福井晶一、中川晃教、中河内雅貴(左から)
日本中の観客を魅了したミュージカル『ジャージー・ボーイズ』2018年キャスト版のCDが2019年11月11日(月)に発売された。昨年2019年に神奈川県民ホールで行なわれた大千穐楽で発売が発表されてから1年。心待ちにしていたファンも多いだろう。
11日には発売記念イベントが行われ、16年の初演、18年の再演時はチームWHITEとして出演したフランキー・ヴァリ役の中川晃教、トミー・デヴィート役の中河内雅貴、ニック・マッシ役の福井晶一が参加。抽選で選ばれた200名のファンたちが、俳優陣とハイタッチをして、特典を受け取った。
本番の臨場感をハイクオリティで体感できるCD
来場者とハイタッチをする中川晃教(手前)と、笑顔で見守る福井晶一
−−CD発売おめでとうございます。まずは、CDの仕上がりの感想をお聞かせください。
中河内:本当にこのCDができたことをとても嬉しく思います。CDを聞いただけでミュージカルを思い出せるのが、このCDのいいところだと思いました。裏のスタッフさんは抜粋するのに、結構苦労があったんだろうなというのも伺えて、でも素敵なところを残してくださったというのが、僕自身すごく嬉しかったです。また、この素敵な歌声を皆さんがいつでも聞ける状況をお届けできるというのが幸せだなというのをとても感じました。
中川:音がすごく良くて、ライヴレコーディングとは思えないぐらいの音の良さやクオリティです。そしてミュージカルの醍醐味である生バンドで、もちろん僕たちがちゃんと歌唱して。当たり前のことなのだけれども、その瞬間がしっかりとこの一枚に収められている。ライヴ感の魅力、そしてその良さがありながらも、本当にいい音質で聞いていただけるクオリティの高さを実感しました。
福井:まず1年、待たせてしまったというのは、お客様にとっては長かったと思うんですけど、待っていただいた分、すごくいいものが出来たのではないかなという印象があります。僕たちも本当にアッキー(※中川晃教)の素晴らしい声を形に残せたことがすごく嬉しいですし、そこに携わって、とにかく『ジャージー・ボーイズ』はハーモニーが一番なので、そこも残せたのは嬉しいですね。
また、曲だけではなくて、セリフが入っているというのが、ただ音楽を楽しむだけではなくて、本番の臨場感を一緒に体感できる。作品を見た方はもちろんですけど、見ていない方でも、一つの作品を楽しめるCDになっていると思います。僕はCDを聞いて、当時のことを全部思い出しちゃって。いろいろなところで、うるっときちゃいました。お客様もきっと同じような風に楽しんでいただけるのではないかなと思います。
忘れられない、2018年の再演の思い出
来場者とハイタッチをする福井晶一
−−改めて、2018年公演を振り返って、現在感じることや心境をお聞かせください。
中河内:再演は地方に行って、いろいろな会場で、その会場ならではの音の質感を作る大変さがありましたが、地方公演ができたというのがとても僕たちもすごく嬉しかった。その土地その土地でお客様の反応も全然違って。お客さんと僕らで一緒に作り上げた作品だなと改めて実感した公演でした。僕は、再演でいろいろな箇所を回れて、とても楽しかったんですよね。このメンバーでいろいろ巡ったのは、楽しかったです。
中川:全国、本当にすごかった。秋田から久留米まで行ったよね。
中河内:僕は春Spring担当だったので、一番最初に出て、お客様に『ジャージー・ボーイズ』とはこういう作品だと提示しなくてはならないので、後から続く人たちにちゃんとバトンを渡せるように、いろいろ変えながらやった記憶があります。それも面白かったです。
中川:ふっと思い出したのは、2018年1月にシアタークリエで『TENTH』をやった時のことでした。トミー役のガウチくん(※中河内雅貴)が前の日まで公演か何かで、朝一番にクリエに来てくれて。18年の再演に向けて、僕たち一生懸命宣伝して、満員のお客様の中でステージを届けようという意気込みがありましたし、全国ツアーも決まっていたというのもあって、初演でいろいろなことを経験したけれども、もっとさらに上を目指したいという思いもあいまって、その『TENTH』で『ジャージー・ボーイズ』のナンバーを聞かせるというので、ガウチくんと、俺と、海宝(直人)くんと、その時初めてメンバーとして歌うspiくんとが集まって。とにかくすごく忙しい中で、あの瞬間のステージに集まった時に、ここから再び再演が始まるというのを感じたことを思い出します。
