のん主催のおうちで楽しめるおうちフェス「のんフェス2」4/30拡大再放送
2月29日、東京・EX THEATER ROPPONGIにて行われた女優・創作あーちすと「のん」が主宰する音楽イベント、NON KAIWA FES vol.2が、3月29日にMTVで放送された。
この日のライブは新型コロナウイルス感染拡大の影響で、異例の無観客状態での開催。客席にはこのライブを収録し後日、放送するMTVのカメラ11台のみ。参加者がおうちで安全に参加できるように、「のんおうちフェス」という形へと変え、MTVでの放送へと姿を変えた。
NON KAIWA FESは2017年12月に開催された「のん、KAIWA FESVol.1 ~音楽があれば会話ができる!~」に続く第2弾。「女の子の怒りはポジティブなパワーになる!」というテーマを掲げ4組の女性ボーカルのアーティストが4台のムービー・カメラの前で2時間20分超のパフォーマンスを繰り広げた。オープニング映像は、のんとonnacodomo、ひぐちけいのタッグで生まれた映像で、音楽をひぐちけいが担当、映像ディレクションをonnacodomoが担当、全体ディレクションとコールの声はのんが担当した。
自宅での音楽フェスを楽しんだ視聴者から早くも再放送の要望が多く上がっていたことを受け、NON KAIWA FES vol.2はMTVにて4月30日に、未公開映像を含めた拡大版の再放送が決定。
リーガルリリー
ステージには、この日のイベントのためにのんがデザインした恐竜キャラクターにちなみ、胸に3つのリボンをつけた巨大な恐竜オブジェ、イバリボンが鎮座。そこへ登場したのはリーガルリリーの3人。「the tokyo tower」「リッケンバッカー」を立て続けに演奏。まだバンドを始める前に見た閃光ライオットでのイベント会場で「のんさんがムスタング・ギターをジャ~ンと鳴らしていたのが、凄くカッコよかったことを覚えてます」と出会いの思い出を語ったボーカル&ギターのたかはしほのかは「呼んでくださって、まさに夢のようです!」と本当に嬉しそう。この無観客ライブについては「こうやって柔らかな対応をされ、いちばんやさしいライブになったと思います。50年後、ライブの形式はこうなっているかもしれませんね」と未来のライブ・スタイルも予測。
MCを挟み、後半はゆっくりとしたテンポで始まる「魔女」でスタート。触れると崩れてしまいそうな儚く切ないボーカルに、凄まじいまでの破壊力を持ったギターとドラムにベースが加わると、揺蕩うような空間が生まれる。この唯一無二の磁場の中、ラスト3曲を一気に駆けた。激しい演奏を終えると、たかはしほのかがオーディエンスのいない客席に向かって、小さくお辞儀をしてステージを降りた。
チリヌルヲワカ
2組目は、のんがリスペクトしてやまないGO!GO!7188のユウがメンバーのバンド、チリヌルヲワカ。場内暗転しSEが流れる中、メンバーが登場。真っ白なコスチュームに身を包んだユウの青いテレ・キャスターがかき鳴らされ、ライブがスタート。3ピースというミニマムな編成ながら、途轍もなくデカい音を弾き出し、間髪入れず次の「マシーン」を叩き込む。3曲めの「極楽浄土」では、ベース・リフから始まり、ユウのカッティングが被さる。ゾクゾクするほどカッコいいイントロだ。
MCでユウは「今日はほんとに貴重なイベントになりました。ここにいられて良かったです!」と無観客ライブへの思いを寄せ「TVの向こうのみなさんも最後まで楽しんでいってください」と呼びかけ、グルーヴ感溢れるギターリフで始まるチリヌルヲワカの鉄板ポップ・チューン「アヲアヲ」へ突入。エモーショナルなボーカルを会場いっぱいに響き渡せる。
この日のドラマーはサポート・メンバーではあるが、ズシンと響くドラムを打ち響かせ、地を這うように畝るイワイエイキチのベースと二人で鉄壁のリズム隊を構築。そこへユウの弾く硬質なギターが載っかり、三位一体となってソリッドな音を剥き出しにしてグイグイと迫ってくる。その迫力たるやTVのモニターの先にいるオーディエンスにも充分に届くはず。無観客ライブという特殊な環境の中、そんなハンディを吹き飛ばす圧巻のパフォーマンスを見せつけた。
阿部真央
