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ダミアン浜田陛下が再臨、金属恵比須を迎えたソロプロジェクトDamian Hamada’s Creaturesの大聖典誕生秘話と未来の野望

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Damian Hamada's Creatures

Damian Hamada’s Creatures

聖飢魔Ⅱの黎明期を作り上げたダミアン浜田陛下が魔界より降臨。大聖典『旧約魔界聖書 第Ⅰ章』『旧約魔界聖書 第Ⅱ章』という2枚のアルバムを作り上げた。アルバムを形作ったのは、プログレバンド・金属恵比須と、新進のボーカリスト・さくら“シエル” 伊舎堂。プログレッシブで難解、それだからこそ聴き応えのある、音密度の高い作品に仕上がっている。ダミアン浜田陛下と金属恵比須に大聖典の制作にまつわるあれこれを聞いてみた。

指向性がとても狭いから、多くの人の琴線には触れないと思う。しかし、そのぶん強力で、ハマったら逃げられなくなるのだ。

――まずは、『旧約魔界聖書 第Ⅰ章』『旧約魔界聖書 第Ⅱ章』について、このメンバーを集めて制作しようと思った経緯をお話しいただけますか。

ダミアン浜田陛下(以下、陛下):私は魔暦21年(2019年)の3月に勤めていた世を忍ぶ仮の職場を早期退職した。自由な時間ができ、最初は嬉しかったが、そのうち不安に繋がった(笑)。そこで、何か生きている証を残そうと曲作りを始めてみたわけだ。ギターも久しぶりに弾いたぞ。作曲ソフトを買って作編曲を始めたが、これがすごく楽しくて。音楽を作ることの楽しみをそこで久しぶりに思い出したような感じだった。朝起きて寝るまで自由な時間のほとんどを費やして、いつの間にやら12曲できてしまったという。

──それを世に出すことになったのは?

陛下:最初は悪魔寺に相談した。悪魔寺というのは事務所だ(笑)。それが1年前。それから、自分の作った曲をちゃんと演奏してくれるテクニックを持ちつつ歌ってくれるメンバーを探そうと。しかもスタジオミュージシャンではなくて、バンドとしてライブができるようにバンドを組みましょう、ということになった。

──それで楽曲もバンド用に編曲なさったんですね?

陛下:バンドでやるんだったらオーバーチュアがいるなと思って、「聖詠」という曲を加えて13曲にして世に出そうということになったわけだ。で、そのときに悪魔寺から紹介してもらったのが金属恵比須と伊舎堂さくらであった。彼らの活動状況をYouTubeとかいろいろ見たり聴いたりして研究したぞ。で、伊舎堂さくらはパワフルで非常に器用に歌いこなしていて、これは大丈夫だ、と。一方、金属恵比須は非常にテクニカルなバンド。ただ、“ドラムツーバスじゃないよね、大丈夫かな?”と思って、そこだけ確認してもらった。あとギターがあまりアームプレイをしてなかった。自分の曲はアームプレイが非常に多いので、“アームの付いたギターじゃないが、そこ大丈夫?”と。そこも確認してもらった。そうしたら“ああ大丈夫大丈夫”っていうことだったので。

一同:爆笑

大地 “ラスプーチン” 髙木(以下、高木):初めて聞きました(笑)。

陛下:それで2月に悪魔寺と悪魔教会と私で初めてミーティングをしたのだ。そこから準備が始まって、本当だったらもっと早く発表できたかもしれないのだが、コロナ禍というゼウスの史上最大の妨害に遭ってしまった。それで、作業が遅れてしまい、現在に至るということである。

――じゃあ、D.H.C(Damian Hamada's Creatures)ありきで曲ができてきたのではなく、曲はもう最初に全部あったわけですね。

陛下:そうだ。魔暦21年(2019年)の12月に編曲はほぼ全て終わっておりデモ版が完成しておった。男性ボーカルのイメージで作っていたのだが、女性ボーカルに変えたので、キーの変更と、さまざまなアレンジはギタリストやキーボーディストと相談して変えた。しかし、基本的なアレンジはデモ版でもうできておった。

 

――あらためて金属恵比須さんにお聞きしたいんですが、陛下からそういったお話があって、曲を聴いて、実際、どんなお気持ちでしたか?

