Survive Said The Prophet Photo by toya
2019.10.15 Survive Said The Prophet@Zepp DiverCity
アジアの島国=日本という国で生まれたSurvive Said The Prophetという音楽を体感してほしい。そんな想いを込めて、サバプロが全国10都市で開催してきた対バンツアー「Made In Asia Tour」の9本目となるZepp DiverCity(TOKYO)公演は、当初、a crowd of rebellionとのツーマン予定だったが、宮田大作(Vo)と小林亮輔(Vo, G)の喉のポリープ悪化によるキャンセルによって、ワンマンライブとして行なわれた。ゆえに本編は少し短め。だが、その濃度はまったく薄れることなく、むしろ、9月にバンドの念願だったイギリスでの初ライブを経験したことによる成果だろうか、いま、彼らの向かう場所、貫き通す信念、あるいは音楽を鳴らす意味が強く浮彫りになる、とても研ぎ澄まされたライブだった。
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荘厳なSEにのせて、メンバーが登場。フロントに立つYosh(Vo/Gt)が「東京ー!」とあいさつ代わりに叫び、いきなり最新シングル「MUKANJYO」(=無感情)でライブは幕を開けた。Yosh のクリーンボイスとYudai (Ba/Vo)のスクリームボイスが無秩序に混じり合いながら、モラルと正義が打ち砕かれた世界への虚無感を叩きつけるように歌うオープニングナンバーに寄せて、「東京、無感情なの!?」と問いかけたYosh。その言葉に「No!」を突き返すように、会場から大きな歓声が沸き上がると、「感情が溢れたお前らに感謝することがたくさんある!」と訴え、「Fool's gold」「found & lost」へとなだれ込む。重戦車のような破壊力で打ち抜くShowのドラム、Tatsuya とIvanの手数の多いギターフレーズと、曲ごとに主役にも縁の下の力持ちにもなり得るYudaiのベース。それら5つの個性が美しく重なるサバプロ真骨頂のエモーショナルなロックがフロアをビリビリと震わせていく。
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音楽を鳴らす喜びにあふれた「The Happy Song」では、ステージ袖から投げ込まれたシェイカーをIvanがキャッチ。優しいミディアムテンポがフロアを優しく揺らすと、Ivanのイントロだけで、ひときわ大きな歓声が湧いたのはCMソングでもお馴染みの「Right and Left」だった。「東京、思いっきり一緒に歌ってくれませんか!?」というYoshの言葉を合図に大きなシンガロングが巻き起こったかと思えば、繊細なアウトロでは、Yoshがシーッと口に人差し指をあてると、フロアは水を打ったように静かになった。ステージ上に、自信に満ちた一挙手一投足によって、その場所にいる2,000人の視線を釘付けにするYoshのフロントマン然とした掌握力は圧巻だ。
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エレクトロな音像から肉体感あふれるロックサウンドへとシームレスにつないでいく「When I」では、途中、Yudaiがピックを放り投げて、クールなスラップベースを炸裂。続けて、優しさと解放感に包まれた「Conscious」へ。洗練されたメロディにのせた全編英語の歌詞には、“不完全な自分たちだが、この音楽を必要としてくれる人たち一緒に進んでいこう”というようなことが綴られている。ピアノにのせた神聖なインタールード「[ ]」のムードを保ったまま、Ivanのアコースティックギターが口火を切るバラード「Listening」で、Yoshが「歌ってくれよ! Zepp」と懇願するように叫ぶと、ここからは、お客さんのシンガロングとYoshの声が交錯する感動的な光景が何度も繰り広げられた。無数の光の粒がフロアを満たした「NE:ONE」に続き、Yoshが大きく体を躍動させたダンサブルな「HI | LO」。オントレンドなR&Bやヒップホップの要素を取り入れたジャンルレスなアプローチに加えて、5人の華やかなパフォーマンスでもお客さんを魅了するサバプロのライブは、曲を追うごとに狂騒と興奮が加速していく。
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終盤。Yoshがマイクを通さずに「今日、一緒にライブをするはずだったa crowd of rebellionに、この声を捧げます!」と叫んだ。会場からは、“We are the light, We are the future”という「Spectrum」のフレーズがこの日いちばん大きな歌声で響きわたった。そこに、なんと小林亮輔(Vo/Gt)と宮田大作(Vo)が乱入すると、そのまま客席へダイブ。言葉を発することはなかったし、本来のかたちとはまったく違う一瞬の共演だったが、それだけでサバプロとリベリオンの熱い繋がりを語るには十分だった。この日のリベンジはきっといつか果たしてくれるだろう。
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ラスト2曲を残したところで、「来年バンドが10周年を迎える」と語りかけたYosh。「みんなのおかげで、いろいろな思い出と希望を詰めまくった10年間だったような気がします」と言うと、さらに「これだけは覚えておいて」と前置きをして、「どんなかたちで俺らに出会ったとしても、アンダーグランドからはじまった俺らは“ロックバンド”なんだー!!」と絶叫した。いまやテレビをはじめ、メインストリームのメディアを通して彼らの存在を知るリスナーも増えてはいるが、サバプロが鳴らすロックの奥底にあるもの――聴く人の感情に訴えかけるために、あらゆる音楽を呑み込み、「サバプロ」というジャンルとしてロックを鳴らす、という信念は揺るぎない。そんなバンドの意思を伝えたあとに届けたラストの「T R A N S l a t e d」と「Network System」の熱狂はすさまじかった。ステージ上の5人が激しく体を揺さぶりながら繰り出すカオティックな爆音にも負けないお客さんの歌声。「こっからもまだまだ一緒に続けていこうな!」というYoshの晴れやかな笑顔と高らかと掲げたピースサイン。それは、この日この場所にいた全員で勝ち取った最高のフィナーレだった。
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アンコールでは、会場からメンバーの名前を呼ぶ声が絶え間なく続くと、Yoshは「いろいろな人たちが増えたね(笑)。大好き。本当にありがとう!」と、本編よりも少しだけリラックスした表情で言葉を重ねていく。「この10年間で“楽しいことをやりたい”、“意味があることをやりたい”っていうのはブレてません。おかげさまで素敵なオーディエンスに囲まれて。みんな歌が上手くて……でも、リズム感がイマイチかな、ふふふ。ジョーク、ジョーク(笑)」と親しみを込めて言うと、「こんなに音楽が好きな人が日本にいることを世界に伝えないといけないと思う」と力強く宣言。その言葉のとおり、このツアーを終えたあと、サバプロは台湾、香港、韓国、中国、タイなど、アジア各国をまわるツアーへと向かっている。アンコールの最後は、“石橋叩き続けてきたんだ”という日本のことわざにバンドの生き様を刻んだ「Bridges」と、美しい光がステージから溢れ出た力強いバラード「Follow」で、ライブは幕を閉じた。サバプロという強靭な求心力に導かれて辿り着いたクライマックスには、このライブハウスの扉を出た先で、再び別々の道にわかれ、孤独な道を進んでゆく私たちに勇気をくれるような、心を奮い立たせてくれるようなエネルギーが満ち溢れていた。
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なお、この日のライブでサバプロは、年明け2020年1月15日にフルアルバムをリリースすることを発表。Yoshは「今年の頭から本当に出したかった。めちゃくちゃ楽しみー!」と喜びを爆発させた。アルバムのタイトルは『Inside Your Head』だ。そこで彼らはまた音楽の可能性を大きく広げてくれるだろう。いよいよカウントダウンが始まった。
取材・文=秦理絵
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