ROTTENGRAFFTY主催「ポルノ超特急2019」初日レポート公開
京都パルスプラザでは6回目の開催となる冬の風物詩、「ポルノ超特急2019」。ロック、ラウド、パンク、ミクスチャーなど様々なジャンルのバンドはもちろん、今年も芸人たちが出演者に名を連ねており、様々な苦難を乗り越えて今年20周年を迎えたROTTENGRAFFTYのキャリアをそのまま表現したような個性豊かなラインナップに胸が躍る。チケットは2日間ともソールドアウト。今年も古都・京都で繰り広げられる真冬の狂宴を全力で楽しむために、朝早くから会場には多くの観客が詰めかけていた。
イベントMCのやべきょうすけ氏による挨拶や注意事項の説明の後、ROTTENGRAFFTYのN∀OKI(Vo.)、NOBUYA(Vo.)、侑威地(Ba.)、HIROSHI(Dr.)が金閣のステージに登場し、「ポルノ超特急!」「2019!」「出発!」「進行!」というオーディエンスとの掛け合いでイベントスタート。たくさんの出演者と観客を乗車させた満員のポルノ超特急が勢いよく出発した。
【金閣】Fear, and Loathing in Las Vegas
「ポルノ超特急2019」の始まりを告げるべく、金閣ステージに登場したのはFear, and Loathing in Las Vegasだ。「Return to Zero」を皮切りに、ダンサブルで力強いサウンドを鳴り響かせ、満杯のフロアの熱気を一気に盛り上げる。ベーシスト、Keiの急逝という波乱過ぎる幕開けとなった2019年。その最後の月に生み落とされたアルバム「HYPERTOUGHNESS」からのナンバー「The Stronger, The Further You'll Be」が鳴り響くと涙を浮かべるオーディエンスの姿も。ラストに披露されたのは名曲「Twilight」。終演後も観客の感嘆の声が長く会場に響いていた。
【銀閣】ロットングラフティー
2010年からバンド名を現在の英語表記に変更し、それまでのステージ衣装だった黒スーツを脱ぎ捨てたROTTENGRAFFTY。しかし、この日の銀閣のトップバッターは「ロットングラフティー」。これは要するに2010年以前の形態でライブをするということ。「いったいどのようなライブになるのだろう?」と期待で胸を膨らませた観客は、早い時間から銀閣ステージに殺到していた。
黒スーツに身を包んだHIROSHI(Dr.)、侑威地(Ba.)、KAZUOMI(Gt./Programming)がステージに登場。KAZUOMIが「銀閣のトップは俺らに任せろ!!」と吠えて客席から大歓声が降り注ぐ。ほどなくN∀OKIとNOBUYAが登場し、「日進月歩」の重厚なミクスチャーサウンドが鳴り響く。
5人の勢いは最初から凄まじく、侑威地とKAZUOMIが客を煽ったかと思えば、N∀OKIがコール&レスポンスで熱を更に上げていく。続く「夕映え雨アガレ」でダイバーが続出し、KAZUOMIが客席エリアに突入、銀閣は既にカオス状態に。主催者自ら、今年の「ポルノ超特急」を最初からめちゃくちゃにするつもりだ。
胸を焦がすギターでイントロから客席が沸騰した「毒学PO.P革新犯」で更に勢いを増した後、N∀OKIが「シンデレラ!」とステージに呼び込んだのはマキシマム ザ ホルモンのナヲ(ドラムと女声と姉)。一切途切れない狂喜の歓声の中で披露されたのは、もちろん2005年にリリースされたアルバム「えきさぴこ」から「RATMAN」。
ナヲと5人の共演で歓喜した銀閣の温度と湿度はぐんぐん上昇し、午前中にも関わらずステージの上も下も全身汗まみれ。オーディエンスが鳴らすクラップの中で魅せた「悪巧み~Merry Christmas Mr.Lawrence~」、鳴り止まぬOiコールに呼応するかのように5人が全力で暴れまわった「暴イズDE∀D」を経て、最後はN∀OKIが客の上でブルースハープを鳴らした「切り札」。全力疾走のライブに呼応した客席エリアの温度は沸点に到達。古都のドブネズミが圧倒的な存在感をまざまざと見せつけた。
【金閣】dustbox
「ロットン、20周年おめでとう!」。観客の力強いシンガロングでスタートした「Here Comes A Miracle」を演奏する直前、ROTTENGRAFFTYへの熱い思いを叫ぶSUGA(Vo.Gt)。ロットンは今年で結成20周年、dustboxはデビュー20周年。共に周年を迎えた同志への祝辞として、「Dance Until Morning」の中盤でロットンのナンバー「D.A.N.C.E.」の1フレーズを披露すると、そのステージにロットンのメンバーも登場するという嬉しいサプライズが。ロットン同様、ひたむきにライブシーンを駆け抜けてきたdustbox。リリカルでポップなメロディーが光るアグレッシブなその演奏に、彼らの優しさと底力を垣間みた気がする。
【銀閣】SPARK!!SOUND!!SHOW!!
