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1年と5カ月の活動休止を経て新たなボーカリストSERAを迎えいよいよ進撃を開始したSALTY DOGに直撃インタビュー

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SALTY DOG

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SALTY DOGが1年と5カ月の活動休止を経て、新ボーカリストSERAが加入し活動を再開した。すでに10月20日@club asiaでの復活ライブを行い満員御礼となるなど、注目されている。新たな「アニラウド」という新機軸の音楽性を打ち出しながら、11月9日に渋谷club asiaにて、新譜「ANiMA」リリース後初公演となる、総勢10組のアーティストが出演する「Ragnarok FEST」を開催することが決定しているなど精力的な彼らの今に迫った。

──前ボーカルのINGERさんが脱退された後、SERAさんが加入されるまでの経緯をお聞きしていきたいのですが、どういうボーカリストを探そうと思ったんですか?

KENT(Guitar / Programming):2017年の5月に活動休止ライブをして、その後にホームページでボーカリストを公募したんですよ。

NEMESAN(Drums):オーディションをやろうということになって。で、ホームページで募集した人達や自分で見つけた人達と会ったんですけど……全員で60人ぐらい? 

KENT:うん。でも、この人!っていう人がいなかったんですよ。そこから2017年は個人での活動──僕とTOMOYAさんであれば歌手のMay'nさんに楽曲提供をしたり、NEMESANは他でサポートをしたりしていたんですけど、2018年になってからTOMOYAさんとSERAが出会ったみたいで。

──SERAさんとしては、ボーカルのお話をもらったときにどう思いました?

SERA(Vocal):実はTOMOYAさんのHPが残り5しかない頃に召喚されました。「ボーカルを探している」との事で、奏でられたSALTY DOGの楽曲を初めて聞いた時、私の中で運命的な挑戦的な何かを感じるものがありました。その後スタジオでメンバーと初対面、アンサンブルして更に興味が湧きました。

──NEMESANさんは、初スタジオの時の感触というと?

NEMESAN:正直に言うと、その時はあんまりというか。ドラムの音がデカすぎて(笑)。

KENT:そうそう(笑)。

NEMESAN:スタジオの環境が結構劣悪だったんで、めっちゃ小さく叩いても(SERAの声が)聴こえなかったんですよ(笑)。

SERA:実は私も聞こえませんでした。

NEMESAN:でも、僕としてはそのスタジオよりも前にSERAの歌っている曲を聴く機会があって、それがすごく良かったんですよね。1年間、新しいボーカルを探し続けて、実際に会ったのは60人ぐらいだけど、音源の数は700〜800曲ぐらいは聴いていて。その中でも断トツに良かったし、実はその後にも何人かと会ったんですけど、“あの人じゃないとダメなんじゃない?”って。だから、最初のスタジオに入る前に、この人だってもう決めてました。

──KENTさんは、初スタジオの印象というと? 環境が……との事でしたけども。

KENT:その時はメンバーから“こんな人ですよ”という紹介が特に無かったんです(笑)。

NEMESAN:確かに言ってなかった(笑)。スタジオもよく分からなかったでしょ?

KENT:うん。ただ、自分が一番自信のあった持ち曲とのハマりがすごく良かったんですよね。それが『ELiXiR』に入れた「Screams Within」なんですけど。それを聴いた時に、これはいけるぞという確信を持てました。

──そして、2018年8月にSERAさんの加入を発表されて、10月に現体制での初ライブを行われたわけですけども、新体制として活動していくにあたって、ここからどう進んでいくか決めていた事はありましたか?

SERA:……という話を聞いていなかったので、困りました。

NEMESAN:加入が決まってから、最初のライブまでかなり急ピッチで動いたんですよ。だから正直、10月のライブの時は固まりきっていない所もあって。

KENT:ただ、音楽性としては、僕とTOMOYAさんの中でひとつあって。活動を休止した後に、僕らはアニメソングの世界で活躍できるんだという自信が持てたんですよね。それでもやっぱりバンドもやりたいという思いから、造語ですけど「アニラウド」というものを考えたんです。例えばバンドマンらしからぬアレンジの緻密さや圧倒的な歌唱力。かつ、アニソンには無い本物のバンド感。それは自分達にしかできないと思ったので、そういう音楽性を標榜してやりたいなと思うに至りました。

──音楽性としては、自分たちのストロングポイントをちゃんと押し出しつつ、その中でも急ピッチで動いたのは、とにかく活動を再開させる事に意義があったと考えていたんでしょうか。

NEMESAN:そうですね。とにかくあの時は突っ走ろう!っていう感じだったから、CDがないまま復活してしまったんですよ。とにかく復活した事を皆に言いたいと思って。

KENT:個人的には、音源を作ってバンドがどういうキャラなのか固定してから始めたいと思ってはいたけど、TOMOYAさんとNEMESANはとにかく1秒でも早く復活することが大事だと思っていて。それも間違いないと思ったので、そこは本当に正解だったと思います。

──ただ、急ピッチで曲をリアレンジするのは大変だったんじゃないですか? たとえば、歌詞を英詞から日本語詞に変えたりとか。

KENT:そこが一番手間でしたね(笑)。

NEMESAN:ははははははは(笑)。焦ってたよね、とりあえず。

KENT:でも、10月のライブ前に2曲作ったんですよ。それが「DANCE&SHOUT!」と「The Dark Side Of The Moon」の2曲なんですけど。

──今回リリースされる『ANiMA』の収録曲は、その頃にはもうあったんですね。SERAさんとしては、このバンドのフロントマンとして歌う事になってから、ライブで感じたものというとどんなものがありました?

