清春
2019年10月30日、東京・マイナビBLITZ赤坂にて、清春が恒例の『The Birthday』を開催、超満員の会場に詰めかけたファンとともに自身51回目の誕生日を祝った。
午後7時を10分ほど過ぎた頃に場内が暗転し、清春がステージ中央へと歩み出ると、今年デビュー25周年を迎えた彼の眩しいシルエットに向けて、観客から祝福の歓声が注がれる。祝祭の日の1曲目は「海岸線」。この優しく美しいメロディーがフロアに染みこんでいくと、すかさず「confusion」が妖しく炸裂。こうした緩急の巧みさには、いつ観てもたまらないものがある。この夜、清春の歌唱を支えたのは、中村佳嗣(G)、大橋英之(G)、YUTARO(B)、FUYU(Dr)という強靱な顔ぶれだ。
清春
清春のライヴでは、彼が一種の“ゾーン”に入ったと感じさせられる時間帯があるのだが、この日の「LAST SONG -最後の詞-」から「悲歌」に至る流れはまさにそんな場面だった。生の歌の醍醐味をこんなにも鮮明に伝えてくれるシンガーはそうそういるものではない。その全身から放たれる声に聴き惚れていると、時が経つのを忘れてしまうほど。その後も「YOU」などの圧倒的叙情がフロアを彩り、「妖艶」と「LAW’S」で絶頂に達しながら本編は幕を閉じた。
当然のことながら、観客はまだまだ清春の美学に浸っていたい。そんなアンコールの声に導かれた彼が再び舞台に姿を現わすと、愛溢れる「EMILY」が場内に響き渡る。流麗な「Masquerade」が着地点に至ると、大橋の「Happy Birthday」のギターフレーズを合図に観客が合唱を始めた。ここで巨大なバースデー・ケーキとともに登場したのは、清春の盟友SUGIZO。フロアからは、この日最大級の感嘆の声があがり、フロア前方に人の波が押し寄せる。「良かったね。みんなのほうが誕生日プレゼントをもらったみたい。」と清春が嬉しそうにオーディエンスに語りかけたのが印象的だった。
清春、SUGIZO
清春、SUGIZO
もちろん、SUGIZOにはサプライズ・ゲストとしての大切な役割がある。ここで場内を興奮に導いたのは「VOICE(feat.清春)」。SUGIZOのソロ・アルバム『ONENESS M』で清春がゲスト参加し、MVで共演も果たした名曲だ。常に変化を恐れずに、己の感覚を研ぎ澄ましてきた二人だからこそ生まれる宇宙的官能。「永遠のライバルで、永遠の親友です」とSUGIZOが清春を祝福すれば、清春は「フロア揺らして! SUGIZO君の記憶にみんなの姿が残る様に!」と扇動する。更に続けて披露された「20th Century Boy」はT.REXの原曲以上にゴージャスなグルーヴを帯びた名カヴァーだった。激しくギターを奏でるSUGIZOと歌い叫ぶ清春がぴったりと寄り添い合う。互いの孤高の美学が共鳴するこの光景にいつまでも溺れていたくなった。
清春
清春
この幸福な宴もいよいよ終盤へ。最愛のファンのダブル・アンコールに応えて、軽快な「マークはバタフライ」が披露されると、続く「SANDY」でフロアに狂熱が発生。「HAPPY」が華々しくラストを飾り、開演から2時間半が経過した頃には、この会場に集った全員が極上の幸福感を噛みしめていた。
愛と美学に包まれた清春の表現者としての技量に感じ入ると同時に、彼の“今”の輝きに魅了されたバースデー公演だった。清春の歌声が更に豊かに磨かれていくさまをこの先もじっくりと味わいたいものだ。歌を選び、歌に選ばれたロックスターの未来を祝福したい。
文=志村つくね 撮影=森好弘
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