銀閣2番手は、フロント3人が幾度となく客席エリアに突入し、脚立の上で歌ったりマイクを客席に投げ入れたりと会場を沸かせに沸かせたSPARK!!SOUND!!SHOW!!。一聴で心を奪われるハイセンスなサウンドと、ライブハウスで鍛え抜いてきたタフなそのステージは、30分間のライブで1秒も客を休ませなかった。
今年10周年を迎える彼らとROTTENGRAFFTYの出会いは最近だったらしいのだが、MCで対バンした際の打ち上げでのエピソードをタナカユーキ(Vo./G.)が説明し、「あんな純度高いもの見せられたら、俺らもあんなバンドになりたいと思います」と叫んで「スサシのマーチ」「南無」と暴れまくって終演。拍手喝采が沸き起こる痛快なステージだった。
【金閣】キュウソネコカミ
メンバー自身が登場する恒例の全力リハの後、再びステージに現れたのは、ポル超6年連続出演中のキュウソネコカミだ。「メンヘラちゃん」でスタートするや、場内の誰もが笑顔でジャンプ&ダンス。「トリビュートにも参加させてもらいました」と語ったヤマサキ セイヤ(Vo/Gt)のMCを合図にROTTENGRAFFTY「e for 20」のカバーが始まると、N∀OKIと、背中に「聖夜上等」の刺繍がほどこされたサンタ風衣装のNOBUYAが登場。フロアに飛び込んだセイヤが観客にかつがれるお馴染みの場面に沸いた「TOSHI-LOWさん」からは、次々とサークルモッシュが現れたラストの「The band」まで全速力で演奏。6年前よりも何十倍もたくましくなったそのステージに、入場規制のかかるフロアに集ったすべての観客が魅了された。
【銀閣】NOISEMAKER
フロアに向かう観客の列が途切れない。「ポルノ超特急」初出演のNOISEMAKERは、ギュウギュウに詰まった銀閣のステージで、スケールの大きなロックサウンドで巨大な一体感を生み出した。
AG(Vo.)が気合一閃、客席最善の柵に登って「かかってこい京都!!」と叫び、ソリッドなアンサンブルで「MAJOR-MINOR」「SADVENTURES」で次から次へとジャンプ、クラップ、コール、シンガロングを巻き起こしていく。
そして畳み掛けるようなヴォーカルの「Wings」では途中からCrystal LakeのRyo(Vo.)をステージに招き、豪華なツインボーカルで魅せる。初出演の喜びを爆発させた彼らは、最後の「NAME」までオーディエンスの心を離さなかった。
【金閣】NAMBA69
キュウソに続き、NAMBA69もNAMBA(Vo./ Ba.)本人が登場する本気リハでフロアを温めた後、「ライブハウスに変えてやる!」の声で「MANIAC Ⅲ」がスタート。「今日このステージ(で演奏ができる)という、ロットンからのクリスマスプレゼントを貰っちゃってハンパないです」と難波が語り、NAMBA69にとって年内最後となるステージを渾身の歌と演奏で突き抜けていく。ロットンチームの亡きスタッフへの思いなど、バンドマンとしての苦悩や悲しみ、喜びを深く知るNAMBA氏だからこそ頷けるMCも観客の心の奥に突き刺さったに違いない。
【銀閣】Survive Said The Prophet
サウンドチェックからテンション全開だったSurvive Said The Prophetは、本番ではその何倍も熱く激しいライブで駆け抜けた。
爆音が降り注ぐ中、オーディエンスは歓喜の表情で腕を振り上げ、身体を揺らし、ジャンプし、叫ぶ。「found & lost」では無数の肩車が発生し、ステージ前に殺到したダイバーは数え切れないほど。大合唱を巻き起こした「Right and Left」、銀閣に神々しい光景を作り出した「When I」。Yosh(Vo.)が観客の熱量を讃えるように、笑顔でダイバーと拳を合わせる。
キラーチューン「Network System」で全員をジャンプさせ、銀閣の会場を物理的にも大きく揺らし、叫び、無数のダイバーが宙を舞って終了。どの曲もステージとオーディエンスの息はぴったりで、観客と一緒にライブを作り上げていくステージが圧巻だった。
【金閣】04 Limited Sazabys
3年ぶり3回目の出演となる04 Limited Sazabys。ステージに登場したGEN(Ba./Vo.)が「久しぶりだな「ポル超」!!」と喜びをあらわにする。
