、「モンパチの『TRY ME』が完成した」と満足げ。
しかし、最もパワーがあるのはやはり「小さな恋のうた」だった。そんなに挙がるかというぐらい挙がっていた観客の手は、夕陽に照らされて黄金に輝き、上から眺めているとナウシカが歩き出しそうなぐらいきれいだったのだが、<夢なら覚めないで>とはじまるCメロの大合唱はそれ以上に感動的だった。そして、「DON'T WORRY BE HAPPY」ではサポートメンバー全員登場でラストダンスを踊り、30分のパーティーは幕を閉じた。
取材・文=阿刀 “DA” 大志
■C&K
C&K
鹿児島市の日没が17:57。まさに夜の始まりとともにダンサーとステージに飛び出してきたC&K。ゴールドに輝くジャケットが、ド派手なライティングに負けない存在感だ。こんな人気者なのにライブは初見の筆者。バンド勢が続いた“ヘス”に、先ほどまでの氣志團とはまた違うエンタメ空間を作り上げていく力量に、その人気が腑に落ちた。
ラテンテイストのメロディをEDM的な4つ打ちに乗せるレパートリーが盛り上がらないわけがない! すっかり涼しくなり、待ってましたとばかりに踊る老若男女の楽しそうなことと言ったらない。「パーティ☆キング」のタイトルに偽りなしだ。ライブバージョンとはいえ、アゲアゲの5曲を突っ走った後はしっとりとしたピアノバラードへ。その緩急のつけ方もお見事。
全国くまなくライブを行うことで知られる彼ら。九州の多くの都市も回り、各地で愛を浴びている。生きている人も、今はもういない空から見ている人にも感謝を込めてと、「愛を浴びて、僕がいる」という、ゴスペルを思わせる美しいミディアムで、フィールドを埋め尽くす大きなハンドウェーブを作り出した。この曲中に完全に陽は落ち、ムードは最高。が、そこで普通のMCをしないのがC&K。今日、散々陽を浴びたからには「お風呂に入ってくださいね」と、♪ニューヨーク~と、美しいコーラスを聴かせたかと思うと、やはりお風呂に入れという、その名も「入浴」だったりするライブ運びは誰にもオープンだ。
そしてゆったりしたビートの「クローバーとダイヤモンド」ではももいろクローバーZの登場に大歓声が上がり、カラフルなサイリウムが薩摩エリアを埋め尽くしていく。違う道のりだけど、同じ10年というキャリアを歩いてきた二組とオーディエンスの間に讃え合うような幸せな空間が現れたのだった。この“ヘス”の懐は深い。
取材・文=石角友香
C&K
■ももいろクローバーZ
ももいろクローバーZ
リハでは、メンバーこそ現れないものの、ももいろクローバーZのバックバンドを務める“ダウンタウンももクロバンド”の面々が、「ココ☆ナツ」などの演奏で観客を盛り上げる。こういうチーム感がうれしい。そして、一旦バンドが袖に下がり、しばらく時が経ってから鳴り響く「OVERTURE」。それを合図に、フィールドで一斉に光を放つ4色のサイリウム。本日の薩摩のトリ、ももいろクローバーZの登場である。
強烈な照明を背にしたメンバーの姿がシルエットで浮かび上がり、歌うは「ロードショー」。90年代のレイヴ感あふれるイントロから、一気に分厚くなる演奏陣。そして、鳴り響く4人の歌声。とにかく、音の迫力がすごい。自分が観たなかでは今日一番音のでかいバンドだ。続く「ザ・ゴールデン・ヒストリー」は、キレキレの演奏と4人のキュートな振り付けがいい具合にアンバランス。最後のサビのロングトーンでは、大型スクリーン用のカメラに高城れにが笑顔でピース。
布袋寅泰が作編曲を務めた「サラバ、愛しき悲しみたちよ」は、バンドセットで更にパワーが増す楽曲。間奏のツインリードがカッコいい。その一方、ももクロの4人は女性らしいしなやかなパフォーマンスで魅せる。そして、シームレスに「行くぜっ!怪盗少女 ZZ ver」へと突入。……実は、自分はももクロのライブを観るのは約8年ぶりで、この曲をバンドバージョンで観るのは初めて。正直、オケじゃない「怪盗少女」には違和感しかなかった。しかし、今やこの楽曲の見せ方は変化していることに今日気づいた。今のももいろクローバーZのライブは、フロントに立つ4人だけでなく、ももクロバンドを含めた全員で見せるもの。そういうバンド感を身に着けたからこそ、近年、彼女たちはロックフェスで勝負できているのだろう。そして、そのバンドメンバーの豪華さよ。ドラム柏倉隆史、ベースやまもとひかる、ギターTAKUYA、ギター佐藤大剛、サックス竹上良成、キーボード宗本康兵という錚々たるメンツ。そりゃあカッコいいわけだ! とはいえ、最終的に自分の心を持っていったのは、8年ぶりに見る百田夏菜子のエビぞりジャンプだったりする。
「走れ! ZZ ver」は、メモを取るのも忘れ、ただただステージに見入ってしまった。4人それぞれの歌唱力は飛び抜けてはいないものの、ユニゾンになったときの青春感はたまらないものがある。
「走れ!」を歌ってしまった今、最後は何で締めるのかと思っていたら、氣志團の星グランマニエ(Gt)と白鳥松竹梅(Ba)を呼び込んでの氣志團「喧嘩上等」のカバー。しかも、バンドメンバーが全員楽器を置き、みんなで歌って踊るというレアパターン。まるでドリフのような大団円にずっこけながらも、昔と変わらぬももクロらしさにほっこりするのだった。
取材・文=阿刀 “DA” 大志
ももいろクローバーZ
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※初掲載時にアーティスト名の誤表記がありましたこと、訂正してお詫びいたします。
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