SERA:新たな地に足を踏み入れた感覚はありました。ただ、ボーカルが変わる事によって今まで作り上げてきた楽曲の雰囲気も歌詞も印象も変わってしまい、マイナスなイメージを与えてしまうのではないかと不安を感じていました。

──その怖さがありながらも、続けていく事で変わってきたものはありました? たとえば、ライヴをしている時、お客さんの表情が変わってきたとか。

SERA:あの、前が見えないんですよね。

KENT、NEMESAN:ははははははは!(笑)

──そうでした!(苦笑) 仮面を付けていますからね。

SERA:でも、最近はお客さんが一緒に歌ってくれる声がとても聴こえてくるようになりました。それは私が場慣れしてきた事もあると思いますし、受け入れてくれている事が少しずつ伝わってきました。お客さんの声を聴いているうちに、もっとこんな表現をしてみようとか、もっと煽ってもいいのかなと思ったりして。

SALTY DOG

SALTY DOG

KENT :SERAが人外の存在とはいえ、メンバー同士お互いの事を知って打ち解け合うのが大切ですし、ここ数ヶ月でだいぶSERAのことを知れて、一緒にライブをしている感じは強くなりましたね。

──NEMESANさんは、ドラマーとして後ろからメンバーを見ていて、雰囲気が変わっている事を感じたりしています?

NEMESAN:SERAが加入した時よりも元気になってるなとは思いますね(笑)。お客さんと一緒にライブを作っているような感覚を、後ろから見ていて感じます。心がきちんと繋がるようになっているなって。

──そこはすごく大きいですね。

NEMESAN:だいぶ大きいと思います。最初は、今まで自分が接した事のないお客さんの前に立って、その人達が何を欲しているのか分からず歌っている感じだったと思うんです。でも、今は皆が求めているものも分かるようになってきて、少しずつライブでコミュニケーションを取れるようになっているんじゃないかな。こっちの2人(TOMOYAとKENT)はずっとやってるんでアレですけど(笑)、ボーカルのエネルギーはだんだんと強くなってきましたね、この1年で。

──SERAさん、思い当たる節があったりします?

SERA:そうですね。ライブや楽曲、メンバーやお客さんの声と触れ合う中で様々な感情が芽生えて、何を伝えたいのか気持ちもはっきりしてきて言葉にしやすくなりました。今はメンバーやお客さんの事を考えている時間が楽しいです。

──では、11月6日にリリースされる『ANiMA』についてお聞きしていこうと思うんですが、どの曲もかなりドラマティックですし、収録曲それぞれカラーが違うものになってますね。

KENT:曲ごとに作ったメンバーが違うんですよ。

──どなたがどの曲を作ったんですか?

KENT:「EMBER LAST」はSERAの作詞作曲で、「Brave New World」はTOMOYAの作詞作曲。「DANCE&SHOUT!」はTOMOYAと僕の2人で作ってます。で、「The Dark Side Of The Moon」と「EMILIA」は僕の作詞作曲ですね。曲を作るときは、メンバー各々からメロディと、1コーラスでもいいので簡単なデモを貰って、そこから僕がDAW(作曲ソフト)で楽器を付けて、それをまたメンバーに戻して作詞と細かいアレンジを詰めていく感じで作っていくんですけど、それぞれ好みの違いもありますし、それを良い方向に持って行きたいなと思ってました。多彩過ぎるきらいもあるんですけど(笑)。

SALTY DOG / ANiMA

SALTY DOG / ANiMA

──その中で、今回のリード曲は、1曲目を飾っている「EMBER LAST」なわけですけども。

KENT:ボーカルが変わった事によって客層が変わったことも感じていますし「アニラウド」という音楽性はありつつも、新たな表現を考えている所ではあるんですよね。その中で生まれたのが、今回のリード曲かと思います。

NEMESAN:前の自分たちであれば、もしかしたら「Brave New World」がリードになっていたかもしれないけど、今のお客さんの層を考えると、「EMBER LAST」の方が良いんじゃないかっていう。そういう所もありますね。

──「EMBER LAST」はかなりシンフォニックな曲ですけども、SERAさんとしては作る時にイメージしていたものはあったんですか?