曲を重ねていくにつれ、客席エリアの熱気がグングンと上がる。軽快なビートで銀閣の広い客席エリアの最後方までお祭り騒ぎにした「Kitchen」では、いくつものサークルが発生。彼らのライブを心から楽しんでいる観客の姿はとてつもなく美しい。
GENが大好きな先輩・ROTTENGRAFFTYへの感謝の気持ちを告げて「Buster call」でガンガンに盛り上げ、最後は「みなさんの2020年に光が射しますように!」と「swim」。数え切れないほどのダイバーが舞い、数え切れないほどの腕が振り上げられる中、同曲を会場の全員で歌い、熱量の高いステージを締め括った。
【銀閣】Crystal Lake
Crystal Lakeのスクリーモと轟音が超過密状態の銀閣のフロアに響き渡った途端、一瞬でそこがモッシュピットのカオスとなっていく。2019年の大半は海外での活動に費やしていたというCrystal Lake。歓声をあげるフロアに向かい、「だから今日は貴重なライブ」とRyo(Vo.)。「俺らの音楽がいちばんヘヴィだ」と続けると、「Lost In Forever」から最後に披露された「Prometheus」まで、持ち前のヘヴィチューンを強靭な歌声と演奏でまっすぐに轟かせた。
【金閣】coldrain
幕開けの「THE REVELATION」からヘヴィな音の塊を容赦なく放つcoldrain。気合いがビシビシと伝わってくる壮絶なステージは、決して誰にも媚びない彼らなりの愛情表現の発露。Masato(Vo.)が「どのバンドよりもROTTENGRAFFTYを倒したいという気持ちでやって来ました!」と吠える。
RxYxO(Ba./Cho.)、Sugi(G./Cho.)、Y.K.C(G.)が入れ替わって暴れた「ENVY」、Y.K.Cの超絶プレイが炸裂した「F.T.T.T」で圧倒した後、「MAYDAY(feat. Ryo from Crystal Lake)」では先ほど銀閣でライブを終えたばかりのRyoがゲスト参加。続いてMasatoが「「ポルノ超特急」に来ている奴らなら絶対に盛り上がるって信じてセットリストに組み込んだ」とロットンの「エレベイター」をカバー。今週リリースのトリビュート「ROTTENGRAFFTY Tribute Album 〜MOUSE TRAP〜」参加曲の披露に観客は大喜び。そして最後は「REVOLUTION」。気迫のステージで見事にその存在を見せつけた。
【銀閣】TOTALFAT
「10月に結成した新人バンドです。お手柔らかにお願いします」。本人リハの後、Shun(Vo./Ba.)がそう告げる。今年10月にギタリスト、Kubotyが脱退して以来、TOTALFATにとってこれが初のフェス出演となる。そのせいかメンバーもオーディエンスも最初は少しナーバスに思えたが、一発目のナンバー「Give It All」が鳴り響くやいなや場内の熱気が炸裂。「俺らがROTTENGRAFFTY 20周年を揺らします!」というShunの声に、「夏のトカゲ」では観客全員が力いっぱいタオルを回して応える。「夏ぐらいにNOBUYAさんから電話がかかってきた」「今日「ポル超」に出られたこの日を絶対忘れない」と、Shunがまたゼロからリスタートする決意を表明。観客が歌う「Place to Try」の<君はひとりじゃない>というメッセージがいつも以上に深く響いていた。
【金閣】SUPER BEAVER
観客を1人たりとも置いていかない懐の深いステージで金閣を包み込んだSUPER BEAVER。4年前、「ポルノ超特急2015」の銀閣トップバッターを務めた彼らは、この場所に立つ喜びと感謝の気持ちを告げる。
1秒たりとも無駄にするなと「閃光」で魅せ、曲を始める前にたくさんの想いとメッセージを込めた言葉を紡ぐ渋谷龍太(Vo.)が、「15年目のインディーズバンド、本気でかかっていくのでよろしくお願いします!」と啖呵を切って「正攻法」。純度の高い彼らのステージは観る者をぐっと引き付け、オーディエンスはステージから目が離せなくなる。巨大なコール&レスポンスを作り出した「予感」を経て、最後はこの場で出会えたことに感謝して「ライブハウスで待ってます。紛れもなくあなたに向けて」と「ありがとう」で締め。最初から最後まで胸に突き刺さり狂うステージだった。
【銀閣】EGG BRAIN
