ボブ・ディラン、最新曲「偽預言者」中川五郎による全訳公開
ボブ・ディランが、5月8日に発表された新曲「偽預言者(False Prophet)」の歌詞の日本語訳が完成した。
この歌は同時に発表された最新アルバム「ラフ&ロウディ・ウェイズ」のDisc1の2曲目に収録される予定。
タイトル「偽預言者」の出典は定かではないが、マタイによる福音書7章15-20節に、その記述が登場する。配信と共に公開されたジャケットは小脇に贈り物を抱え盛装したドクロが片方の手に注射器、背景には首を吊った男が影として描かれている。
この不気味なジャケットをビジュアルにして、ディランは何を歌おうとしているのだろう。中川五郎による翻訳を基に味わおう。
「偽預言者」
終わらない日がまた一日
出航する船がまた一隻
怒り、悲痛、そして疑念の日がまた一日
どうやってそうなったのかわたしはわかっている
どうやって始まったのかわたしはこの目で見た
世界に向かってわたしが心を開いたら世界がわたしの中に入って来たんだハロー、メリー・ルー
ハロー、ミス・パール
黄泉の国からやって来た足の速いわたしの案内人たちよ
どんな空の星もあなたたちより眩しく輝いてはいない
あなたたち女性は本気だ そしてこのわたしだってわたしは反逆の敵
闘争の敵
生きた形跡のない無意味な人生の敵なんだ
わたしは偽物の預言者なんかじゃない
わたしは自分が知っていることを知っているだけ
孤独な人間が行けるところにしかわたしは行かないわたしは同輩の中で一番
誰にも負けない
最上の人間の最後の一人
ほかの者たちはみんな葬り去ってしまえばいい
全財産と一緒に彼らをみんな裸のまま埋めてしまえ
6フィートの深さに埋めて魂よ安らかなれと祈るんだいったい何をじっと見つめているんだ
見るものなんて何もないよ
ひんやりとしたそよ風がわたしのまわりで吹いているだけ
庭園の中を散歩に出かけよう
とても広くてどこまで行ってもきりがない
わたしたちは泉のそばの日陰で座れるよ聖杯を追い求めて
わたしは世界中を旅して回ったんだ
わたしはいくつもの愛の歌を歌い
わたしはいくつもの裏切りの歌を歌う
何を飲もうがどうでもいい
何を食べようがどうでもいい
わたしは裸足で歩いていくつもの剣の山に登ったんだ愛しい人よ、あなたはわたしのことをわかっちゃいない
どんな人間なのか考えてみようとすら一度もしなかった
見てのとおり幽霊のようなつかみどころのない人間でしかないんだよ
わたしは偽物の預言者なんかじゃない
わたしは自分が言うべきことを言っただけ
わたしがここにいるのは誰かの分別とやらに復讐するがためだけ手を差し出してごらん
掴むものなんて何もないよ
口を開けてごらん
その口の中を金でいっぱいにしてあげるから
ああ、この哀れな悪魔め、そうしたければ見上げるがいい
丘の上にあるのは神の都だ久しぶりだね
新たな出会いと古いものにお別れ
あなたはこの土地を支配した
でもそれならわたしだって同じこと
この年老いても血気盛んな頑固者め
あなたの考え方は毒されてしまっている
あなたを束縛という名の伴侶と結婚させよう愛しい人よ、わかっているよね
わたしがどんな人生を生きているのか
お互いに微笑みを交わせば、譲り合えるものがあるんだ
わたしは偽物の預言者なんかじゃない
わたしは誰の花嫁でもない
生まれた時のことなんか覚えちゃいない
いつ死んだのかも忘れてしまった翻訳:中川五郎
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