H ZETT M 5月に東京オペラシティにて史上最大級のピアノ独演会決定、1/26のピアノ独演会をレポート
H ZETT Mのピアノソロコンサート「H ZETT M ピアノ独演会」が、1月26日に埼玉・戸田市文化会館で開催された。その一部分をレポートする。
「H ZETT M ピアノ独演会」は、ピアノ一台で観客と向き合い、即興性の高い演奏で“何が飛び出すか分からない”ステージは毎公演が貴重な瞬間となりリピーターが続出。近年では、全国から開催オファーの絶えない人気公演となっている。
そして遂に5月19日に東京・ 初台にある東京オペラシティ コンサートホールにて史上最大級のピアノ独演会が開催されることが決定した。
「H ZETT M ピアノ独演会」1月26日戸田市文化会館ライブレポート
晴れ渡る空の下、本年最初のピアノ独演会ということで、戸田市文化会館ホールには女性を中心に、音楽通の男性たちから、H ZETT M のトレードマークと同じように鼻を塗った家族連れや老夫婦など幅広い年齢層の人々が集う。
会場に入ると目に入ってくるのが、ピアノの後ろに置かれた、丸に“独”と書かれた大きな暖簾。これがこの公演のトレードマークだ。
照明が落ち、これから始まるショーへの大きな期待を込もった拍手の中、H ZETT Mが登場。
ステージセットのジュークボックスからリアルタイムで流れるラジオをSEのように使い、本編がスタート。「未完成ワールド」から始まりルーパーを駆使した「極秘現代」へと続いていく。ピアノの音を重ねる緊張感と共に観客を世界に一気に引き込む。
だが少しの間を置いて始まった次の曲では自身の声をサンプリング、エディットしながらピアノを合わせて会場の埼玉県戸田市をコミカルに表現。客席からは笑い声が溢れ、一転会場はアットホームな雰囲気に。この緩急のつけ方がH ZETT Mのステージパフォーマンスの大きな魅力だろう。柔らかい空気の中で、時折見せるテクニックが緊張感を途切れさせない。
そのまま楽曲は「踏み出すニュー」「ほろ酔いバランス」と続きながら、「北風小僧の寒太郎」のメロディーが入り込んできて、観客とコールアンドレスポンス。その日の関東は北風も強く厳しい寒さであったが、その粋な演出に会場も暖かくなる。
その後も「スーダラ節」を演奏してみたり、H ZETTRIOの「Fusion in Blue」に「Get Wild」を混ぜていくなど、誰もが知る楽曲を時に大胆に、時に繊細にアレンジしていく様は、常に人々を楽しませることを忘れない彼の姿勢がよく表された瞬間。
音のエンターテインメントに浸っているとあっという間に第一部が終了。大きな拍手の中、客席の明かりが点いた。
15分の休憩の後、このピアノ独演会の大きな特徴でもある第二部がスタート。
先ほどまで会場を彩っていた大きな暖簾からステージセットの小物、照明もスピーカーもなくなり、ステージにはピアノ1台のみ。
そこにH ZETT Mが登場。第1部とは衣装の雰囲気も変わり、モードなジャケットスタイルに。先日ミュージックビデオが公開されたばかりの「ランドスケープ」、その映像のように不思議な緊張感が会場に漂い始める。ここからが文字通り「ピアノ1台だけで観客と向き合う」独演会スタイルの真骨頂だ。
H ZETT Mとオーディエンスが作り出す心地よい緊張感と静寂の中、「永遠は見つからない」でスタート。先ほどまでよりも、より自由に鍵盤の上を駆け巡る指先。特に「水の流れ」や「ボレロ」では美しい旋律が独特のアレンジにより解体、再構築され新たな印象を持って届けられた。
大観衆の中、ピアノから放たれる音が次々と空間を埋めていく。演奏が進むに連れ、その勢いは増していき「ショーが始まる」「新しいチカラ」と頂点に達したところで第二部が終了。息を飲むような圧巻のステージに割れんばかりの拍手。第二部もまた息をつかせぬ展開で終了。
鳴り止まない拍手の中、アンコールに応えたH ZETT M。この日は「Akatsuki」を演奏。久しぶりの楽曲に客席は驚きと歓喜と興奮で溢れる。だが、そこに「水戸黄門のテーマ」を入れ込んでくるなど、ユーモアとシニカルさが溢れた彼らしい演奏で会場中が湧く。そして「BRICK & GLORY」で締め、本年最初のピアノ独演会は幕を閉じた。
時代が変わる今年の始まりを、その何物にも縛られないスタイルで彩ったH ZETT M。名曲も童謡も、ちょっと笑ってしまうような楽曲も自由に行き交う彼の演奏スタイル、それは彼自身の自由で平等な熱い音楽への愛からくるものに違いない。
今後は1公演、1公演がより貴重なものになってくるであろうこのピアノ独演会。昨年、台風により延期になった四国初開催の6月の香川振替公演、先日発表されたばかりの東北初開催の3月の仙台、5月の愛知・岡崎に続き、5月19日には東京・オペラシティでの公演が決定している。