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福山雅治、デビュー30周年イヤーの総決算として挑んだオンラインライブ開催

アーティスト

FUKUYAMA MASAHARU 30th Anniv. ALBUM LIVE AKIRA

福山雅治、自身初となるオンラインライブ「FUKUYAMA MASAHARU 30th Anniv. ALBUM LIVE AKIRA」が12月27日に開催された。

約2時間に及ぶライブは、果たして“それ”をなんと呼んだらいいのかわからないほど新たな表現領域を開拓したものだった。そこには、まだ見ぬものへ挑む野心と、だからこそ感じ取れる、これからのエンターテインメントへの希望が込められていた。

「2020年春、世界からかつてのようなライブが消えた」という、改めて言われるとドキッとするナレーションから始まった。そして画面には何もない真っ白なステージにポツンとマイクスタンドだけが立っている光景が映る。そこに福山が自らの歩幅を確かめるような足取りで現れ、こう呼びかける。

「今ご覧になっているあなたにとって、そして僕にとってもまったく想像していなかった形でのライブです。ですが、今しかできない音楽、今しかできない映像表現を存分に楽しんでいただけたらと思います」

静寂が包む白い世界は、まるで一度壊れてしまったフラットな世界のようで、そこに福山が立ち音楽を奏でる様は、またここから新たな表現を創り上げていくんだという宣言として映った。

1曲目は「AKIRA」。12月8日にリリースされたオリジナル・アルバム「AKIRA」のオープニング・ナンバー。そう、このライブはアルバム「AKIRA」の世界観を音だけではなく、映像という形で可視化させるという福山にとって初の試みとなるプロジェクトなのだ。なので、アルバムの1曲目から最後の曲までを曲順通りにパフォーマンスする、というのが前提としてある。

このライブの前に本人はこのように語っていた。

「アルバム『AKIRA』で描いた音楽世界を一本の映画を観るかのような、通常のライブとは違った、映像作品として表現した世界観をぜひとも体験していただきたい」

そのために用意されたのが3つのステージだ。ひとつはアルバム「AIKRA」のアートワークに表現されている異次元世界を彷彿とさせる「AKIRA」ステージ、そしてカメラアングルによって異なる背景演出を可能とするセンターステージ、さらに、全面が白で覆われたホワイトステージ。この3つのステージを行き来しながら各曲の世界観を創っていく。さながら、壮大な試みがなされているライブの実験場(ラボ)とでも言うべき現場を目撃しているような新鮮さがある。

アルバム・ジャケットで表現された“異世界の地下神殿”「AKIRA」ステージの中で繰り広げた「暗闇の中で飛べ」に続いてセンターステージへ移動してパフォーマンスした「革命」は、それまでのモノトーンの世界をガラリと覆すような、炎とレーザーが交わる圧倒的な迫力のヴィジュアルを提示してみせた。音とシンクロするようにスイッチされるカメラアングルは、通常のライブではあり得ない角度から生のパフォーマンスを切り取ってみせる。その画とタイミングがこれほど音楽的な自然さで、まるでそれらも音楽を構成する要素ででもあるかのように成立していることが、このオンラインライブが目指す“今しかできない映像表現”の本質なのではないかと思った。やはり真実は音の中にあるのだということがはっきりとわかった瞬間だった。

さらに特筆すべきは、パフォーマンス後に聴こえてくる歓声と拍手だ。これは、事前にラジオ番組を通じて募集した、ファン一人一人の“生の歓声”をMIXして作り上げたものだ。福山がMCでこのように表現したのがとても印象的だった。

「どこかの誰かのよくわからない声ではなくて“顔の見える声”ですよね。これまで年末に開催していた『福山☆冬の大感謝祭』でずっと聴いてきた声です。この声を聴いているだけでみんなの顔が思い浮かびます」

ライブは中盤に入り、ホワイトステージでアルバムのために書き下ろされた楽曲「ボーッ」とドラマ主題歌として書き下ろした「心音」がパフォーマンスされた。前者はレゲエ調のビートが軸となった曲で、原曲の懐の深さをさらに深くしたような音世界が感じられ、後者はステージ全体を白い幕が覆い、曲の中で綴られている“生きづらさ”や“人に言えない葛藤”といった心象風景をヴィジュアライズした世界だった。

音と映像、両方を掛け合わせて何倍にも楽曲のイメージと世界観を膨らませる。そうやって辿り着いたアルバム「AKIRA」最後の曲は「彼方で」。遠く旅立ってしまった人への残された者の想いを歌ったこの曲での表現は、まさに映画のラストシーンを観ているようだった。星空を背景に雲海に佇みパフォーマンスする福山。予想もできなかったデビュー30周年イヤーでも、クリエイティブすることを止めず新たな表現に挑み続けた彼の姿勢こそ、“今しかできない”という想いに貫かれたものだった。

「どれだけ通常のライブから逸脱することができるか?」をテーマに、まさに総合芸術とも言うべき表現を立ち上げた福山雅治。自らの“血の轍”を作品に昇華したアルバム「AKIRA」に、新たな血が注がれた2時間だった。

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