LUNA SEA「LUNATIC X’MAS 2019」開催、誰一人欠けても成り立たない30周年の絆
結成30周年のアニバーサリーイヤーを迎えているLUNA SEAが、12月21日・22の2日間にわたり、埼玉・さいたまスーパーアリーナにて「LUNATIC X’MAS 2019」を開催。5人の奏でる音楽、十字架を成す巨大LEDスクリーンに映し出される美しい映像、物語性を感じさせる照明とが三位一体となった圧巻のステージを繰り広げた。
「毎年ここに帰って来てる。僕らのライヴハウス、さいたまスーパーアリーナ」(RYUICHI/Vo)と初日MCで呼び掛けたように、クリスマス近辺に同会場でライヴを行うのは恒例。しかし、年始にRYUICHIが肺腺癌の切除手術を経て生還、2019年の今回は特別な意味を帯びていた。
讃美歌と共にライヴが幕開けると、アリーナの左右天井から小さな円盤状のミラーが降下、上下に浮遊して光の柱を出現させた。電子的に描き出された教会、あるいは神殿のような荘厳なステージで、LUNA SEAの漆黒のクリスマス・ミサはスタート。「ROSIER」「I for You」「STORM」といった代表曲群を惜しみなく連打しつつ、グラミー賞5度受賞のキャリアを誇るスティーヴ・リリーホワイトとの共同プロデュースに挑んだ10作目のオリジナル・アルバム「CROSS」収録曲も披露。初日と2日目では曲の3分の1を入れ替える意欲的なセットリストで、初日は四半世紀前に遡る初期曲「FALLOUT」から「G.」へと繋げる予測不可能かつダークなオープニングで観客をどよめかせた。
2日目は、SUGIZO(G)が音楽監督を務める「機動戦士ガンダム」40周年プロジェクトのうち、LUNA SEAの記念すべきコラボレーション第一作目「宇宙の詩~Higher and Higer~」でスタート、果てしなく広がり続ける宇宙そのもののような神秘的な音像で会場を包み込んでいく。また、J(B)がベースソロの見せ場から「メリークリスマス」と呟き、そのまま「JESUS」のタイトルコールへと繋げると割れんばかりの大歓声。既存曲もセットリスト内の置きどころや見せ方を変え、新鮮な喜びをファンに与えていく。
30年の活動を振り返り、「一度は家出(※終幕。活動休止)しましたけど、LUNA SEAという実家に帰ってきました」(初日)と語るRYUICHIには大きな拍手が送られた。それぞれのスキルは年を経るごとに磨き上げられ、5人で音を鳴らした時に生まれるグルーヴ感は代替不可能。変化熟成した奥深い表現を聴かせつつ、メンバー全員がまるで初ライヴにはしゃぐバンド・キッズのような笑顔を随所で見せていく。かつてLUNA SEAのライヴでは無言を貫いていたことが信じられないほどに、INORAN(G)は両日熱く語り、オーディエンスを率先して煽っていた。
中盤の真矢(Dr)によるドラムソロでは、5月の結成記念日に開催された日本武道館公演に引き続き、能の囃子方とのコラボレーションに息を呑んだ。この日お披露目となったPearl新電子ドラムe/MERGE(イーマージ)をライヴ会場で鳴らしたのは、真矢が世界初となる。鼓や笛の音と呼吸を合わせ、内蔵された和太鼓の音色を打ち鳴らし、日本古来の伝統と最新テクノロジーとの融合でオーディエンスを魅了した。本公演は2017年に続き、全メンバーの楽器に水素燃料電池による電力を使用。環境に配慮するだけでなく、一音一音を際立たせるクリアなサウンドを実現した。この世界初の試みはLUNA SEAを起点に、去る11月に行われたU2来日公演にも波及している。更に今回、SUGIZOは自前の燃料電池車(及び周辺機器)による電力を提供。出演者が自力で電力をまかなうライヴもまた、世界初である。バンドとしての音楽性を究めるだけでなく、音楽の技術革新や社会貢献の旗手となることによっても、レジェンドの名にふさわしい姿を示していた。
両日ともに中盤に置かれた「THE BEYOND」は「CROSS」の軸を成す曲で、「機動戦士ガンダム」40周年に寄せて書き下ろした壮大なバラード。初日、この曲直前のMCで「まだ学びたい」とRYUICHIは語ったが、30周年は彼らにとって到達点ではなく進化の途中。過去の自分たちを“超えていく”姿勢を示したLUNA SEA自身30周年ともシンクロする深遠な楽曲である。癌手術からの復帰、かつ10月にはポリープ除去手術も経たRYUICHIの歌声は、温存どころか艶と伸びを増幅。共に寄り添って歌うようなハートフルな真矢のドラミング、SUGIZOの冴え渡るメロディアスなフレーズ、INORANの爪弾くクリアトーン、力強くオールを漕ぐような揺るぎないJのベースライン。シンプルだが美しく、どこを切り取ってもLUNA SEAでしかありえない、記名性の塊のような歌と演奏に胸を打たれた。
