広告・取材掲載

スカパラ、SKY-HI、大橋トリオら総勢24組が出演したオンライン音楽フェス「LIVE HUMAN 2020」ライブレポート到着

アーティスト

東京スカパラダイスオーケストラ
東京スカパラダイスオーケストラ

「アーティストとオーディエンスがオンラインでつながる高音質高画質の音楽フェスティバル」として、6月20日と21日の2日間にわたりABEMAで世界同時配信されたオンライン音楽フェス「LIVE HUMAN 2020」。「“イマ”をさらけ出す」というテーマのもと、新型コロナウィルスの影響で夏フェスをはじめライブイベントの中止が相次ぐなか「今伝えたいこと」「今できること」を届けるべく、熱演が繰り広げられた。出演したのはさまざまなジャンル・スタイルのアーティス総勢24組。自分の好きなアーティストはもちろん、それ以外のアーティストとの出逢いも体験することができる、オンラインではあるものの、まさにフェスの醍醐味を満喫できる2日間だった。

24組のアーティストはそれぞれの場所からそれぞれの形でパフォーマンスを配信。思うようにライブができない現状、そしてこの自粛期間中に高まっただろう音楽への思いを爆発させるようなパフォーマンスが続出した。そのいくつかを振り返ってみよう。

1日目に登場したSNSで話題のシンガーソングライター瑛人はアコースティックギターのみのミニマムなセットで彼にとって最初のヒットとなった“香水”と“HIPHOPは歌えない”を披露。よくよく聴けば切ない心情や自身のプライドを刻み込んだ歌詞を、スツールに腰掛けながら終始穏やかな笑顔を浮かべながら歌う様子が印象的だった。わずか2曲という短いライブだったが、その誠実でストレートなキャラクターはしっかり伝わっただろう。

続いて登場した、宮﨑を拠点に活動する18歳のシンガーソングライターみゆなはギターを掻き鳴らしながらダークに歌う“ユラレル”からライブをスタート。堂々としたパフォーマンスで、この日のライブでは配信企画でファンと一緒に作った新曲も初披露。楽曲ごとに様々な顔を見せながらライブは展開。画面越しでも心を鷲掴みにするその歌の力はとてつもなかった。

大塚 愛はたったひとりでのピアノの弾き語りで“HEART”“クムリウタ”“金魚花火”といった名曲を演奏。“日々、生きていれば”の切々としたメロディ、そして曲が書けなくなった時期を乗り越えて最初に作ったという未発表曲の決然とした響きには、前日の雨が嘘のように晴れたこの日の東京の天気を引き合いに出しながら明日への希望を噛みしめるように語っていた彼女の、今この状況に対するメッセージがはっきりと込められていた。

意外なDJセットで登場したのはビッケブランカ。自粛期間中も曲を作り続け、それをあるべき姿で届けるためにこのスタイルを選んだという。そうして披露された新曲“Little Summer”はどこかノスタルジックなメロディが胸を打つミディアムチューンだった。ライブ終了後には「何もできないような状況のなかで何かやっていくぞ、という心意気と僕も一致したような心持ちで、すごく気持ちよくやらせてもらった」とコメント。まさに「今」ならではの新しい姿への手応えを語っていた。

そんな1日目のトリを努めたのは大橋トリオ。レコーディングさながらのセッティングが施されたスタジオで新曲“LOTUS”から始まったライブは、テレワークでセッションした動画も話題となっていた“EMERALD”、オーディエンスに手拍子を促してセッションらしい一体感を生み出した“PARODY”といった楽曲をどこまでも楽しく、しかも直前までバタバタだったといいなが手練揃いのバンドらしく極上グルーヴとコンビネーションで繰り出していくものだった。まさに音で会話するような、生のセッションのよさを痛感するパフォーマンスが鮮やかだった。

明けて2日目、トップバッターとして登場したのはSIRUP。おなじみのバンドを従えて“Need You Bad”からキックオフすると、「バンドでやるの楽しいなあ」とポツリ。身体を大きく動かしながら歌うSIRUPの表情はその言葉どおりにとても気持ちよさそうだ。“SWIM”や“Do Well”といった代表曲を経てメンバーと一緒にミュージックビデオを撮影した“Your Love”を初めてバンドで披露、最後には今にフィットするメッセージ性を帯びた“One Day”の「そうOne Day 僕らも/自由に 飛べる日が来る」というフレーズを力強く歌い上げた。