SERA:ありました。以前のSALTY DOGとは真逆の楽曲なので聞かせた時の反応や出来を心配しておりました。ですがKENTさんから帰ってきた編曲が私の想像していたものプラスαで構成されていたので本当に感動しました。リード曲として決まった時は正直不安だったのですが。

KENT:正直だな(笑)。確かに初作曲だからね。

SERA:作詞やメロディーは少し関わっていましたが、全て自分で製作したのはこの曲が初めてなので。

──KENTさんが作詞作曲された「The Dark Side Of The Moon」は活動を再開するタイミングで作ったとの事でしたけども。

KENT:この曲は2日ぐらいで作りました(笑)。僕が最初に感じたSERAのキャラクターと、僕の持っていたダークなメタルとかメタルコアの素養を合わせた感じですね。

──あと、先行シングルとして発表されていました「EMILIA」は、いわゆるラウドというジャンルでは括れないスローナンバーになっていますね。

KENT:今までのSALTY DOGとは違うものが欲しいという話があった事と、TOMOYAから劇伴音楽を聴かされたんですよね。それが劇伴なんだけど歌があるという曲で、こういう風にしたいというオーダーがあって生まれた曲ですね。

──ちなみに、そのときに聴いた劇伴音楽というと? 

KENT:「進撃の巨人」の2期なんですけど。

──澤野弘之さん。

KENT:そうです。劇伴音楽なんだけど、歌もの作品としても成り立っているという。そこに多大な影響を受けました。

──SERAさんの声をイメージして作った部分もありました? この曲のSERAさん、めちゃくちゃ良いなと思いながら聴いていたんですけど。

KENT:間違いないですね。やっぱり歌う人の声が念頭にないと、アレンジとマッチしない事はあるので、やっぱりこの人の歌声を僕が理解して作らないといけないというのは、常々思っています。

SERA: SALTY DOGにはバラードがあまりないという事ですが、実はバラードの方が感情も込めやすく歌いやすくて。『EMILIA』は新しい一面を見つけられた曲なのかなと思います。楽曲内のコーラスワークもこだわっていますし、想像していた表現と異なるものに挑戦してみたら意外にも納得するものができたので、とてもクオリティの高い楽曲に仕上がったのではないかと思っております。

──NEMESANさんとしては、今までにないものにトライをしてみていかがでした?

NEMESAN:僕自身、いろんな所で叩いているので、ああいう曲自体が初めてなわけではなかったんですけど、ソルティでこれやるか!っていう。スローテンポの曲は大昔に一曲あったんですけど、最近はライブでやっていなかったので、それをお客さんがどう感じるのか楽しみにしていて。評判良かったので、良い感じに転がったなと思います。

──バンドとして新たなものを受け入れてもらえるというのは、かなり嬉しいことですよね。

NEMESAN:そうですね。なんか、ここの2人(SERAとKENT)の相性が良いのか、何をやっても上手くいくんじゃないかなって、客観的にちょっと思っちゃっている所があるんですよ。新しい事をやる度に、上手くいくんじゃない?って。

──KENTさんも上手くいきそうな確信はあります?

KENT:曲を作っている時は不安ではあるんですよ。新しいボーカルに合わせた楽曲を自分が作れるのか?っていうのは常に気にしてはいるんですけど。ただ、新しい事に挑戦しないと進歩はしないと思って、自分に出来ない事に取り組みながら、レベルアップさせていますね。

──11月9日には本作のリリースパーティーが渋谷club asiaで開催されますけども、今後バンドとしてはどのように進みたいと思っていますか?

KENT:復活してからは、東名阪などメジャーな場所にしか行けていなかったので、もう少し細かく回れたらと思って、来年3月まで全国ツアーを企画しています。今後としては、メンバーそれぞれ個人的な目標もあるんですよ。SERAとTOMOYAと僕でいえばアニメソングをやりたいという強い願いがありますし、フェスにも出たいですし、僕個人としてはメジャーデビューもひとつの夢ですし。そのためにも、もっとバンドの規模を大きくしていかないといけないなと思っています。

NEMESAN:3人はアニメが好きだけど、僕はそんなに観ないから、バンドで見るような夢が多いんですけど。ただ、もちろん大きなステージでやりたいとか、フェスに出たいというのもあるけど、僕はそもそも……ちょっと前の話に戻っちゃうんですけど、活動休止して、新しくまたやろうとなるまでの1年間って、ひとりのドラマーとして活動していたのが結構上手くいってて。そこからまたバンドをやることになって、ボーカルをどうするか決めるときに……もうダメなんじゃないかなって正直思ってたんですよね。これだけの人と会っても、ものすごい量の音源を聴いても見つけられなかったから。だけど、SERAと出会って、このボーカルとなら今まで出来なかった事が出来るんじゃないかなって。そういう楽しみの方が多いんですよ。

──なるほど。

NEMESAN:だから、夢や目標は個人的にあるんですけど、それよりも今は、SERAが出来る事というか、SERAだからこそ生み出せるものが世の中にどう評価されていくのかが、今の僕の楽しみですね。もっと届くと思うし、もっと大きなバンドになるんじゃないかなっていうのが感覚としてあるので。

──SERAさんとしても、たくさんの人に届けたいし、届くだろうという感覚はあります?

SERA:近いうちに塗り替えれるようなものが生まれたり、今までにない景色も見れる予感がします。ですが、私だけじゃなくメンバーそれぞれ個性の塊なのでさらに主張してもいいのではないかと思っております。

──みんなで前に出ようと。

SERA:そうです。この4人だから出来る事をやっていきたいです。

取材・文=山口哲生

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