マーク・ロンソン、星野源とのダブルヘッドライナーショウのライブレポート公開
2年連続の開催となったダブル・ヘッドライナー・コンサート「LIVE IN JAPAN 2019 星野源×MARK RONSON」出演のために、マーク・ロンソンが来日。今年は会場を神奈川・横浜アリーナに移し、12月9日と10日の2夜にわたって開催された。昨年と同様に完全ソールドアウトとなったが、さすが2度目、アプローチを変えてマークならではのユニークなパフォーマンスを見せてくれた。
何しろ、ストレートなDJセットだった前回に対して今年のセットは、DJとライヴのミクスチュアといったところか?マークにとって恐らく日本では初めてライヴ演奏を交えた、ほかでは観られないスペシャルなショウであり、そのために彼が用意したのは12人編成のストリングス隊。まずはピアノに向かって、さる6月に登場した最新アルバム「レイト・ナイト・フィーリングス」の導入部を弾き始めたマークは、「コンニチハ、ヨコハマ!」と呼び掛けると、豪奢なストリングスとピアノを添えて、シングル曲だったタイトルトラックを披露する。ストリングスをふんだんに盛ったアルバムだっただけに納得の演出だ。
続いてステージ中央のDJブースに移動して、DJ×ストリングスという組み合わせで「ウー・ウィー」(93年のファースト「ヒア・カムズ・ザ・ファズ」より)を聴かせたかと思うと、次はギターを手にし、ゲスト・シンガーを迎えて「ストップ・ミー」を披露。そのシンガーとはまさに、アルバム「ヴァージョン」(07年)でこの曲を歌って以来長年コラボしている、オーストラリア人シンガーのダニエル・メリウェザーだ。その後もサプライズが続き、「僕が大好きなアーティストを招こう」と星野を呼び寄せると、ふたりが弾くギターとストリングスでダニエルのソウルフルな美声を縁取り、エレガントなアンプラグド仕立てで名曲「シャロウ~「アリー/スター誕生」愛の歌」を聴かせる。言うまでもなく、マークにアカデミー賞やゴールデン・グローブ賞をもたらした映画『アリー/スター誕生』の主題歌である。
こうして曲ごとにスタイルを変えて楽しませてくれた彼は、再びDJ×ストリングスで「アップタウン・ファンク」ほかアップビートな曲を鳴らして、オーディエンスを踊らせることにしばし専念。いつの間にかアリーナはダンスフロアと化している。このコーナーで特筆すべきは、自身の曲「ナッシング・ブレイクス・ライク・ア・ハート」と、今年最大のヒット曲のひとつ=リル・ナズ・Xの「オールド・タウン・ロード」のマッシュアップだろう。前者にヴォーカルを提供したのはマイリー・サイラス、後者には彼女の父ビリー・レイ・サイラスが参加しており、さりげなく親子を引き合わせたというわけだ。
そしてフィナーレは昨年と同様、マークにとって最高のミューズだった、故エイミー・ワインハウスの「バック・トゥ・ブラック」と「ヴァレリー」。亡くなってからはや8年、原曲を彩っていたホーンをストリングスで置き換えてあのパワフルな歌声を会場一杯に響かせ、彼女の記憶を風化させてはならないという使命感が伝えていた。
以上、趣向を凝らした約40分の濃密なセットを終えた彼はさらに、星野のセットのアンコールにも登場。「スバラシイファンデスネ!」とオーディエンスに賛辞を送ってから、星野のバンドにギタリストとして加わると、「Week End」を歌う彼をバックアップした。これまた初の試みだ。昨年の共演を経て、11月に星野がニューヨークで行なった公演にもマークはスペシャル・ゲストとして登場しており、着々と親交を深めているらしい。曲が終わると、星野と2度ハグし合ってからステージをあとにしたが、この調子なら、ふたりのショウが毎年恒例のイベントになったとしても驚かないだろう。
(文・新谷洋子)
セットリスト
1. レイト・ナイト・プレリュード
2. レイト・ナイト・フィーリングス feat. リッキ・リー
3. ウー・ウィー feat. ゴーストフェイス・キラ、ネイト・ドッグ、トライフ & サイゴン
4. ストップ・ミー feat. ダニエル・メリウェザー(with ダニエル・メリウェザー)
5. レディー・ガガ & ブラッドリー・クーパー「シャロウ ~『アリー/ スター誕生』愛のうた」(with ダニエル・メリウェザー、星野源)
6. ナッシング・ブレイクス・ライク・ア・ハート feat. マイリー・サイラス
7. リル・ナズ・X「オールド・タウン・ロード(feat. ビリー・レイ・サイラス) [リミックス]」
8. アップタウン・ファンク feat. ブルーノ・マーズ
9. シルク・シティ&デュア・リパ「エレクトリシティ」
10. エイミー・ワインハウス「バック・トゥ・ブラック」
11. ヴァレリー feat. エイミー・ワインハウス