清春、盟友K-A-Zと競演のスタジオライブ&レコーディング「『THE TEST』THIRD EYES TRIAL」のレポート到着
7月28日、29日に開催された清春による3度目の「THE TEST」。THIRD EYES TRIALと銘打たれた今回のスタジオライヴレコーディングは、ファンならばご存知の通りsadsの3rdアルバム「The Rose God Gave Me」収録の「THIRD EYES TRIAL」を公演名に掲げ、ギタリストK-A-Zがゲストで参加することが事前に伝えられた。
「THE TEST」は約2時間のライヴ配信でありながら、その完璧に作り込まれた世界観ゆえ長編のMVのようでもあり、同時にその音源をレコーディングするという音楽表現のあらゆる要素を盛り込んだ、清春の妥協なき美学の全てを浴びることができる場所だ。そこに今回は盟友K-A-Zが加わるということで、すでに高まっていた期待はさらに膨らんだ。この中では、29日の本公演2日目のパフォーマンスについて記録したいと思う。
会場には多くの白い小花でアレンジされた装飾、ハの字に置かれた白いフレームの2枚の大きな鏡と、少し離れたところにも大きな鏡が1枚、その前にはすでに白いシェクターギターが鎮座。ブラウンのガウンを羽織った清春が入り2枚の鏡の前に立つと、バックショットがそれぞれの鏡にうつる。正面から捉えた歌う姿も、横顔や背中、後ろ髪のニュアンスまで同時に見えることで人物が平面でなく立体的に、つまり肉体をより実存的に感じさせる。リアルなライヴと配信ライヴの違いを担保するものとして、2枚の鏡がその機能を果たしている。
視覚的なイメージを浮かび上がらせるためにまずこの巧みなセットに触れたが、1曲目「たったひとり」の第一声から、その場の空気を支配してしまう歌の表現力には思わず息をのんだ。歌うたびに増していく全身からの凄まじいパワーとオーラに圧倒される。
ガウンからビビットなピンクのジャケットへ、そしてその下のシャツへと着衣が薄くなると、その全身を使って声を鳴らしていることが伝わり、放たれるエネルギーはまるでアスリートのようだ。
ギターはこの日も中村佳嗣と大橋英之で、歌に寄り添う職人としてその時々のフィーリングをとらえ、共にグルーヴを増幅させていく。
前半にあったいくつものハイライトの中で、「sad love」からインターバル前の「loved」の流れはまた極上だった。「どうか心まで届いて」の言葉通り、高ぶる熱をそのままに出し切るように歌うリアルな感触は、モニターを超えてこちらの胸を鷲掴みにする。
5分のインターバルを挟んだ後半からK-A-Zが参加し、続けてプレイされたのはsadsの楽曲で灼熱のエモーションがそのまま加速していく。とはいえ、ベース、ドラムレスの今回はsadsの持つヘヴィさとは一味違う味わいだ。
ラウドで繊細、かつグラマラスなムードを纏うK-A-Zのギターの音色には様々な表情があり雄弁で、そのサウンドの幅広さに度々圧倒される。これだけ手練れのストーリーテラーが2人揃ったアンサンブルはやはり特別で、何度もゾクっとする瞬間があったが、終盤の「falling down」の熱量、当初予定されていなかった「May I Stay」の情感こもった語り口、そこから爆発するような「Rescue」のダイナミズムには吸い込まれるように見惚れた。
徐々にK-A-Zに近づいていき膝をついて歌う清春から溢れた笑みから、この日のパフォーマンスへの満足度がうかがえた。クライマックス近くでK-A-Zの首に絡みつき、すでに音の中では溶けるように同化していた2人がフィジカル的にも重なったり、かぶっていたハットをK-A-Zに乗せるといった精神的な距離が実際の距離にも表れていたのも印象的だった。
ただ戯れているわけではなく緊張感もあり、互いの信頼が、他には替えがたい関係性がドキュメンタリーとしてしっかり映り込んでいた。ずいぶん贅沢な時間だったが、欲を言えばまだまだ観ていたかった。
卓越した職人としての緻密さと、高ぶる感情をあらわにするリアルな感触を共存させ、映像としての出来まで考慮しながら完璧に作り上げていくこの「THE TEST」、そして表現者清春の凄まじさを目の当たりにして、とまらない深化をこの先も追っていかなければと改めて感じた。
ライヴ後のインタビューで、本領発揮するなら4時間くらいの長時間のライヴがやりたいと語っていたが、次はどんな景色を見せてくれるのか。こちらも全身で受け止めたい。
Text by 奥浜レイラ