そしてさまざまなジャンルのアーティストが集結するなか、ロックバンドとして気を吐いたのがtricotだ。“おもてなし”や“あふれる”でギリギリの駆け引きが生んでいくスリルをこれでもかと味合わせる。終演後のインタビューで「今一番伝えたいことは?」という質問に「お客さんの声がないとやっている意味を半分感じられない。きっとまた一緒にやれる日が来るから安心してください」と語っていた中嶋イッキュウ。そんな所でもライブバンドとしての気概を覗かせた。

「私と濃厚接触してください」という彼女らしい口上から幕を開けた大森靖子のライブは 1曲目の“君に届くな”から鬼気迫る熱演。“kekkon”ではまるで愛と憎しみが等価であるということを証明するように歌い、真っ赤な照明の中で振り絞るようにして歌われた“マジックミラー”ではボロボロの自己像をかき集めて闘う覚悟を示す。どんな時代でも、いやこんな時代だからこそ、自分の心臓を握って相手の胸の奥に無理やりねじ込んでくるような大森靖子の歌は一層鈍い輝きを放っていた。

ライブ後にMCのあっこゴリラも「パンチラインだらけ!」と絶賛していたSKY-HIのパフォーマンス。1曲目として選ばれた “Chit-Chit-Chat”から自らサンプラーをプレイするなど、さらに幅の広がったパフォーマンスを披露。「遠隔でセッションしようぜ」という言葉とともに披露された自粛中に作られた楽曲“#Homesession”などを経て、現状に触れながら「唯一にして絶対の正解だったり正義っていうのは、どういう瞬間においても楽しむこと」という言葉から鳴らした“I Think, I Sing, I Say”では原曲のメッセージにフリースタイルで今の気持ちを重ねていった。

平井 大のライブは“Life is Beautiful”からスタート。グリーンや花、キャンドル、スタンドライトがあしらわれたまるでプライベートルームのような雰囲気のなか、“折り花 2020”の祈りのようなエモーショナルな響き、不安や緊張が募る日々を生きる今にそっと手を差し出すような“Slow & Easy”などのレイドバックした歌が、あたたかな手触りとともに伝わってきた。さらに新曲“僕が君にできること”もこのLIVE HUMANで初披露。インタビューでも終始リラックスした雰囲気で穏やかに語っていた平井 大。その自然体の姿勢自体がひとつのメッセージのようだった。

そしていよいよ最後のアーティスト。登場したのは東京スカパラダイスオーケストラだ。“La Noche”でゴージャスにスタートすると、大森はじめがアジテートしまくる“5 days of TEQUILA”で早くもテンションはピークに。谷中敦は「音楽ってやっぱパラダイスなんだなって思います」と語り「戦うように楽しんでくれよ!」と決め台詞。「次、みんなで出会えるときに、最高の春が来たって言えるように」という茂木欣一の思いのこもったMCからライブ初披露の3月に配信リリースされた楽曲“倒れないドミノ”、沖祐市の美しいピアノから始まった“水琴窟 -SUIKINKUTSU-”……すべての瞬間がエネルギッシュで熱かった。2日間のフェスのラストナンバーとなったのは“¡Dale Dale! 〜ダレ・ダレ!〜”。すべての人を鼓舞し、音楽のパワーを見せつけるようなフィナーレだった。

新曲や未発表曲など今このときだからこそのパフォーマンスを盛り込んだライブパフォーマンスはもちろん、リアルタイムで届けられるディープなインタビュー、オーディエンスのツイートやABEMA上のコメントを介してのユーザーとのコミュニケーションなど、オンラインならではのコンテンもふんだんに盛り込まれ、ライブ本来の興奮とオンラインフェスだからこその楽しみをかけ合わせたようなフェスティバルとなった「LIVE HUMAN 2020」。今は昨年までのようにフェスを思い切り楽しむことはできないが、フェスの可能性を一気に広げるようなこの実験的なオンラインフェスが、そのストレスを吹き飛ばしてくれるようだった。

7月5日23:58迄アーカイブで見ることができるので、2020年の新たなフェスを体感してもらいたい。

Text by 小川智宏