浦島坂田船
Happy Halloweeeen 浦島坂田幽霊船~ようこそ令和元年 やっぱり霊はあかんねん 憑依GO!~
2019.10.24 横浜アリーナ
秋は実りあふれる季節だ。故に、古代ケルト人は現代まで伝わるハロウィンの原形となった収穫祭でその喜びを祝い、同時にやがて来たる冬に備えるうえで悪霊を祓うなどしていたという。
さて。ハロウィンといえば、ここ数年は浦島坂田船が“浦島坂田幽霊船”として特別かつ盛大なライブを行うことが恒例となって来ているわけだが。今年は浦島坂田船としては初の舞台、ハロウィンパーティーとしては最大規模となる神奈川・横浜アリーナで開催。その名もダジャレ満載な『Happy Halloweeeen 浦島坂田幽霊船~ようこそ令和元年 やっぱり霊はあかんねん 憑依GO!』だ(笑)。
うらたぬき
志麻
今さらながらに注釈を入れとおくと、浦島坂田船とは浦=うらたぬき、島=志麻、坂田=となりの坂田。、船=センラによって構成された4人組ボーカルユニットで、今年の6月に4thアルバム『$HUFFLE』をリリースし、10月5日・6日には千葉・幕張メッセにて『浦島坂田船 SUMMER TOUR 2019 ~浦島theカジノ船 俺たち愛$、今夜お前とBETイン~』のファイナルを堂々としめくくってみせたこともいまだ記憶に新しい。
今回の『Happy Halloweeeen 浦島坂田幽霊船~ようこそ令和元年やっぱり霊はあかんねん憑依Go!~』は、オープニング映像にて、“約300年前に勃発した皇帝派と教皇派の対立から端を発した物語で、1度は和平交渉に入ったものの再び諍いが巻き起こることによって失われてしまった舞踏会と、その際の犠牲者が亡霊となってしまった後のことを描いたものである”という本公演のあらすじが語られていた。つまり、浦島坂田幽霊船の面々はある種のストーリーテラーであると同時に、この物語の当事者として今宵、ステージ上に現れたのである。
となりの坂田。
センラ
貴公子風な悪魔のうらたぬき、足軽ゾンビの志麻、黒と赤を基調とした神父姿のとなりの坂田。 、中世フランス貴族とおぼしき衣装をまとったセンラと、メンバー4人はハロウィンらしく、それぞれの仮装でステージに登場。彼らが最初に歌いだしてみせたのは、ハロウィンパーティーの始まりを告げる「HORRORISM」。前半戦においては「グリムメイカー」や「Happy Halloween」、そして「ハロウ!ゴーストシップ」といったハロウィンナンバーで歌のみならず、浦島坂田幽霊船の4人がダンサー陣を交えながらのダイナミックなパフォーマンスをみせていく。もはや彼らが単なるボーカルユニットという領域を超えたパフォーマンス集団になってきていることが、あらためて強く打ち出されていくこととなったのではなかろうか。
さらに、ハロウィンということで中盤戦では場内スクリーン上にストーリーテラーのかぼちゃがいきなり出現し、浦島坂田幽霊船の魂を入れ替えるというイタズラを仕掛けてしまう一幕も。結果、ここでは 本来“うらたぬき・となりの坂田。”のふたりで歌う「Trip-Trap,Love Trap!!」を“志麻・センラ”のふたりが、そして本来は“志麻・センラ”のふたりが歌うはずの「決戦前夜」を“うらたぬき・となりの坂田。”のふたりが、普段とはまた違った味わいを見せてくれることになったのだった。
うらたぬき、志麻
うらたぬき、センラ
このあとには冒頭で説明のあったストーリーに沿った寸劇が4人によって展開されることになり……。
「悪霊は姿形を変え、この会場にいるレディたちに取り憑いてしまった!」(センラ)
「さぁ、食事の時間だ! 音楽を流せ。俺たちのディナーにふさわしいとびっきりの音楽な!!」(うらたぬき)
