大黒摩季、しなやかでパワフルな生“背筋ヌード”から全国ツアースタート
2016年8月、6年もの病気療養を経てアーティスト活動を再開した大黒摩季が、故郷である北海道のニトリ文化ホールでのソロLIVEから本格的なライブ活動もスタートさせた。
その後、2017年2月~2018年5月末まで1年3カ月に亘り「HIGHER↗↗HIGHER↗↗~中年よ熱くなれ!~」と題したツアーを開催、その数は85本にも及んだ。デビュー25周年を締めくくった昨年5月26日の沖縄最終公演から10ヶ月。その間にリリースした復帰後初のオリジナル・アルバム「MUSIC MUSCLE」を引っさげて、再び全国ツアーをスタートさせた。
今回のツアーでは、これまでのROCK Liveを煽るような派手なSEからスピーディー且つ派手に登場する鉄板演出とは違い、開場時からオーディエンスが予期せぬ嬉しいサプライズに心を躍らせてしまう、そんな小粋なトラップが仕掛けられ、前方スクリーンには、発売時期に修正をしたのか?してないのか?問題で話題にもなった、ニューアルバム「MUSIC MUSCLE」のジャケットの“背筋ヌード”がそのままロゴとして映し出されている。
オープニングは、今回のライブの導入となるストーリーが映し出され、さながら映画を見るような落ち着いたスタートになっている。
そして、1曲目の「LOVE MUSCLE」が始まると同時に、スクリーン越しに先ほどのロゴとまったく同じ姿、正に修正不可能な生身の背中で大黒摩季が登場する。
この潔さに、自身がこのライブに賭ける意気込み、時代は変わろうとも貫き続けてきたブレないメッセージ、アーティストとしてクリエイターとしての道を再び選んだ強い覚悟をを感じざるを得ない。
2曲目に入ってスクリーンが上がると、そこは…ここからはライブでのお楽しみだが、ニューアルバム「MUSIC MUSCLE」は、共に同じ時代を生きてきた同世代に向けて“ これからを強く輝きながら生きる為に 」という事で、現実や運命と戦う心を鼓舞するDisc1「Fighting Muscle」、自分自身を許し癒し和らげるためのDisc2「Resting Muscle」の2枚組となっており、今ツアーは演劇や歌舞伎の様に1部・2部制、間に15分の休憩をはさんで行われる為、どちらの世界観からスタートするのか、が楽しみの一つではある。
その2つの世界観を元に綴られた物語は、今回大黒摩季が強く感じているテーマ“ 新元号を目の前に、私たち昭和世代は次世代に何を残せるのか? ”を核に生み出されたという。
これから更に加速するであろうデジタル社会、冷徹なAI・BI管理化の下で一層人間らしく生きにくくなるであろう未来、委縮と不安の募る社会をこのまま放置して良いのか?可愛い子供たちが気軽に夢も見れない世界にしていいのだろうか?流れに身を任せ、中々やってこないヒーローをどこかで待ちわびて、“誰か”に委ねるままで良いのだろうか?良いものも古き良き時代の遺産として過去にしてしまって良いのか?という問題提起と、では大黒摩季の考える「機械にはない人間らしさとは何か?」、「ならば、これからどう生きるべきか」その答えが盛り込まれた、壮大なるSFストーリーは、「MUSIC MUSCLE」の楽曲をチャプターメッセージとして置き、今までにありそうで無かった、“ 昭和のアナログ&平成のデジタル ” 両方を駆使した音楽・映像・衣装・舞台演出となっている。
ステージングも過去、現在、近未来を行き来し、そのストーリー中に、大黒摩季がどんな役どころでどんな生き様を見せるのか?生死も含めたその結末は、アンコール最後のMCを語る大黒摩季本人が毎回握っているスタッフもとのことで全く気が抜けないのだという。
ヒット曲を中心に中高年を鼓舞するパワフルなステージだった前ツアーから、今ツアーは、パワフルなステージはそのままに、アルバム「MUSIC MUSCLE」からの楽曲を織り交ぜながら、より色濃いメッセージと記憶に残る刺激トラップを持った、エンタテインメント・ライブに仕上がっている。そして、「何かを始めてみたくなる」「今度こそ本気で未来を変えてみたくなる」そうした自己再生力を煽る内容に、大黒摩季が時代の代弁者・現存するカリスマに進化していこうとする気運を感じるライブになっている。
「私は6年間望む望まないに関わらず、ずっと観客として音楽をエンターテイメントを観続けて来たから、作り手の崇高なエゴイズムには欠けているけれど、構って欲しい♪そっとしておいて欲しい、これはないと困る、でもハッともキュンともさせて欲しい、、、、etcその気持ちなら良くわかる。だから一度、楽しさも感動も発散も自分自身と語らいちょっとした答えを出すきっかけも、笑顔も全部ある欲張りLIVEを作ってみたかった。(大黒摩季)」
彼女自身がそう語るライブは、観客の五感をフルに刺激し、心地よい疲労感をもたらし、ライブ後には快適な睡眠も約束してくれるかのようだ。
“もう二度と大黒摩季の様には歌えないと覚悟した後に、ふいに貰った歌手人生。使い切らないともったいないじゃない!死ぬ気で生きるんじゃなくて、一回死んだ気で自由に生きる。”と笑って語る大黒の病気療養からの活動量には、ファンもスタッフも皆心配になるほど目を見張るものがあるが、彼女のチャレンジと進化はまだまだ続く。新元号と50歳を目の前に、更なる果てない貪欲さを確信できるライブであった。