SUPER BEAVER 撮影=青木カズロー
『SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP~ラクダビルディング&ビルディング~』2020.10.3(SAT)東京・日比谷野外大音楽堂
SUPER BEAVERが、『SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP~ラクダビルディング&ビルディング~』を、10月3日(土)に東京・日比谷野外大音楽堂にて開催した。
今年の7月には、無観客ライブ&ドキュメント映像『SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP~LIVE document~』を配信。「ライブの代わり」はないからこそ、1つの作品としての映像配信にこだわった彼らだったが、この日は政府指導のガイドラインにのっとり、客席にはしっかりと観客同士の距離が確保されながら、同時に生配信も行うハイブリッドな形態で実施。バンドにとっては2月以来の「有観客」ライブとなったが、ライブにそんな枕言葉を付けることにこの1年の紆余曲折を感じつつも、SUPER BEAVERはついに「聖地」に戻ってきたのだ。
開演が近付くにつれ配信では場内の様子も映し出され、否が応にも高ぶる空気。そして、おなじみのCap’n Jazzの「TOKYO」のSEもなく、1人ずつ静かなステージへと現れたメンバーに惜しみない拍手が送られる。4人はもちろんそうだろうが、何だか見ているこちらまで、8カ月ぶりとなるSUPER BEAVERの現場に緊張の面持ちに。そんな空気を貫いたオープニングナンバーは、まさかの「ありがとう」。いつもならライブの後半で重要な役割を占めるこの曲が、一発目から演奏されるのは相当レアなシーンではなかろうか。そして、何の助走もなくいきなり鳥肌が止まらない幕開けに、SUPER BEAVERの楽曲の強さを身体と心で思い知るこの幸福。ずっとずっと、この感覚を待っていた。そんな心情を共有できていることを、会場にいるオーディエンスの表情から、配信のチャットを賑わせるコメントの数々からも確信する。SUPER BEAVERは、時に自らの退路を断つかのようにその生き様を言葉にしてきたバンドだが、この瞬間だけは、言葉にせずとも伝わる想いがあることを、4人も、そしてそれを見ている全ての人も感じたことだろう。ちゃんと、届いてる。
SUPER BEAVER 撮影=青木カズロー
「お久しぶりでございます! うまくいかないことも、やろうと思っていたことがかなわなかったことも、たくさん経験してきた。分かってる、分かってるぜ! ただ、俺たちから1つ言えることがあるとすれば、あなたたちと一緒に生きてる今が、俺たちの「ハイライト」!」(Vo・渋谷龍太)
6月のリリースから約4カ月、散々耳にしてきた「ハイライト」が、今初めてオーディエンスの目の前で披露されている。SUPER BEAVERの楽曲はライブをもって進化することを、人と交わることによってそのゲージが最大限へと向かうことを改めて感じさせられる。
「あなたの前で歌うのは、8カ月ぶりです。今日は画面の向こうにも届くように、しっかり歌いたいと思います。もちろん、この場所にいてくれるあなたには最高の時間と、最高の歌と、最高の気持ちと、全て届ける気でいますので、ついてきてください! 声が出せないなら、声以外の方法で。バカな俺たちにも分かるように、気持ちをぶつけてくれますか? あなたがいなけりゃ意味がない、これが俺たちの「証明」」(渋谷)
SUPER BEAVER 撮影=青木カズロー
そんな言葉に呼応するように、野音に上がる幾つもの手とチャットを埋め尽くすたくさんの手(の絵文字)を受けて、「あなたの前で歌えるこの時間、あと何分何秒続くのか? あと何日何カ月何年続くか分からないけど、持ってる時間は全て本気でやる!」と始まったのは「閃光」。藤原“32才”広明(Dr)のタイトなドラミングも、上杉研太(Ba)のワイルドなベースラインも、柳沢亮太(Gt)のエッジィなギターリフも、その音の粒立ちまでがいつも以上にクリアに届く配信用のミックスがまた強烈で、「しっかり届いてますんで、不安に思わずガンガンぶつけてきてくださいね。オンドラムス、藤原“32才”広明!」と渋谷がブチ上げれば、藤原が叩き出したビートに上杉、柳沢が合流し、壮絶なうねりを野音のステージに作り出す……!
