清春 10枚目のアルバム「JAPANESE MENU / DISTORTION 10」全曲リスニングパーティー開催、ジャケ写公開も

3月18日に10枚目、約2年ぶりとなるオリジナルアルバム「JAPANESE MENU / DISTORTION 10」をリリースする清春が、1月31日に東京・Veats SHIBUYAにてファン限定300人を集めてアルバムの全貌をいち早く届けるリスニングパーティーを開催した。

MCには「Rolling Stone」誌で歯に衣着せぬインタビューで話題のジョー横溝氏が担当。清春とは同い年ということで、同世代ならではの共通感覚を共有している二人の和気あいあいとした3時間を超えるトークライブとなった。

実は当日の10:30まで本日視聴する楽曲のレコーディングをしていたという清春。リスニングパーティーのため、まだアレンジが残っているものの90%の完成度というできたてほやほやの音源をこの日のために持ち込んだそうだ。

イベントでは冒頭から、話題は今回のアルバムのコンセプトアートワークの核をなすことになった「やまなみ工房」との出会いについて話が及ぶ。知的障害や精神疾患を抱えた通所者が快適な環境でずば抜けた芸術的感性に溢れたアート活動を継続できるようサポートするこの工房からライブのオファーを受けたことをきっかけに、工房を訪れた清春は、その芸術性に高く感銘を受けることとなり、コラボレーションが実現することになった話の流れから、この「やまなみ工房」のイラストによる本作のジャケ写が初公開となった。

初回限定盤はオリジナルのアートワークは割り箸を削って墨で書き上げたという力強いタッチの作品。実際の大きさは畳一畳のサイズに及ぶ大作だそうだ。女性が書き上げたという通常盤のアートワークは色彩豊かで暖かさがにじみでた対象的な作品となっている。今回のコラボレーションに当たり、知的障害者が抱える苦労とアウトサイダー・アートに関して勉強してきたという清春。実際に作品に触れ合うことによって、闇の中から光り輝く芸術性を見出した事に触れた話に会場はどんどん引き込まれていく。「障害者ということで敬遠することなく、すごいアートの世界があるっってことを知ってほしい。福祉ではなくアートをシェアしてほしい」と訴えた清春の言葉は会場にいる全員に突き刺さったことだろう。

そんな、ビジュアルコンセプトを語ったところで、本日のメインイベントとなるリスニングの頭を飾ったのは、Amazon Primeで独占先行放送中のアニメ「無限の住人」の主題歌「SURVIVE OF VISION」。これも完成したばかりのミュージックビデオとして初公開される。メキシコの街中で撮影されたミュージックビデオの色鮮やかな色彩空間の中に佇む清春。途中挿入される「やまなみ工房」の数々のイラストはその世界観に溶け込み、世界基準の世界観に目が奪われる。ジョー横溝氏も「全く違う時期に作成されたやまなみ工房の色彩と、メキシコの色彩が絶妙に溶け込み融合している」と、驚きを隠せない。昨年NYのライブの後、3日間のメキシコ滞在の中で、JAPANESE MENUの基本コンセプトが明確な形で形成されたことがこの映像には集約されているのではないだろうか。続く9曲はそんな世界観をより具現化するためリリックビデオの形式で紹介された。

10曲すべてを聴き終え、特にジョー横溝氏がお気に入りという「アウトサイダー」では、その”壁”というリリックに注目をすることで話題は膨らむ。仮タイトルでは「欲望」だった裏話とともに、この曲は清春自信が今まで歩いてきたことへの反逆、若い頃の反抗ではなく自分が生きてきたことへのアンチテーゼを綴っている。そのアンチテーゼは日本の音楽業界全体にまで話は及び、普通の世界ではなく壁の外で生きる清春の日本のインサイダー文化へのミュージシャン清春の持論が展開された。特に今作は自らの美学として抱いていた「化粧とロックンロール」を体現したアルバムだと初めて胸を張って言えると作品全体を早々に総括した言葉が、より説得力を増す。

また清春は今作の特徴として2曲を除きベースが一切入っていないことに言及。ロックという音楽スタイルでベースがないことは珍しいが、それにより清春の妖艶な歌声が鮮明に浮き上がってくる。ロックが本来いびつである姿を追求した結果、右に習えにはならない、今の年齢と自らの音楽スタイルを照らし合わせた答えがこのアルバムであり、引き算によって逆に攻撃性を増すサウンドに昇華することに成功している。ジョー横溝氏が形容した「言葉が強い」が今回のアルバムを最も端的に表しているかもしれない。

そして、話は日本の音楽ロックシーンついて話が及ぶ。「初めてロックを聞いたとき”こう生きたい！”と思った。ロックミュージシャンなんだけど大人にならなきゃって言う意見もあるけど、媚びた瞬間に表現者としては終わりなんだと思う。なんで日本のミュージシャンは丸いのか？丸いのを聴いて育ったらもう尖れることはない。」と痛烈に偽りだらけのロックが漕びることへ警鐘を鳴らす。

自信の音楽に対しても「”新しい曲が一番いい”と言われるのはすごく大変なこと。だけど、”前よりも絶対いいのを作ってやる“という念を込めている。年をとって姿勢を変えてはいけないし、人は感動する力がなくなったらだめだ。言いたいことを言わずに幸せになれるなんてことはないから、今日話したこと、音楽を伝えて、そしてまた他の人に伝わってみんなが幸せになれればいいな。」と力強い言葉でイベントを締めくくった。