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鬼頭明里、ライブツアーで切り開いたアニメ・声優業界の有観客ライブの新たな地平線

アーティスト

声優、そしてアーティストとして活躍する鬼頭明里が、キャリア初のワンマンライブとなる1st LIVE TOUR「Colorful Closet」を、9月22日〜10月3日に、東京・大阪・名古屋にて実施した。

このライブはコロナ禍において、他アニメ作品・声優アーティストに先駆けて行われた、屋内での「有観客興行ライブ」であった。開催から2週間以上経過した今も、主催者(ポニーキャニオン)に観客からの感染の情報は届いていない。大成功を収めた本ライブの新型コロナウイルス対策について、ポニーキャニオンが見せた“攻め”と“守り”の姿勢、そしてこれからの“新たな観覧形態”について考えてみよう。

“攻め”のチケット価格アップ

緊急事態宣言発令中の2020年4月17日に情報解禁された本ライブは、当初チケット価格を6,800円+税と発表していた。ところが、政府からの催事物の開催制限などを受け、2020年6月10日にチケット価格を約76%増の12,000円+税まで引き上げる価格改定を発表。これは、各会場の収容率を50%以内に制限しなければならない中、有観客でライブを行うための苦渋の決断であった。

各社が業界全体の様子を伺っている最中、本ライブが口火を切ってチケット価格アップを発表したこともあり、発表時は「チケ代2倍」という一見マイナスイメージのワードがTwitterトレンド入りするなど大きな反響を呼んだが、実際に日頃から鬼頭明里を応援しているファンの意見は、決してネガティブなものばかりではなかった。

鬼頭明里オフィシャルスタッフTwitterアカウントへは「今の状況なら、値段上がっても仕方ない。それより開催する方向で進めてくれていることが嬉しい」「周りのお客さんとの間隔があくのであればこんなご時世ですので賛成です」「先陣を切って頂きありがとうございます」などのコメントが寄せられた。

また、アニソンシンガーのオーイシマサヨシは、2020年8月に公開されたインタビュー記事の中でこう述べている。

お茶の間の反応は「2倍にするなんて何てことだ」とか「そんな高いチケット代は払えないだろう」って感じだったんですけど、オタクの反応が面白くて。まず「推しに会いに行ける環境を作ってくれてありがとう」と。あとは「高いのは別にいいけど、当選の倍率が2倍になってしまうのが大変だ」っていう声。(中略)あれを見た時、ファンのみなさんには信頼しかないなと思って。みんな飢えてるし、会いに行きたがってる。こういう気持ちがある現場、こういう気持ちがあるジャンルなら、この厳しい時代を乗り越えるだけのパッションが絶対にあるなと思いました。けっこう確信に変わったぐらいの、とてもポジティブな出来事でした。

このように、チケット価格アップは図らずもアーティスト・スタッフ・ファンの信頼関係をより強固なものにした。

また本ライブでは、チケット価格アップに伴い、入場特典として、下記グッズの配布や、鬼頭明里本人による退場時のお見送りなど、普段のライブでは行わない手厚いサービスを実施し、来場者の満足度は非常に高いものとなった。

