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上原ひろみ、ブルーノート東京でロングラン公演「SAVE LIVE MUSIC」が開幕 ライヴ・レポート公開

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Photo by Takuo Sato

8月25日、世界を舞台に活躍するピアニストの上原ひろみが、南青山のジャズクラブ、東京・ブルーノート東京にて、「SAVE LIVE MUSIC」と題するロングラン公演(16日間32公演)をスタートさせた。

4種のプログラムで構成する完全ソロ・ピアノ公演。幕開けを飾ったのは、昨年リリースの最新ソロ・ピアノ・アルバム「Spectrum」からの楽曲で構成されるステージだが、初日の1stショウを目撃した音楽評論家・原田和典氏のライヴ・レポートが到着した。

ライヴ・レポート

地球規模の活動を続けるピアニスト、上原ひろみの「ブルーノート東京」ロングラン公演“SAVE LIVE MUSIC”がついに始まりました。

29日までは最新傑作「Spectrum」の世界に踏み込む「Spectrum」、9月4日から7日にかけては2009年発表の初ソロ・ピアノ・アルバム「PLACE TO BE」収録楽曲にスポットを当てる「PLACE TO BE」、9月10日と11日は全曲バラード・ナンバーによる「BALLADS」、9月12日から16日にかけては2003年のプロ・デビューから現在に至るキャリアを総括する「Since 2003」というステージが、それぞれ開催される予定です。

ソロ・ピアノによる4種類のプログラムを16日間にわたって(計32セット!)、しかも同一会場で行なうアイデアは大胆不敵。ライヴの場を何よりも重視し、世界のオーディエンスを熱狂させてきた上原ひろみが、いま発信する渾身のメッセージがこのロングラン公演であると断言していいでしょう。収益の一部は「The Jazz Foundation of America Covid-19 Musicians Emergency Fund」に寄付され、また、会場以外でも楽しめるように各プログラム各ワン・セットの配信も行なわれます(8/28、9/7、9/11、9/16の2ndショウ)。

ぼくは初日(8月25日)の1stショウに足を運びましたが、盛大な拍手を受けて上原ひろみが早足気味にステージにあがり、オープニング・ナンバーからいきなり場内の熱気を高めに高め、最後の和音を立ち上がって鳴らすころには、なんとも名状しがたいエモーションに満たされていました。“演者と同じ場所で、同じ時間の経過を体験しながらひとときを過ごすこと”、“目の前で繰り広げられる生演奏を賞味すること”、そして“互いに生きていること”って、こんなにぜいたくで尊いのです。

上原のプレイは、ピアノ/フォルテ、メロディアス/パーカッシヴ、抒情/勇壮のヴァリエーションを無限に持ち合わせた、とてつもなく懐の広いもの。オクターヴ奏法、ブロック・コード、ブギウギ風アプローチ、ストライド・スタイルなども取り入れながらのパフォーマンスは、ジャズ・ピアノのカレイドスコープと呼びたくなるほど多彩です。どの曲もアルバム収録テイクからいっそう深化・発展・重層化して、圧倒的というしかない展開になっていて、演奏する側の喜びと聴く側の喜びが自然にとけあっていた・・・そう表現したくなるライヴでした。

もちろん演者以外はマスク必須、ソーシャルディスタンス遵守ですが、心の中では皆、大きな歓声をあげ、快演を称えていたに違いありません。今後、ステージがどこまで白熱し、磨き上げられていくのか、聴いているうちにさらに楽しみになりました。

また、このライヴ・シリーズでは、上原ひろみとブルーノート東京シェフがコラボレートしたディナーボックスのテイクアウト・プラン(4プログラムごとのスペシャル・メニュー)も販売されています。音楽と食事が人間に与えるエネルギーは無限です。必ず戻ってくるはずの日常に向けて、全身で“元気”をチャージしようではありませんか。

(文:原田和典)

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