2日目は、「THE BEYOND」の後、機材トラブルにより演奏の中断を余儀なくされたのだが、待ち時間を活かしてメンバーはトークイベントさながらの会話を始め、会場を沸かせた。SLAVE(ファンの呼称)やスタッフへの感謝に始まり、真矢によるJの物真似で爆笑を巻き起こすなど、通常のライヴではあり得ない展開をJは「神回だよね(笑)」と表現。SUGIZOは、自身の機材故障のためギターを持たない初のメンバー紹介をすることになり、エアギターのアクションで「ギャイーン!」と咆哮。「アコースティックでやろう!」とINORANが提案するなど、ハプニングを楽しさに転じようとしていた5人の姿は、結果的に、30周年の今だからこその揺るぎない絆を感じさせる貴重な時間となった。ディレイ機能を喪失したままライヴを続行するという判断の下(アンコールで復旧)、直後に披露した「BLACK AND BLUE」は、SUGIZOがとある映画にインスパイアされ、忘れてはならないインディー・ロックのアティテュードを胸に生み出された曲。満足の行かない環境下でも全身で、永遠の青春を謳歌するようにロックする5人とオーディエンスとの一体感は、完璧なパフォーマンスに勝るとも劣らない意味があった。
アンコールを待つ観客は、「きよしこの夜」を誰からともなく歌い始め、スマートフォンのライトをかざして“星空”を出現させた。幾度もウェーヴを繰り返すうちにメンバーが再登場。LUNA SEA初のクリスマスソングである「HOLY KNIGHT」「White X’mas」のワンコーラスをセッションしてからの「I for You」をロマンティックに届けた。MCのメンバー紹介では、「無事生還してくれた我らのヴォーカリスト」(初日)とSUGIZOから紹介を受けると、「やっぱり音楽が好きなので、もうちょっと生きたいなと思って」(初日)とRYUICHI。「そんなSUGIZOが一番病気で倒れる(笑)」とINORAN、そのツッコミを受けてJ、真矢も笑顔。バンドの良好な空気感を伝える場面だった。
ライヴを締め括るのは「WISH」が定番だが、初日はその後に「MOTHER」を披露して意表を突き、深い余韻を残した。また、2日目は「CROSS」の1曲目を飾る「LUCA」で締め括り、2020年2月にスタートするアルバムを引っ提げての全国ホールツアーへの助走とした。アルバムタイトルに絡め「人と人との“交わり”ですよ。誰一人欠けても今のLUNA SEAは無い」(2日目)と語った真矢。「メンバーが命に関わる病気を生還してきたことが、これだけバンドの絆を強くするんだな、と。俺たちは一人欠けても自分たちの人生を歩めないぐらい、すごく強い運命的な繋がりを持っているんだなと痛感した」(2日目)とSUGIZO。「どこまで行けるか分からない。だけどLUNA SEAはずっと登っていこうとするから」(2日目)とRYUICHI。INORANは「最後の曲「LUCA」から、俺らのまた新たな旅立ちが生まれた。お前ら、一緒に旅しようぜ!」と叫んだ。「この熱をツアーに連れていこうぜ! 今日来られなかった奴にもよろしく伝えてくれ!」と、いつもその場にいないファンへの言葉も忘れないJ。30周年にして、新たな扉を次々と果敢に明けていく稀代のロックバンドLUNA SEAは、彼らを愛するすべての人の想いを受け止めながら、更なる前進を続けていく。
取材・文:大前多恵
カメラマン:田辺佳子、橋本塁
セットリスト
12月21日
01. FALLOUT
02. G.
03. ROSIER
04. DESIRE
05. IN MY DREAM (WITH SHIVER)
06. 宇宙(そら)の詩(うた)~Higher and Higher~
07. BEYOND THE TIME ~メビウスの宇宙を越えて~ ※TM NETWORKカバー
08. 悲壮美
09. absorb
10. Dr.Solo & Bass Solo
11. Déjàvu
12. THE BEYOND
13. Hold You Down
14. STORM
15. SHINE
16. TONIGHT
[ENCORE]
01. HOLY KNIGHT
02. White Christmas 〜 I for You
03. BELIEVE
04. WISH
05. MOTHER
12月22日
01. 宇宙(そら)の詩(うた)~Higher and Higher~
02. The End of The Dream
03. ROSIER
04. DESIRE
05. IN MY DREAM (WITH SHIVER)
06. Sweetest Coma Again
07. BEYOND THE TIME ~メビウスの宇宙を越えて~ ※TM NETWORKカバー
08. 悲壮美
09. 闇火
10. Dr.Solo & Bass Solo
11. JESUS
12. THE BEYOND
13. BLACK AND BLUE
14. STORM
15. SHINE
16. BELIEVE
[ENCORE]
01. HOLY KNIGHT
02. White Christmas 〜 I for You
03. TONIGHT
04. WISH
05. LUCA