 ケン“アレイスター” 宮嶋(以下、宮嶋):最初からギターを含めてしっかり作り込んであったので、完成形がこんな感じなのかっていうのが伝わってきました。僕もけっこう陛下みたいにかっちりアレンジしたデモをみんなに配って、それ以上のものをやってもらいたいタイプなんですけど、それを超える何かを入れてくれっていうメッセージも同時に感じたんです。で、音源をもらって、陛下に会う前に、勝手にキーボードを足したデモを作って持って行ったんですよ。それがご好評いただいたので、“これで自分のやり方でいける”と思いました。ですのでギターの人たちにも守るべき線と、自分の味をどんどん入れていくべきところ、みたいのをいろいろ提案したりして。ある程度骨組みはバシッと決まっている中に我々らしさとかをどう注入するかというのを考えました。

――宮嶋さんはベースも担当されたんですね?

宮嶋: 僕は金属恵比須ではほとんどキーボードをやっていて、D.H.C.でも当初はキーボード専任の予定だったのですが、ギターの録音に思ったより時間が掛かっていたこと、金属恵比須に加入するまではベースがメインだったこともあり、急遽ベースも担当することにしました。MVでの絵面もバンドとしての体裁が整ったので、一石二鳥だったかなと。なお、数曲は栗谷もベースを弾いています。

――栗谷さんは、今回はギターがメインなんですね。

秀貴“ジル” 栗谷(以下、栗谷):金属恵比須ではベーシストなんですけど、今回はギターです。

――陛下は弾いてないんですか?

陛下:今回は弾いておらん。私の立ち位置はヘヴィメタル界の秋元康だと思ってくれたまえ。

一同:爆笑

――なるほど、わかりました。今回、第I章と第II章というトータルコンセプトのあるアルバムだと思うんですけど、改めて、今回のアルバムのコンセプトについてお話してもらえますでしょうか?

陛下:基本的には聖飢魔IIの頃の世界観を踏襲しようと思っていた。それで、魔界の話を音と歌詞で表現しようと思い、結果的に今回のような作品に仕上がった。自分の好きな世界だからこんなに楽しめるんだな、と思いながらの作業であった。なんせ世仮の姿の生き甲斐なのだから。盆栽と同じ。当たり前だが、自分がやりたくないことだったら、こんなに順調には進まなかったな。

高木:盆栽との比較表現、初めて聞きましたよ(笑)。

陛下:それで好きなことだけやったら悪魔ワールド全開。自分は曲を全部作ったあとにまとめて作詞をするタイプなので、歌詞をどっかーんとまとめて作ったのだ。その時にやっぱりイメージとして魔界の話だから、それに合った歌詞を付けなきゃいけないだろ。作詞は作曲ほど得意ではないので、産みの苦しみは多々あったが、総合的に振り返ると楽しくできたな。

──魔界を踏襲しようと思ったわけですか?

陛下:踏襲というより継続だな。聖飢魔IIからの信者たちが聴いて“おかしいんじゃね? これ”となるのは絶対まずいと思った。なおかつ、今回は自分の中で作詞の際に念頭に置いたのは、ファンタジーをもっと表に出そうと。人がいっぱい死ねばいいというもんじゃなくて。恐怖より美しさを、脅しではなく教えの部分を全面的に出そうということになって、聖書、悪魔のバイブルを作ろうじゃないかと思ったわけだ。

──2枚が同時進行だったわけですか?