「3年前にやった日比谷野外大音楽堂とは景色も同じ、立地も同じ。全てが同じはずなのに、全く同じだと思えないのは、あなたという人間がここまで見にきてくれたからだと思ってます」(渋谷)
どれだけライブを重ねようと、何度も繰り返し演奏しようと、同じ夜は1つとして生まれない。8カ月ぶりのライブは、そりゃ特別だ。でもその特別は、年間100本を超えるライブをしていたあの頃だってそうだったはずだと、自らの五感に呼び起こすような渋谷の声明と共に、「361°」が心の奥底にまで沁み渡る。今やどれもが代表曲に感じるセットリストに、4人の積み上げてきた時間がにじみ出る。何度でも立ち上がってきたSUPER BEAVERの楽曲が、アフターコロナの新たなスタート地点と言える野音のステージで、問答無用に突き刺さる。
SUPER BEAVER 撮影=青木カズロー
ここで、静寂と鈴虫の声が心地よいBGMとなってクールダウンさせる中、渋谷がメンバーの声を拾っていく。まずは「いや~すごいですね……」と久しぶりの有観客ライブが作り出す景色に圧倒されながら、「我々もライブをするのが久々だし、今回はそれぞれの場所で見てくれてる方も、いろいろ考えた末にここに来てくれた方も、1人1人の選択が全部正しいと思ってるので、本当に嬉しいです」とは柳沢。続いては、「虫が鳴いてるのに、何で人間は鳴いちゃ(=声を出しちゃ)ダメなんですかね?(笑) 久々に帰ってきた感がありますね……幸せです、ありがとう!」と上杉。そして、「えっと……藤……藤?」(渋谷)、「藤原だよ! いつ覚えるんだよ!!」(藤原)という最近定番のこのやりとり、内心待ってた人もいたのでは?(笑)(筆者もその1人)
「ホントに楽しいし、気持ちいいです。こんな状況だけど少しでも楽しいことを、これからもやっていくんでよろしくお願いします!」(藤原)
「久々にオンステージしてみて、いいメンバーといいスタッフといいチームと音楽ができてるなと、心から思ってます。改めて配信をご覧のあなたも(「見えてる?」とカメラを探し手を振る)、そして、今日この場所に足を運んでくれたあなたも、めちゃくちゃ感謝してます、どうもありがとうございます! この8カ月、いろんなことを考えて。自分が何者なのか、俺はいったい何のためにいるのか。人の前で歌えなくて、1対1で対峙して目を見て話ができないってどうなのと。どんなふうに活動するのが正解で、何をするのが間違いなのかも分からなかったけど、今日はやってよかったとマジで思ってる。俺たちは、メジャー再契約してから、一度もオンステージしてなかった。でも、今日がとっておきだと思えば、そんな日々さえも良かったんじゃないのかなと思えたりします(ここで場内から(そして、きっと全国から)大きな拍手が)。ありがとう。ごめんな、拍手をいっぱいさせて。でも、今日は手の感覚をなくして帰すからね(笑)。あなたが好きだと言ってくれたバンドです。俺たち4人は、あなたにとってどうありたいかを考える。いろんな選択肢、いろんな表現方法があるけど、やっぱり俺たちは、あなたの自慢になりたいと思います。しっかりと受け取ってください」(渋谷)
10月21日(水)にリリースを控える新曲にして名曲「自慢になりたい」が、野音の広大な空間に力強く響き渡っていく。そして、「ビーバーに出会えて本当に良かったわ」「みんなに自慢出来るバンドです」「ビーバーがいたから、がんばれてるんだよ」etc……チャットに流れる心の声の数々が、その感動をさらに増幅させていく。SUPER BEAVERが「自慢になりたい」と歌ってくれるように、俺たちだって、私たちだって、SUPER BEAVERの「自慢になりたい」。そんな気持ちの往来を肌で感じたのは、きっと勘違いではないだろう。
「目の前にいてくれると、ホントに楽しいです。画面の向こうにも届いてますか?(カメラににじり寄る渋谷) 画面の向こうで拍手してください。……あぁいい音だ、ありがとう。デカい音で音楽をやったところで、全身全霊心を込めて歌ったところで、今の現状を変えることはできないし、具体的に誰かを救ったり、治したりできるわけじゃないのは重々承知だが、俺たちはこれからも音楽を選ぶ。あなたの中で何かが変わったらいいなと思ってます。それが明日かもしれないし、このライブから帰ってすぐかもしれないし、1年後か5年後か、死ぬ間際かもしれない。あなたの中で何か1ミリでも変化してくれたら、バンドマン冥利に尽きます。そのたった1ミリの変化、1ミリの進化、1ミリの感情。そのために16年目も音楽を鳴らして参りますので、何卒1つよろしくお願いします!」(渋谷)
SUPER BEAVER 撮影=青木カズロー
客席から突き上がる拳とチャットを賑わせる言葉のシンガロングが、4人が繰り出す「27」を後押しする。そして、「一歩でもあなたの近くに!」と何度も絶唱した渋谷が、「声が出せないことが何か理由になります? たったそれだけのことで、委縮しちまうようなあなたじゃねぇよな!」と、1人1人のあなたに全幅の信頼を置いて導いたのは、「東京流星群」。ミラーボールが描いた流星を背に、オーディエンスの分まで必死に声を上げる4人の姿には、思わず胸が熱くなる。「ちゃんと伝わってます、どうもありがとう!」とその無言のシンガロングを受け止めた渋谷が、「今日この日が俺たちの、そしてあなたの「突破口」になりますように」と続けたのが、前述の「自慢になりたい」と共にダブルAサイドシングルとしてリリースされる、TVアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』第2クール オープニングテーマである「突破口」だ。躍動感×疾走感に満ちた新たなアンセムが、初お披露目にしてその破壊力を如実に証明するかのように、オーディエンスをとことんフックアップする。
