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Takuya IDE、“アルバムとマンスリーライブの集大成”をフルパワーで見せたSPACE ODD公演をレポート

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Takuya IDE

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Takuya IDE『ONCE』~Special One~
2019.11.2 SPACE ODD

2019年に入り、ライブを軸とした音楽活動に更なる従事を魅せたTakuya IDE(井出卓也)。1月からはマンスリーにて『ONCE~You Only Live Once~』と銘打った自主企画をワンマン/2マンにて行ってきた。あえて至近距離にて、1日2セットという過酷な「現場」を毎月作り出してきた彼。それはある種、ラッパーやミュージシャンとして自身に課した鍛錬のようにも映った。加えて、そこでの毎月欠かさずの新曲の披露。そして、それらライブで培ってきた楽曲たちが10月19日に配信開始となったアルバム『ONCE』へと繋がった。

Takuya IDE

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ここまでコンスタントに楽曲リリースを行ってきた彼だったが、この『ONCE』は自身初のフルアルバム。ここでは更にIDEのアーティストやクリエーターとしての才能も開花した。収録全13曲のうち11曲の作詞だけではなく作曲も手がけた。念願の生楽器とのセッションも収まった意欲作でもあった。

そんな同盤のレコ発的なワンマンライブ『『ONCE』~Special One~』が11月2日に代官山・SPACE ODDにて行われた。レコ発であると同時に上述のマンスリーライブの集大成にも映った、この日。『ONCE』収録全曲はもとより、人気曲、代表曲も交え、まさにこの1年の活動を振り返りつつも締めくくるものとなった(まだ年末まで2マンライブ等は続くが)。以下はそのドキュメントだ。

Takuya IDE

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ライブDJにして、ニューアルバムの楽曲のミックスを全て手がけ、制作に際する良きパートナーでもあるDJ/マニュピレーター、サンプラー担当のHIRORONとのユニットを基調に、時に女性コーラス隊、エレキギターや生ドラムも交え、ライブでの臨場感はもとより、作品の再現性やそれ以上の広がり、そして人力ながらのグルーヴや熱、臨場感や迫力を堪能できたこの日。更にそれらのトラックの上、より自由に、フレキシブルに、歌やラップに乗せているIDEのラップや歌唱には頼もしささえも覚えた。

Takuya IDE

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HIRORON

HIRORON

SEが流れ出し、そこに3人の女性コーラス隊が神秘的な歌声を加え荘厳な雰囲気が育まれていく。そんな中、スーッと無言で黒いマント姿でそのフードをかぶり現れたIDE。ステージセンターに立つと、足元見つめるように、あえてじっと動かず始動を待つ。そんな中、IDEからの「始めようぜ!」との開始宣言と共にライブは口火を切った。
序盤は『ONCE』からの曲が連射された。ゴスペル性のあるコーラスとガシガシのビートの上、自身の使命やカルマがラップされた「HERO」、トラップサウンドの「ライブノチケットヲタテマツル」ではラップのフローもアクロバティックになりアクションも激しくなっていく。同曲でのシニカルで揶揄したリリックに気持ちを同化させるように場内もキメのバースを一緒に歌えば、彼のコンプレックスでもあり、他にはない武器とも言える、役者でありミュージシャンであるというスタンス。それをそのどちらかだけではなく両立させてやるとの決意とアイデンティティも内包された「リアルアマチュア現場アクター」、テクノなサウンドの上、場内のクラップと共に贈られた「∀FFECTION」では歌も混じり始め、ブリッジ部分ではオートチューンも交えたIDEの歌声が伸びやかに場内に広がっていく。また、フューチャーベースな「コンプレックス」では後半、HIRORONもサンプラーのパットを操り、リアルタイムでビートを創り出し、そこにラップを乗せていく人力性が。対して、コーラス隊が一時はけ、2人だけで贈られた「DAY1」では、「自分の過ごしてきた時間に一切無駄なものなどなく、全て糧になり、最終目的は日本語ラップを残すこと。俺の人生は俺が決めんだ!!」との自身のアイデンティティと使命が力強く信憑性たっぷりにアピールされた。

Takuya IDE

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Mizuki Iijima、Michiru Nozaki、Chihiro Akutsu

Mizuki Iijima、Michiru Nozaki、Chihiro Akutsu

「今日はアルバムとマンスリーライブの集大成をフルパワーで見せるから、かなりタフなライブになると思う。このライブで皆さんが足腰が悪くなっても知らないから(笑)。覚悟しとけよ!!」と、この日の最後までの充実を力強く約束してくれたIDE。
ここからは数曲、ミディアムでマイペースなチューンが続いた。「Train」では車内の光景や市井の人の物語に想像させる現実とリアルを乗せた電車に会場も同乗。続く「Silent」では自分の気持ちは誰かに伝えてもらうんじゃなく自分で伝えないと意味がないと諭し、場内にゆっくりとした美しいワイパーの壮観を作り出した「ホームステイ」、続く季節を夏に引き戻した「MINMIN」では、その不穏なビートと共にみなを深い森にさまよわせた。