ジャージー・ボーイズに関わるみなさんは、本当に幅広いエンターテイメントの第一線を牽引し、求められて頑張っている皆さん。それぞれのフィールドの中から『ジャージー・ボーイズ』という作品に向かって、本格的に初演の評価を追い風に、演者にとっても憧れを思ってもらえる作品として、喜びをもって作っていくんだと。観に来てくださるお客様も、またあの舞台を観に行きたいと思ってもらえるような作品を作るんだ、また、そういう関わる人たちも見に来てくださる人たちも、皆さんが幸せになってくれるような力がある作品なので、そこを大切にやっていくんだと、心新たに始まった2018年だったと思うんですね。
僕たちは特に初演のメンバーでもありますから、初演のメンバーは初演のメンバーとしての思いを新たに確認し合えた再演だったので、あそこから僕たちの新たな『ジャージー・ボーイズ』は始まったと思います。もちろん初演から始まってはいるのだけれど、また新たにね。このメンバーでなければここまで来れなかったと思います。それを見届けてくれたお客様に本当にありがとうという気持ちで、神奈川の千秋楽を迎えました。ちょうど台風もあって、振替公演ということで、もう1ステージを追加させていただいた。その最後の最後で、このCD発売が決まりましたという報告をした時に、お客様がすごく喜んでくださった一体感を今でも思い出せます。先を見つめても、今を振り返っても、忘れられない2018年でした。
来場者に特典を手渡す中河内雅貴
福井:初演はどうなるか分からない状態でやっていて、不安だらけだったんですけど、開けてみたら、あんなに大熱狂で、演劇大賞もいただいて。再演はその評価をいただいた上での2018年だった。でも集まってみると、アッキーもガウチも直人(※海宝直人)もそれぞれがいろいろな作品に出てスキルアップしてきて、もっといいものができるんじゃないかと。初演の時にまだ完成した感じではなかったんですね。なので、もっと上を目指せるんじゃないかという期待と、それを期待を超えていけるのかという不安と。どこがどうということでもないですが、ファンも含めて、芝居の深さとかお互いのコミュニケーションとか含めて、ある程度自分たちでいけたなという思いがあって。再演に参加できて、本当に心から良かったなと思いますね。
ツアーの初日の秋田公演が忘れられなくて。なんていうんでしょうね。東京のクリエはクリエで好評でしたが、地方に行った時にお客様の反応がすごく新鮮で。各地本当に1公演1公演が忘れられないです。僕たちはプライベートでも仲が良くて、いろいろなところを観光したりして。内容と自分たちのプライベートも一緒にリンクして、どんどん絆が深まっていって。こんな体験できないなという2018年の公演でした。もっともっと絆が深まって、スペシャルな公演だったなと思いますね。ホワイトは再演だったんですけど、またブルーはね、初の参加で、ぴろし(※矢崎広)が一人だけ残って。初演の大変さを分かっているから。それも分かるし、自分たちのレベルも上げなきゃいけないし、というので本当に大変だったんですけど、ブルーはブルーでまた新しい風を入れてくれて。『ジャージー・ボーイズ』ってメンバーによって違って面白い作品だなと思いました。それがこのCDに凝縮されていると思います。
「30代の代表作に」「人生の宝物」「ずっと僕の中で生き続ける」
中河内雅貴
−−初演、再演と演じてこられた役柄は、それぞれご自身のキャリアの中でどんな存在ですか。
中河内:僕は、いわゆるミュージカル界の中でも、「歌の怪獣」と言われる方々と肩を並べなきゃいけないプレッシャーがありまして。まじかよっていう(笑)。でもその中で、4人で作るハーモニーにとても重きを置いて、それに向けてトレーニングをして、積み重ねてレベルアップしながらやらせてもらっていて。『ジャージー・ボーイズ』は僕の人生の中でも、一つ自信が持てた作品でもあるし、今もこの『ジャージー・ボーイズ』に出演したということが自分の芯の強いものになっています。