  • 会場別複製サイン&直筆「ありがとう」コメント入りブロマイド
  • オリジナルフラッグ
  • オリジナルビニールバック

ライブに関わる全ての人を“守る”万全の新型コロナウイルス対策

来場者だけでなく、本ライブに関わる全ての人を、新型コロナウイルスから守るべく、以下の万全の対策が講じられた。

  • 収容人数の50%以内での配席でチケット販売(前後左右が空席となる形での配券)。
  • 入退場時、座席エリアごとに時間帯をわけての入場。
  • 入場特典としてオリジナルマスクとフェイスシールドを配布。着用を呼びかけ。
  • 会場入口での来場者様の検温(37.5度以上のお客様は入場をお断り)。
  • 会場入口での来場者様の手指消毒実施(会場入り口及び会場内に消毒液の設置)。
  • 会場入口での来場者の靴裏消毒の実施。
  • 新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)を事前にインストール。公演当日はBluetoothをオン。
  • インストールが出来ない場合は別途、お客様情報用紙に記入。
  • 場内係員のマスク・フェイスシールドの着用。
  • 会場内物販の全面中止(事前通販のみ実施)。
  • 出演者へのスタンド花、籠花、花束、プレゼント、お手紙の受け取りを辞退。プレゼントボックスの設置も無し。
  • 各公演の前後時間、公演中の換気実施。
  • 公演中のコールや声援など大きな声をあげる行為の禁止(立ち上がっての観覧、拍手やペンライトを振る行為は可)。
  • 会場内での、食事は禁止(休憩中の水分補給は可)。
  • こまめな手洗い、うがいの励行を呼びかけ。
  • 下記のお客様は来場を控えていただくよう呼びかけ。
    • 新型コロナウイルス陽性判定を受けている、医師に自宅待機指示をうけている方
    • 風邪の症状(発熱、のどの痛み、頭痛、関節痛など)や37.5 度以上の発熱がある方
    • 強いだるさ(倦怠感)や呼吸器症状(咳、息苦しさ、息の吸いずらさ)がある方
    • そのほかの症状(下痢、味が薄く感じる、味覚障害、目やにと充血)などがある方
    • 咳、痰、胸部不快感のある方
    • 同居家族や身近な知人に感染者、もしくは感染が疑われる方がいる方
    • その他新型コロナウイルス感染症状が見受けられる方
    • 上記症状のある方と2週間以内に濃厚接触した方
    • 過去14日以内に、政府から入国制限、入国後の観察期間を必要と発表されている国・地域渡への渡航、並びに当該在住者との濃厚接触がある方
    • 妊婦の方、70歳以上の方、糖尿病・心不全・呼吸器疾患の基礎疾患がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方
    • 体調に不安のある方、上記理由により来場が叶わない方の購入済チケット払い戻しも対応。

検温や消毒、分散形式での入退場施策など目に見えるところは勿論、映像・音響スタッフなどが入り交じる楽屋裏の感染症対策も万全に敷かれ、冒頭に述べた来場者は勿論、ライブ制作に関わった全ての関係者からも感染者を出さずに終えた功績は大きい。

配信ライブという“新たな観覧形態”

コロナ禍において、「配信ライブ」が急速に普及しているのは周知の通りだ。サザンオールスターズの無観客配信ライブは約18万人がチケットを購入し、サカナクションの配信ライブも2日間で約6万人が視聴しており、有観客ライブのみでの実施よりも圧倒的に多くの人数がライブを観たことになる。

鬼頭明里1st LIVE TOUR「Colorful Closet」でも、千秋楽の名古屋公演のみ、次世代電子チケット販売プラットフォーム「ZAIKO」にて有料生配信を行った。会場は名古屋市公会堂。収容人員は1,552席で、本ライブでは約640枚のチケットを配券した。一方、3,800円(税込)で販売したZAIKOでのライブ本編生配信チケットの売上は約1,700枚と、会場キャパシティを超える枚数となった。

コロナ禍における感染予防の観点からもそうであるが、惜しくもライブチケットが手に入らなかった方や遠方に居住している方もライブが見られるほか、リアルタイムでの視聴ができない方にとってもアーカイブ視聴が可能であるなど、環境やスケジュールに左右されないライブ観覧形態として、今後一層の発展の兆しを感じた。

まもなくやってくる「5G」の時代では、配信のタイムラグや映像・音声の乱れも軽減されるであろう。それだけでなく、視聴者自身がカメラをスイッチングして、お気に入りのメンバーを追いかけて見ることが出来たり、より高度なVR技術との融合で、家に居ながらあたかも会場にいるような体験を味わえたりするかもしれない。

コロナ禍において奇しくも発展した「配信ライブ」が、エンタメの未来を担う救世主となるのだろうか…? その答えの一端は、新たな地平線を切り開いたポニーキャニオンの眼前に広がる景色に映し出されているはずだ。

文責:金子 弘

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