「これを皆さんがご覧になっている時(3月29日放送予定)には、もう少し、みんながもっと自由にいろんなところに行けたらいいなと思ってます。まだまだエンタメが元気を与えてくれる部分はたくさんあると思うので、今日は私も頑張って歌を歌わせてもらいます!」とTVの前にオーディエンスに呼びかけた阿部真央は、「あぁ〜、みんなに会いたかったね!」と「ロンリー」を歌い始めた。
のんがラジオ番組で「17歳の唄」をオンエアしたことをきいて身近に感じたことが、のんとの出会いだという。「のんさんの透明感の中にある闘志みたいなものが、みんなを惹きつけてやまないのかなと思います」とのんの魅力
を語る。「17歳の唄」は、阿部が17歳の頃に、色々なものに対する不安とか不満を描いた曲だったと振り返り「大人になった今歌っても共感できる曲です」と、ふたりを繋ぐ縁となった同曲を歌う。
この日の阿部真央は真っ赤なボディのアコースティック・ギター1本を持って、たったひとりでステージに立った。凛としたその佇まいから紡ぎ出される歌詞は広い会場の隅々にまで響き渡る。その立ち居振る舞いは、フォーク・ソングの女王と呼ばれたアメリカの女性アーティスト、ジョーン・バエズを彷彿させるほどの神々しさだ。
「早くみんなが笑って一緒に歌えますように!」とカメラを通じて呼びかけ30分のひとり舞台を終えた。
のんシガレッツ
のんの「のんシガレッツ!!!!」の第1声を合図にバンドの演奏が始まり、照明が一斉に明るくなる。イエローを基調にした大きなヒラヒラとした両袖、ブルー系のショートパンツにキラキラ光る王冠を被り、お尻にはグリーンの尻尾(?!)。今回のフェスのキャラクター、恐竜イバリボンをベースにのん自らデザインしたオリジナル・コスチュームを纏ってのんがステージ中央に仁王立ち。ド派手なオープニングで登場したのは、トリを務めるのん率いるシガレッツの4人。「”女の子の怒りはポジティブなパワーになる!”のコンセプトにピッタリの曲。みんなで楽しく踊れる曲です!」と「プン・プン・プン(オコリンボ・リンボ)」に続く。1月に大阪で行われた忌野清志郎ナニワ・サリバン・ショーでも歌ったRCサクセションのカバー曲だ。ここで、のんのトレード・マークでもある真っ赤なテレキャスターを持って「さあいこう」になだれ込み、カメラの向こうにいるオーディエンスに向けて盛り上げていく。
無観客ライブという、ミュージシャンにとっては相当やりにくい状況ながらも「あ〜楽しいなぁ!」と呟き、フェスを開催できたことを心底、喜んでいる様子だ。ここでチリヌルヲワカのユウが表れ、「やまないガール」と「涙の味、苦い味」を一緒に演奏する。この2曲はアルバム「ベビーフェイス」でユウがのんに書き下ろした曲で、ステージで初共演が実現。それぞれが1番と2番の詞を歌い分け、間奏で向かい合ってギターを弾くふたりの姿は本当に楽しそうだ。
このフェスのテーマに相応しい”怒り”の曲が出来ました!と披露したのは、この日の為に書いた新曲「こっちを見てる」。激しいディストーション・ギターが響く中、監視された社会への憤り、今の時代の生き苦しさ、日常に起きている怒りをぶちまけるように歌い、続く「RUN!!!」でも爆走し本編を終えた。
アンコールではこの日出演したアーティストがステージに結集。無観客ライブをやり遂げたという達成感で、全員が晴れ晴れしい表情。和気あいあいとした様は女子会を見ているようで、その楽しさはモニター画面を通じても伝わることであろう。そしてオールラインナップのナンバーはのんのデビューカセットに収録されたサディスティック・ミカ・バンドの「タイムマシンにおねがい」。イントロのギターをのんが弾き、それぞれのバンド・メンバーが歌い継いでいく。間奏ではのん、たかはしほのか、ユウのテレキャスター3姉妹(?!)が次々にギター・ソロも披露。右手後方の巨大な恐竜イバリボンくんも、長い首をヘッドバンギングしてパフォーマンスに応えた。4組みのアーティストが2時間20分超に渡って熱い熱いパフォーマンスを繰り広げたNON KAIWA FES vol.2は、異例の無観客ライブの中、無事に終了した。
また、「のんおうちフェス~行ってきましたパック」として、のんフェスvol.2のチケット風アクリルキーホルダー、本フェスのキャラクターである「オコリボンちゃん」のステッカー、オリジナル缶バッジ、そしてのんフェスvol.2収録時に実際に使われた銀テープ(のんからの直筆メッセージプリント入り!)のセットをfaniconにて販売中。4月7日までの受注生産となる。
Text by 石角隆行