撮影:敷地沙織
2019.11.4(MON)『fripSide Phase 2 : 10th Anniversary Tour 2019-2020 -infinite synthesis 5-』@神戸国際会館
第二期fripSide10周年を記念したライブツアー『fripSide Phase 2 : 10th Anniversary Tour 2019-2020 -infinite synthesis 5-』が11月4日、神戸国際会館を皮切りにスタートした。
撮影:敷地沙織
10月30日には6枚目となるオリジナルアルバム『infinite synthesis 5』も発表したfripSide、10周年イヤーを突っ走る彼らがどんなライブを見せてくれるのかという期待に、神戸のファンは開場前から長蛇の列を作って開場を待つ。
ユニットが10年を失速せずに駆け抜けるのはとても困難なことだと思う、コンスタントに楽曲を発表し、更にライブでも観客を魅了する。言葉にすると簡単だがそこに対する労力はとてつもないことなんだろう、その10年分の経験を凝縮した濃厚なライブが展開された。
撮影:敷地沙織
撮影:敷地沙織
今回のツアーは2020年の4月横浜アリーナのファイナルまでの長期間に渡るものなので、演出やセットリストはまだ公開せずに現地で楽しんでもらいたいと思っているが、間違いなくお伝えできるのは、音楽の渦の中で楽しんでいたらあっという間に時間が過ぎていったということ。
撮影:敷地沙織
客電が落ちた瞬間に客席はペンライトは夏オレンジの色で染められ、南條愛乃と八木沼悟志がその姿を見せると怒号のような歓声が響き渡る。ボルテージを下げることなく歌う南條の声に呼応するように観客の声は大きくなっていく。反響し合うパワーは熱量を生む。
「みんなどのくらいアルバム聴いてきたの?」と客席と掛け合いをしながらMCを展開していく姿はとても優しい。アルバム収録曲に対して「ライト何色振っていいのか悩んだかもしれないけど」と言うのもアルバム発売直後のライブならでは。
本人たちも以前語っていたが、想像以上にfripSideのライブは暖かい。楽曲から感じる印象としてはデジタルの攻撃的なサウンドが展開されるものだと思う人がいるかも知れないが、ライブで感じる音はむしろ生っぽい。それは南條と八木沼が観客、バンドメンバーをも巻き込んで展開する笑いあるMCコーナーとともに、培われた演奏技術とグルーヴが生むものなのだろう。
撮影:敷地沙織
長年続いているユニットだからこその新規の入りづらさもあるのでは?という意見もあるかもしれないが、fripSideのライブにはそれを感じることはない。会場の空気から感じるのは不安なユーザーを受け入れる余裕だ。
fripSideの音楽にとことん興味を持つ人は勿論だが、単純に気に入った曲があった人でもいい、友だちに誘われただけでもいい、そういうライトな感覚でライブに触れた人間も楽しませる懐の深さをもっている不思議な魅力がそこにはある。
撮影:敷地沙織
以前より伸びやかに柔らかさと強さを兼ね備えた南條のボーカルが、八木沼が作り出したトランシーでソリッドなサウンドと重なる、そこには根本的な音楽の楽しさがある。ただ受け入れて体を揺らしているだけで気持ちいいというのは素晴らしい体験だ。
撮影:敷地沙織
そしてこの日は、第二期fripSideの1stシングル「only my railgun」から丁度発売10年目の日(2009年11月4日発売)。アンコールではこの日だけのスペシャルとして八木沼と南條が改めて登場。
「思い起こすとこの十年間、決して楽なことばかりではありませんでした。でも、もうだめかなと思ったとき、皆さんの笑顔とか、ライブでもらえるパワーを頼りに十年間やってこれました!ありがとうございます!」と八木沼がコメント。
撮影:敷地沙織
少し照れくさそうな南條を横にしたまま八木沼は続けて「このちょうど十年目の今日、いろんなことを思い出しますけど、全部をこれからに繋げて行きたいと思っていますので、よろしくお願いいたします!」と感謝を込めた挨拶を行う。会場内には「only myrailgun」のシングルを掲げる人も見られる中でこの日だけのMCを行った後には、勿論その「only my railgun」を披露する番だ。
撮影:敷地沙織
何度も何度も歌われたであろう一曲は色褪せずに歌われる、ユーザーの手元に届いてから3654日、サビを大合唱するファンと一緒に作られた音楽はまさに「超電磁砲」のように神戸の街に響く。南條の「まさかとは思いますけど、リリースイベント来てくれた人います?」に対して返事を返すファンに「嘘!じゃあぴゅあぴゅあな私を見たの?」と笑わせるのも年月がなせる技か。
撮影:敷地沙織
そしてfripSideのライブに欠かせないDJ担当の川崎海が、4月の横浜アリーナを最後にライブバンドを脱退、トルコに移住して音楽活動に邁進するということも初日のこの日に発表された。それを万雷の拍手で送り出す客席。八木沼が語った「良いツアーにしよう!」という言葉が全員の心に刻まれる。
撮影:敷地沙織
「10年前幼稚園だったの?同じ言語で話せるようになったね!」という南條と、「10年前30代だった人?いるね…頑張ろうぜ!」という八木沼。本当に絶妙なバランス。柔らかさと強さを兼ね備えたfripSideのライブは何度見ても心に豊かなグルーヴを生んでくれそうな予感に満ちている。
撮影:敷地沙織
「なんかツアー初日っていつも緊張して、しかも10周年じゃん……でも、がんばります!」
八木沼と南條が改めて気合を入れて終演した神戸の夜。10周年の今日から始まるこのツアーは誰をも受け入れる広さと、底の見えない音楽の魅力に溢れたものになりそうだ。
撮影:敷地沙織
レポート・文:加東岳史 撮影:敷地沙織
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