この前、外国の演出家と話していて、「『ジャージー・ボーイズ』出ていたんだって?」と言われて。「トミーです」と言ったら「だよね」って。それがすごく嬉しかったんですよ。全部がこの作品って、本当にすごい作品なんだなと改めて理解したし、分かっていたつもりなんですけど、もっともっと世界でも認知のある、みんなが愛している作品なんだなと理解できた。『ジャージー・ボーイズ』は僕の人生の宝物の一つで、トップ3に入るぐらいの作品と役です。みんなでファミリーになれた作品。今でも自信を持って『ジャージー・ボーイズ』出たんだと言えます。
中川晃教
中川:この物語の中でフランキー・ヴァリは、16歳から50代かな、ロックの殿堂入りを果たすところまでが描かれています。16歳から50代までを演じ、生きるということの経験は、役者としては力も求められるし、まだ自分が50代に達していないけれども、これから先ね、自分が求められる限り、このフランキー・ヴァリに自分の経験や自分の人生を注ぎ込んでいいんだと思わせてくれた役と出会えた。それは俳優としてすごく恵まれているな、幸せだなと思っています。
こないだ、フランキー・ヴァリが来日されたんです。僕は舞台稽古中でしたが、皆さんの協力があって、なんとか最後、コンサートを見ることが叶ったんです。ご本人と写真を撮らせていただいて舞い上がったのですが、ご本人フランキー・ヴァリさんが日本のフランキー・ヴァリである中川晃教をひとつ認めてくれたことは、自分にとって次に向かう力になりました。そして、ご本人は現役でやられていて、87歳で最後の来日と言われていたけれども、ステージの声を聞いたときに本当にたまげるぐらいに素晴らしい声だったんですよ。まさに天使の歌声が称される理由が初めて生で聞いて分かったんですよ。
フランキーの声の出し方を踏襲して、それをもって、フランキー役になれるかなれないかという審査を受けるわけです。だから、どうしても技術というものが先立ってしまったんです。僕はそれをクリアできたからフランキー・ヴァリを演じられたし、最初はそれを自分の糧にしていたけれども、実物の声を聞いた時に、これは技術ではない。フランキー・ヴァリさんの唯一無二の声なんだと分かったんです。そう思った時に、いろいろなことが腑に落ちて、日本のフランキー・ヴァリとして、次に自分がどこを目指していくべきかという一つの方向性、目標が見えたんですよね。自分でなければ出せない声がある。自分の声で、フランキー・ヴァリを演じていく。その次の目標が見えた時に、自分の中で、18歳でデビューして、『モーツァルト!』という役で10代・20代と代表作をいただいたけれども、また30代になって、この『ジャージー・ボーイズ』、そしてフランキー・ヴァリという役を30代の代表作になるようにしていきたいと思わせてくれました。
福井晶一
福井:ニックという役をいただいて、僕の感覚では、このミュージカルで大活躍の若手の人たちと青春を過ごしたなという感覚です。僕一人だけ年齢をあげていたんですけど、一緒に燃え尽きたいなという感覚で、それがすごく嬉しかったです。僕の中で、この世代の役者の方達と一緒に同じ土俵で作り上げることがあまりなかったので、そこにキャスティングしてくれた人に感謝します。
役がそれぞれがあっていて、役割をちゃんと演じて、それがすごく奇跡的な配役であったなと。それぞれのチームがそうでした。自分では見つけられない魅力を引き出してくれて、それがまた4人揃った時にもっと大きな力で舞台上で爆発できたことが嬉しく思いました。僕の舞台経験の中でも特別な作品で、それこそCDを聞いた時にすぐに蘇って涙ぐんでしまったぐらいです。これからも僕の中でずっと生き続ける『ジャージー・ボーイズ』だと思っています。
中河内雅貴、中川晃教、福井晶一(左から)
取材・文・撮影=五月女菜穂
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