「そう、俺たちは味にうるさいグルメなゴースト!!!」(志麻)
「今宵、晩餐会に招待されたか弱いレディたちを……」(となりの坂田。)
「食べちゃうぞ▽」(センラ)
というフリのもと、「ハングリー・ゴースト」ではまたも華麗なるダンスと歌により、場内はおおいに沸き立ち、歓声に満ちあふれていった。
浦島坂田船
だが、“カッコいい”という枠だけにおさまり切ってしまうのはエンターテイナーとしての性分が許さないのか、彼ら4人はこの後に続いた幕間映像において『飛び立て!人間ペットボトルロケット!!』という、体当たり企画にも挑戦してしまう。ここでは男気ジャンケンで全敗したセンラが、1回目は10本、2回目は50本ものペットボトルロケットを背負い大空への飛翔を目指すも、あえなく両回ともプールへと派手に墜落。ズブ濡れになったセンラが「ちょっとー、俺らアイドルじゃないの? あ、でもおもろかったんならえぇわ。おっしゃー!」とガッツポーズをし、その姿にうらたぬき、となりの坂田。、志麻がウケまくるというバラエティ度100%の映像が、横浜アリーナ全体を笑いの渦へと巻き込んだことは、もちろん言うまでもなかろう。
それでいて、次の本編後半戦においては「ビターチョコデコレーション」(となりの坂田。)、「最適解」(志麻)、「コールボーイ」(センラ)、「誘惑」(うらたぬき)の4曲でそれぞれがソロ歌唱を披露し、彼らの活動の軸が何処にあるのかということを再提示してみせたあたりの流れも、秀逸だったよう感じる。
うらたぬき
志麻
本編終盤でのクライマックスに向けては最新アルバム『$HUFFLE』から浦島坂田船のキーナンバーを多く手掛けるhalyosyによる「Beetle Battle」や、奏音69の作詞作曲による「ポーカーフェイク」、盟友であるまふまふが彼らに書き下ろした「花吹雪」にくわえ、現在TV地上波はもちろん各配信サイトで絶賛放映中のショートアニメ『浦島坂田船の日常』のOP曲「カレンダーリマインダー」を歌い上げてみせた彼らの表情は、とにかく終始、とても晴れやかに見えた。
「皆さん、今日は本当にありがとうございます! 平日なのにこの人数集まるって凄いよねぇ!!」(うらたぬき)
「うわー、立ち見席もあるんだ。いっぱい人がいてる! ありがとうな!!」(志麻)
「男!(野太い歓声があがる) うわー、こんなにいる!!(笑)」(となりの坂田。)
「いやー、この4人で横浜アリーナに立ったのはこれが初めてですからね。ほんとに嬉しいです! 幸せですなぁ!!」(センラ)
となりの坂田。
センラ
アンコールではTVアニメ『イナズマイレブン オリオンの刻印』のEDに起用された、つんくによる作詞・作曲の「明日へのBye Bye」を歌ってこの盛大なパーティーを見事に打ち上げてみせ、それこそ豊富な実りを我々に与えてくれた彼らであるが、なんと年内中に行われる浦島坂田船としてのワンマンライブはこれが最後となってしまったとのこと。だがしかし、何も憂いる必要はない。12月25日には前山田健一が手掛けるTVアニメ『デュエル・マスターズ』のOP曲が、シングル「Gotcha!!」として発売されることが決定しており、今後に向けても浦島坂田船が相変わらずに邁進していくことは間違いの無い事実のはずだ。
浦島坂田船
浦島坂田船
歌えて、踊れて、演技やしゃべくりも出来るばかりか、時にはカラダを張ることさえいとわない浦島坂田船のエンターテイナー道は、きっとここからより深く極まっていくに違いない。
文=杉江由紀 撮影=松陽祐(ODD JOB) 、堀卓朗(ELENORE)
※文中▽は白抜きハートマークが正式表記
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