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クリープハイプ『RUSH BALL 2020』ライブレポート ーーこんな時だからこそクリープハイプ

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クリープハイプ

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『RUSH BALL 2020』クリープハイプ

「クリープハイプです」。そう尾崎世界観は言ってから、少しためた。そして、「こんな時だから、どうしようかと迷ったんですけど、やっぱりやります」と演奏を始める。最初のMCから大きく掴んでくるイメージがあるだけに、この静かな始まりには静かに掴まれた。こんな時だからこそ、色々と鬱屈し悶々とした想いがあっただろうに、そこを敢えて見せない姿はかっこよすぎて痺れる。

クリープハイプ

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1曲目「HE IS MINE」の大きな見せ場である尾崎の<今度会ったら>に対しての観客の<セックスしよう>のくだり。直前で演奏を止め、「こんな時だからこそ、ひとりでするのも悪くないなと思っています。この後、無音にして家帰ったら思い出して、ひとりでしてくれませんか? ひとりにはひとりの気持ち良さありますから、いけますか?」と話す。大きな声で今「セックスしよう!」と言えない悲しさに浸らせるのではなく、次に大きな声で「セックスしよう!」と言える喜びを持たせる。なんて、この人は粋なんだろう。それにしても<セックスしよう>という本来卑猥な言葉で、ここまで考えさせられるとは。

クリープハイプ

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ベースの長谷川カオナシがメインボーカルの「火まつり」では、毎回「炎上の歌です」という説明が入るが、この日のクリープハイプは真っ赤な炎というより、内なる強き思いが宿る青い炎だった。<夏のせい>という歌詞が印象的な「ラブホテル」でも、曲間で長めに沈黙した後に、「色んな不自由な事があると思いますし、夏だけじゃ背負いきれなくなってますが、頑張って背負ってもらいましょ」とつぶやいたりと至って冷静であった。

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「こいつら、これやるだろうと予想がつく曲です。でも、予想がつかない世の中……。普段のフェスはお客さんを裏切る事を考えてたけど、今日はお客さんの思い通りにしました。早く今まで通りになって、また、お客さんを裏切りたいです」とラストナンバー「栞」へ。なんて、この人は憎い事を言うんだろう……。そんな事を思って、何だか泣けてきた人は、僕だけじゃ無かったはず。普段、天の邪鬼な人に突然優しくされちゃうと、そのギャップで、より好きになってしまう。いや、もう、本当に、こんな時だからこそクリープハイプを聴けて良かったですよ……。

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取材・文=鈴木淳史 撮影=瀧本JON…行秀

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