陛下:1年前の時点では1枚の聖典で出すつもりだったのだが、悪魔寺から、“これ13曲まとめて聴いたら、かなりエネルギーを使う”と。なおかつ私のアイデアとして24年前に『照魔鏡』という個悪魔教典を作った時に、“カラオケで歌いたいんですけど、カラオケ業者には入ってないんですよね”っていう声を多々聞いたので、今度そういう機会があれば、最初から全曲カラオケを入れてしまおうと思い、全曲カラオケバージョンを入れておる。13曲まとめて聴くとエネルギーを使うけれど、アルバムを二つに分けることによって、それも解消するし、空いたスペースでカラオケも入れられるということで話を進めた。まあ、実際カラオケを付けてみたら、けっこう“これいらねーや”という声も多かったので、次回からはどうしようか考え中だ。

一同:爆笑

陛下:2枚をどう分けるかは自分の判断でやらせてもらった。分けることのメリットをより出すために、それぞれにコンセプトを追加した。第I章の方は、Damian Hamada’s Creaturesをそこで初めて聴くわけだから、名刺代わりになるようなとっつきやすい曲。だから1曲目はオーバーチュアだが、2曲目の「Babel」は王道中の王道となっておる。王道中の王道だが、ちゃんとダミアン節をいたるところに残したアレンジにして。続く「Heaven to Hell」だけは三部構成になっているし複雑構成ではあるが、そのあとの曲は基本的にとっつきやすいものばかりになっておる。

 

──第II章の方はどうですか?

陛下:大まかに言うと、第II章の方は複雑な構成。二部構成になっていたり四部構成になっていたりするものもあって、“もう組曲かこれは!”っていうのもあるな。そういうのを第II章の方にまとめた。エネルギーを要する曲集だな。実際、本編の収録曲数は第Ⅰ章より少ないのに、収録時間は長くなっておる。

――第II章の方は音が多くて構成も複雑で、かなり聴き応えがあるっていうふうには感じました。

陛下:1曲目から7分あるからな(笑)。

宏美 “ローズ” 稲益

宏美 “ローズ” 稲益

――では、強く印象に残っている曲を金属恵比須さんに一人ずつお聞きしてもよろしいですか。

宏美 “ローズ” 稲益(以下、稲益):冒頭のクワイヤを歌わせてもらった「Heaven to Hell」が自分的には思い入れがある曲ですね。きれいな感じの合唱で、一番上のメロディは音域的にけっこう高いところまでいくので、声出るかなあと思いつつ、でも入れた方が絶対きれいだなあ、と思って、レコーディングではなんとかぎりぎり歌えてよかったです。

高木:コーラスというか、完全に金属恵比須の稲益の声なんだよね。個性のある声だった。

栗谷:冒頭は稲益のソロに近い感じだよね。

稲益:ある日ツイッターで、“この曲、なぜか和風の香りがする”というつぶやきを見かけて、もしやこれ、私のせいだったりして……? とちょっと思ったりして(笑)。曲自体には和のテイストはないはずなんだけど、私が醤油の香りを入れてしまったのかなと(笑)。

高木: D.H.C.の世界観が“洋風ゴシックホラー”に対して、金属恵比須の世界観は横溝正史「金田一耕助シリーズ」の“和風ホラー”ですから(笑)。

――そのテイストのミックス具合がすごく複雑怪奇な世界観になっていて、めちゃめちゃおもしろかったですよ、この曲。

陛下:それは私も聴いてて、全曲想像を超えてきたのだが、特にこの曲は想像をすごく超えてきたな。

マスヒロ “バトラー” 後藤

マスヒロ “バトラー” 後藤

――じゃあ、後藤マスヒロさんはいかがですか?

マスヒロ “バトラー” 後藤(以下、後藤):まず、デモを聴いて感じたのは、率直にかっこいい曲なんだけど、めちゃくちゃ難しい。私、この世界で30年やっていて、特にプログレッシブで難解とも言える曲をやり始めて25年ぐらい経つんです。だからロック音楽に対してはたいていのことはやってきたっていう自負は持ってるんですけど、それでもいや~難しいなって思ったのと同時に、やりがいあるなと思いましたね。これをやりきったら俺もっと上に行けるだろう、みたいな。そういう挑戦欲っていうのかな、そういうのを抱かせていただきました。キャリアが一つ前進できたなって思っています。中でも「Babel」は王道ではあるんですけど、仕掛けの手順が改臟人間技じゃないとできない符割りだったりする。それを改臟された以上に自己改臟¬もしなきゃいけない(笑)。手順を改め直したりとか、足と手のいわゆるコンビネーションを一から考え直したりとか、そういう試行錯誤をしました。