Takuya IDE

Takuya IDE

ここでのMCは小話で楽しませてくれた。中でも、「注射の痛さがイヤな場合は小児科での接種をおススメする」の話。実際かどうか定かではないが(笑)、IDEは毎度それを実践。「間違いない!!」と語る。そして「ここからもバシバシ痺れる曲をやっていく!!」と締め、シーンをライブに戻す。

サイレンとともにギターとドラムが現れる。中盤では『ONCE』にも参加してきたファンにはおなじみのギターのtsutsui daisuke a.k.a. Galaxy 7とドラムの楠瀬拓哉も加わり、生のビートが躍動感とグルーヴを伴い場内をグイグイと惹き込んでいく。緊迫感とミクスチャー性を内包した「Dante」、モンスター性とスリリングさを呼び込んだ「IKEMEN」、お客さんの力も借り、そのパワーをアンプリファイさせ、会場を激しくバウンスさせた「AYAKASHI」等が放射されていった。

tsutsui daisuke a.k.a. Galaxy 7

tsutsui daisuke a.k.a. Galaxy 7

楠瀬拓哉

楠瀬拓哉

「後ろで叩いてるとマンスリーで鍛えられて幹がより太くなっていることを実感した」とIDEの歌唱を見直すドラムの楠瀬拓哉。また、「生きてる」以降、数曲はバンドサウンドならではのミディアムなダイナミズムも楽しめた。自分を見つめ直し、省みさせ、それでも生きていくべくバイタリティを寄与してくれた「生きてる」、重いディストーションギターと伸びやかなビートと共に贈られた「ズットマッテル」が会場の一人ひとりに自分自身を対峙させた。

Takuya IDE

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ドラム、ギターがはけ、サンプラーがステージ中央に配置される。「Juliet」では、マイペースで朗らかで穏やかなトラックに乗せて、IDEがリアルタイムにサンプラーのパットにてビートを作りながら、ラップや歌を披露。ゆとりと称される同世代に向け、「そんな言葉聞き流して戦え!!」とラップした「YOU-TRICK SP」、再びハンドマイクにてラテンビートの躍動感たっぷりに場内のバウンスを煽った「Lucky Day」が贈られる。

ここで再びコーラスとドラムとギターが呼び込まれ共演。総勢7人と会場も交えて、楽しげでブラックフィールたっぷりの「調子 Ride On」を楽しむ。合わせて同曲ではアドリブやソロにて各人のプレイヤビリティも堪能できた。

Takuya IDE

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「今回は新しいTakuya IDEを見せられたんじゃないかな。やはり年に一回はワンマンで大きいライブをやりたいし、次はシンセサイザー等も入れてもみたい。また次には新しいTakuya IDEを見せたいと思う」と、本編最後の「n」がバックに映し出された巨大な満月が歌と共に欠けていく映像をバックにメローに歌われた。

アンコールは3曲。和なテイストもブレンドされたトラックと会場のクラップも交え贈られた「MUSYOZOKU」、特別にリアルタイムでサンプラーのパットでビートを作り、そこに「Super Star」を基調に即興でフリースタイルをキメた同曲では、「俺はこれからも続けていき、ヒップホップを広めていく」「お客さんと共にライブを通し作品が完成したし、今後もこのスタイルを続けていきたい」的なリリックが放たれ、フロアとの力強いアライアンスが組まれていくのを見た。そして最後は、季節を夏に引き戻すように「Saudade」が。そこでは早くも来年の夏へと想いを馳せさせ、ライブは終わるがIDEの音楽活動はますます活発になっていくことを予感させた。

Takuya IDE

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ワンマンとしてはここで一旦の集大成を見たが、この後年末まで2マンツアーやイベント出演等も控えているIDE。また、この日はスマホゲーム『ブラックスター -Theater Starless-』のヒースのCVとして抜擢されたニュースもライブ中、告げられた。
彼の活動は年内も、そして来年も更に活発化を極めていくことだろう。自身がコンプレックスとして持っているであろうし、武器であるとも自覚しているであろう、役者とミュージシャン両方の並行的な活動。その両立と両成、そして彼の目指す「自身の日本語ラップを世に残す」との使命。そこにまた一歩近づけたことを更に確信できた一夜でもあった。

文=池田スカオ和宏 撮影=阿部稔哉

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