「ポルノ超特急2019」初日、銀閣ステージのトリを飾ったのは初登場となるEGG BRAINだ。「MUZIC」のタイトなビートに煽られたクラウドサーファーたちがひとしきりステージを目指した後、JOEY(Vo./Gt.)が言う。「ロットンと初めて対バンした時は絶対仲良くなれないと思った。でもレーベルメイトになって一緒にツアーもやって……「ポル超」に誘われて、それも銀閣のトリじゃないといけないって言われたら絶対出るに決まってるじゃないですか。休んでた4年間、そんなの吹き飛ばしてやる!」。無期限の活動休止を経て復活したEGG BRAINが最後に披露したのは、負の思考をプラスに変えるナンバー「YEAH!YEAH!」。さまざまなドラマを乗り越えたロットンの20周年を祝うにふさわしいトリだった。
【金閣】ROTTENGRAFFTY
N∀OKIが「来たぜこの刻が! 脳内に焼き付けてくれ! 明日のことは関係ねぇ、俺らが京都ROTTENGRAFFTY!」と名乗りを上げる。1曲目は「金色グラフティー」。オーディエンスの大合唱と共にスタートさせた彼らのライブは、最後まで圧倒的だった。
客席にできた肩車の数がものすごい。ステージから伝わってくる5人の気合いも半端ないが、客席からビシビシと伝わってくるオーディエンスの気合いも半端ない。KAZUOMIと侑威地はステージの端まで行って観客を煽り、ステージの熱に当てられたフロアのテンションも天井知らずに上がっていく。
「PLAYBACK」「So…Start」と一切ブレーキをかけることなく全力疾走した後、N∀OKIが「今年はライブバンドの猛者ばかりに出てもらった。だからどうしてもあいつらにはここに居てほしいと思って、俺らの気持ちを伝えました」と言って呼び込んだのは、カタカナ表記の“ロットングラフティー”の黒スーツを着たマキシマム ザ ホルモンのナヲとダイスケはん(キャーキャーうるさい方)。そして「九州で出会ったときの曲を演りたい」と、ナヲとダイスケはんをボーカルに迎えて「ROLLING1000tOON」をスタート。思いがけないプレゼントに観客は大興奮。現在ライブ出演を見合わせているマキシマム ザ ホルモンへの気持ちが詰まったスペシャルなコラボに、客席からは大きな大きな拍手が起こる。
「STAY REAL」で金閣の温度を更に上げ、今週リリースしたばかりの新曲「ハレルヤ」でフロアをジャックし、「D.A.N.C.E.」で踊り狂わせる。よく考えたら彼らは今日2回目のライブなのに、5人が音をぶつけ合ったときの爆発力は曲を重ねるごとにどんどん強さを増している。
N∀OKIが「20年いろんなことがあったけれど、1つだけ大事なものを手に入れた。それはバンドマンの絆。それを形にしたのが「ポルノ超特急」」と、このフェスにかけた想いを告げて「マンダーラ」をスタート。同曲はバンドがいちばん苦しかった時期に生まれ、以来ずっとバンドを支え続けてきた大切な曲。エモーショナルに歌を紡ぐN∀OKIとNOBUYA、音の1つ1つに気持ちを込めて演奏するKAZUOMI、侑威地、HIROSHI。彼らの想いが込められた音は胸に深く突き刺さり、ゾクゾクと心が震え出す。
それまでも充分に熱量の高いライブだったが、「マンダーラ」で何かのスイッチが入ったのだろうか、その次の「零戦SOUNDSYSTEM」から5人の目つきが変わり、ステージはより激しさを増す。KAZUOMIがギターを置いて客席に突っ込み、ステージの上も下もカオス状態に。
ピリピリとした緊張感を帯びたまま、眼光鋭いNOBUYAが「ラスト1曲、殺す気でかかってこい!」と咆哮して「THIS WORLD」。ダイバーの数は数え切れず、N∀OKIが客席エリアに突入、NOBUYAも杖を投げ捨てて客席へ。KAZUOMIが「遊ぼうぜ!」と再び客席へ身を投じ、ステージの上はリズム隊2人とKAZUOMIのギターを引き継いだcoldrainのsugiという異様な光景。ダイバーの雨、モッシュ、サークル、ジャンプ、コールと大合唱が同時多発し、金閣をライブハウスの狂騒に落とし込んだまま本編終了。
アンコールでは、曲の途中からcoldrainのKatsuma(Dr.)にドラムを託した「Bubble Bobble Bowl」で締め括り、何度も何度も感謝の気持ちを告げながらステージを後にした5人。ROTTENGRAFFTYの人柄が随所に溢れ、バンドマンの絆で成り立ち、全出演者と全来場者が輝き狂った「ポルノ超特急2019」1日目は、無事終着駅に到着した。
文:山中 毅 / 早川 加奈子
カメラマン:【金閣】HayachiN / Yukihide”JON…”Takimoto 【銀閣】かわどう / 石井 麻木