いよいよライブもクライマックスというところで、当日に至るまでめまぐるしく変化する状況に対応してきたスタッフへねぎらいの拍手を求めた渋谷だったが、沸き立つそれの思いのほかの大きさに「何で俺たちよりも拍手が大きいの!?(笑)」とたじろぐほど、こんなにもかけがえのない日を迎えられたオーディエンスからの感謝が溢れ出る。「本日のキャパは1600人、今まで入れられた人数の半分です。俺たちが見た満杯の日比谷野外大音楽堂より、デカい拍手の音を聴かせてください。愛すべきあなたのお手を拝借!」となだれ込んだ「美しい日」では、メンバーのまなざしも本当に充実感でいっぱいで、そんな顔にさせるオーディエンスとの美しき共犯関係には、ライブが人生にもたらすエネルギーを痛感させられる。
「あなたのおかげで美しい日になりました。まだまだついてこれますか!?」(渋谷)との呼びかけに、ドラム、ベース、ギターが絡みつくようにフェードインしていく「予感」では、元来であればコール&レスポンスするはずの掛け合いのフレーズが、ひときわ加速してチャットに流れていく。そして、「今日、確信に変わったけど、あなたが見てくれてたら絶対に大丈夫。胸を張ってこれからもバンドマン稼業を続けていきますので、何卒よろしくお願いします!」と「秘密」へ。声を出せないオーディエンスの代わりに、メンバー全員で声が枯れんばかりに歌い上げる光景を前に、こちらは心が叫び過ぎて心の声が枯れそうだ。「あなたの声がどれだけ大事だったか分かります。ホントはあなたと一緒に歌いたかった」という渋谷のひと言が、ちぎれんばかりに胸を締め付ける。それと同時に、例え声を発せなくとも感情は確かに通い合う、無音のコール&レスポンスすら成立してしまうSUPER BEAVERのライブに心底感心させられる。
SUPER BEAVER 撮影=青木カズロー
そして渋谷が、「最高だなと思ったり、寂しいなと思ったり、すごく素敵な時間でした」と語ったところで、「ちょっとごめんね」と客席に断りを入れ、カメラに目線を送りこう続ける。
「目の前にあなたがいてくれるからこそ、歌を歌えると思って音楽をやってきましたけど、こうやって会えない状況があったりすると、いろいろ考えるわけです。それでも画面の向こう側で何かを伝えようとしてくれる気持ちは、なぜだか分からないけど伝わるような気がしてます。もちろん、直接の方がもっと伝わるに決まってる。だからこそあなたに会いに行けるように、これからも足を使っていくバンドでありたいので、次は直接会いましょう」
今日のライブを配信で観ている人、観ざるを得なかった人、そして、目の前にいる誰1人として置いていかない誠実さに、SUPER BEAVERとはこういうバンドだったよなと思い出すうれしさよ。
「何かしらもがいてるのはどのバンドも一緒で、俺たちだけが、音楽だけが特別なわけじゃないのは分かってます。その中でも、こういうふうに俺たちが音楽を続けられてるのは、自分たちの歩みが関係してるのかなと思っています。4人だけで成し遂げてきたことは、もしかしたら1つもないかもしれない。そばには必ず誰かがいて、誰かと一緒に音楽を鳴らして。だからこそ1対1で、マスクで顔の半分は分からないけど、それでも受け取ろうと……今日は必死でやりました。あなたのその気持ちがこれからの自分たちの活力になることは間違いないし、あなたのおかげでこれからも音楽ができそうだなと心から思いました。どんなふうに伝えるか、どんなふうに受け取るか。俺たちは一貫して、足を使ったバンドマン、そういう気持ちで16年目も突っ走りますので、安心して付いてきてください」
最後に彼らが届けたのは、「ひとりで生きていたならば」。SUPER BEAVERの歩みそのものとでも言うべきこの曲が、2005年の結成から5664日の日々を超えて、今こうして鳴らされている。時が経つほどに説得力を増していきそうな同曲をはじめ、SUPER BEAVERが全精力を注いだ一夜を目にした者が、その終幕を惜しむのは当然のこと。だが、ここでアンコールの拍手を遮り突如アナウンスされたのが、12月8日(火)・9日(水)神奈川・横浜アリーナでの無観客生配信ライブの開催! 初日の8日(火)は、先日中止が発表された『続・都会のラクダ TOUR 2020~ラクダの前進、イッポーニーホー~』の払い戻しを行わなかったチケット購入者対象の限定ライブとなり、2日目の9日(水)は、オフィシャルYouTubeにて無料生配信されることが決定。どんなふうに伝えるか、どんなふうに受け取るか。現場至上主義たるSUPER BEAVERの8カ月ぶりのライブが、激動の2020年にまた新たな望みをつないでみせた。
SUPER BEAVER 撮影=青木カズロー
取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=青木カズロー
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