ウルフルズ、初のライブ有料生配信「ウルフルズ ライブ2020 ~オンラインじゃない?~」リポート到着
ウルフルズ史上初となるオンラインライブの有料生配信「ウルフルズ ライブ2020 ~オンラインじゃない?~」が、7月17日に開催された。
動画配信サービス「GYAO!」で生配信されたこの日のライブは無観客でのパフォーマンスとなったが、ウルフルズらしい熱い内容で開催され、大盛況のうちに幕を閉じた。
なお、ライブ映像は7月27日まで見逃し配信が可能となっている。
ライブリポート
新型コロナウイルス感染症流行によりライブを中断していたウルフルズが、7月17日に有料生配信ライブ「ウルフルズ ライブ2020 ~オンラインじゃない?~」を開催した。
19時半から開場という形でサイトに入る事が出来て、20時開演でスタート。大体の配信ライブは、この30分、ライブのポスタービジュアルの様な静止画が映っているだけ。どうしても味気ないのは仕方ないと思っていたが、この日は違った。「サンシャインじゃない?」のMVに登場する役柄に扮したトータス松本(Vo.Gt)、ジョンB(Ba)、サンコンJr.(Dr)による薪割り、コーヒー、編み物にまつわるMVスピンオフ映像と実際のMVからの新グッズを紹介する外国人3人による通販番組(吹き替え声優はメンバー3人)という3種類の映像が流れる事で、全く飽きる事なく待ち時間を楽しめた。こんな御時世だからこそ、どうしても生感というか、人肌感というか、何かしら温もりを求めてしまう中、ウルフルズは配信ではなく「配心」と謳うだけあって、初っ端からハートフルな心遣いを感じさせてくれる。諸注意を伝える影アナでは、ウルフルズの所属事務所「タイスケ」社長の森本泰輔氏が声で登場するユーモアも忘れない。
20時ジャスト。サンコンの顔がアップで映り、「ワンツースリーフォー!」のカウントから「ええねん」へ。メンバー3人共に笑顔な事が本当に嬉しいし、トータスに「心配せんで ええねん 僕を見てれば ええねん それでええねん」と歌われると、全肯定された気分になって、心の底から安心する。そのまま「ガッツだぜ!!」へいくが、前日のリハ動画からわかってはいたものの、3人のみでの演奏。ギター、鍵盤というサポートメンバーを加えての重厚な演奏も本当にかっこいいが、個人的には3人のみで笑顔ながらも、がむしゃらに弾く(叩く)姿が堪らなく好きだ。まさしく、リズムをとめるな…。続くは、まさに、その姿を歌で体現した「リズムをとめるな」。歌は不思議なもので、その時その時で感じる意味合いが変わっていく。4ヶ月も逢う事が出来なかった今の3人に「リズムをとめるな 歌をやめるな」と演奏されて歌われたら、もう涙しか出ない…。3人の表情も、さっきまでの笑顔と違い、シリアスな表情で、よりグッと力が入った様に見えた。
いつもなら観客との「金の切れ目は! 縁の切れ目!」というコール&レスポンスで盛り上がる「借金大王」。トータスがバッチリなカメラ目線で問いかけてくれるが、もちろん画面越しからではレスポンスが届かない。それを「シーンとしやがって!」と笑い飛ばすトータスに、こちらも思わず笑ってしまった。観客がいなかったアマチュアの頃を思い出し、汗をかくトータスだが、「このズレがオンラインの課題じゃない?!」と余裕を見せながら、3月からダスキンのCMで流れている「サンシャインじゃない?」へ。「それでいいんじゃないしんどいを楽しもう」という歌詞からは、曲調は違うが、或る意味「ええねん」にも通じる全肯定さを感じた。この日、ジョンBがMCで放ち、流行語&キーワードとなったオキシトシン。簡単に言うと幸せホルモンを表す言葉。この日、確かに3人からは異常なくらい分泌されていた。それによって、幸せな気分になり、自分が全肯定されていると想えていたのかも知れない。
「ガッツだぜ!!」のカップリングであり、切なくてムーディーなラブソング「いいたい事はそれだけ」を挟み歌われた「笑えれば」。ここでも、オキシトシンを充分に感じられた。「とにかく笑えれば 最後に笑えれば」と寄り添うように歌われるナンバー。歌い終わり、トータスがつぶやくように「う~ん…、『笑えれば』ありがたいね。何やかんや言うても、人気ありますよ、ありがたい」と言っていた。全てが上手くいかずジタバタする答えのない毎日を、ほとんどの人が過ごしている。だからこそ、ウルフルズの歌に救われて、例え、その一瞬だけでも幸せを感じる事が出来るのだ。そして、またウルフルズの歌を聴ける日まで、毎日を頑張る事が出来る。
トータスの大サビ、ジョンBのリードボーカル、サンコンのヴォコーダーボイスと3人それぞれの声が楽しめる「センチメンタルフィーバー~あなたが好きだから~」の後は、現時点での最新曲「タタカエブリバディ」へ。メンバーが逢えなかった時期にリモートレコーディングで完成したナンバーであり、コロナが怖くて涙が出る日々しか過ごせなかった日本をリアルに切り取ったナンバー。根拠無き上辺だけの応援歌ではなく、ちゃんと日々の悲しさを歌っている。なので、「タタカエブリバディ」と歌われても、トゥーマッチな嫌な圧迫を感じる事はない。それこそ、オキシトシンが分泌されていて、その一瞬だけでも怖い日々を忘れて、気持ちを落ち着かせる事が出来る。後、特筆すべきは、3人で合わせた時間が絶対的に少なかったであろう楽曲にも関わらず、この日、一番の三位一体感を感じた事。逢いたくても逢えなかった時期に作られたからこそ、尋常じゃない魂が込められていた。
ラストナンバーは「バンザイ~好きでよかった~」。その昔、ジョンBが「ウルフルズってのは、松本くんのシャウト一発。それ以上でも以下でもない」と評していたが、本当に、それ以上でも以下でもない「THE ウルフルズ」な素晴らしすぎる歌。ド頭の「イェーイ」一発で完全に持っていかれる…。この興奮を生で味わえるに越した事はないが、そうは言っていられない御時世。そして、どうやらオンラインライブは、今回限りではなく、これからも続ける模様だ。次の”オキシトシン配心”まで、僕らも生きてくしかない。
文・鈴木淳史