──それだけキャリアのある後藤さんでも難しかったんですね。

後藤:そうです。それから、『第I章』に入っている「Lady into Devil」。ものすごくシンコペーションが特徴的な曲です。“ウカッカッカッカッ”というようなソウルとかブラックミュージックで演奏される裏の拍数を強調するようなパターンなんですが、それをハード・ロックで再現していく過程はおもしろかったです。その裏の拍数の強調の仕方とかをデモとはちょっと変えて再現したりとか。陛下が作曲してきた採譜をそのまま演奏するんじゃなくて、グルーヴは保ちつつも、パーツを変えてみたりするっていう楽しみも味わわせていただきました。あと、これは初めて話すんですけど、「Deepest Red」を演奏するにあたって、僕がかつて在籍して25年ぐらい前に録音した人間椅子の『頽廃芸術展』っていうアルバムに入っている「天体嗜好症」っていう曲のドラムパターンをそのままやるとピッタリくるんですよ。

高木:そうなんですね!

後藤:同じことをやりたくなかったんで、違うパターンをやっていたんですよ。そしたら、宮嶋が“昔のままやってみた方がいい”って。

宮嶋:確かにそういう話しましたね。

後藤:ちょっと抵抗があったんですけど、でもこの曲はこのフレーズを呼んでるんだなって、なんか納得しちゃって。過去に自分がやったのとまったく同じプレイを別の曲でやるって経験は初めてでした。

高木:そうなんですか! 今まで様々なバンドで叩いているのに? 逆にそのこだわりがすごいですよ。この話を聞いてマスヒロさんのすごさを思い知りました。

後藤:できれば同じことをやりたくないタイプなんですよ。過去にやったことは終わったことっていうタイプ。常にどんどん変わっていきたいんです。まわりはきっと過去のプレイに対して“それでいい”“それがいい”と思っていても、自分が意識してることとはたぶん違う場合の方が多いんじゃないかな。今回はあまりに迷ったので、まわりのアドバイスをそのまま飲み込ませていただきました。

陛下:おお、その話は聞けて良かったぞ。そなたの素晴らしさをより知ることができた。

後藤:実は先程も話した、「Lady into Devil」でリファレンスしたのが、ベック・ボガート&アピス(BBA)が取り上げているスティーヴィー・ワンダー作の「迷信」なんですよ。ギターソロの冒頭のドラムフレーズ、あれ、カーマイン・アピス風なんです。

陛下:そ、それは伝わり過ぎて逆に笑ってしまうな!実はここだけの話なのだが、あの曲は作詞段階で「Lady into Devil」と曲のタイトルが決まるまでは、「カーマイン・アピス風」というタイトルだったのだ。

一同:笑

後藤: あの曲、録音するにあたって「迷信」と、あと同じくジェフ・ベックの曲で「レッド・ブーツ」の “デデデッ・チチッ”っていうドラムフレーズをちょっと参考にしたんです。「レッド・ブーツ」って、ソウルミュージック畑のスティーヴィー・ワンダーが書いた「迷信」をBBAで演った延長線上にあると思っているんです。ジェフ・ベックはブルースやブラックコンテンポラリーが好きっていうところは一貫してるから。それを僕なりに咀嚼して消化して飲み込んで、吐き出してみたんです。実際のところ、うまく馴染んでよかったなと。

秀貴“ジル” 栗谷

秀貴“ジル” 栗谷

――では、栗谷さん、お願いできますか。

栗谷:II章の方に収録されている「新月のメヌエット」ですね。アルバムの中では一番の大曲で、金属恵比須が参加した意義を実感した曲です。宮嶋のメロトロン(プログレで多用される鍵盤楽器。サンプル音を録音したテープを鍵盤で再生する)がこれみよがしに入っていたり(笑)。やっぱりメタルファンだけでなくプログレファンにも聴いてもらいたい曲ですね。あとギターのリフが今までぜんぜん弾いたことないような斬新なパターンでしたね。

陛下:これコピーしてもらいたいな、いろんな人に。ジルの苦労がわかる。

栗谷:あとこの曲、クラシックギターソロが最後に入ってるんですが、もともと陛下が作られたデモでは、アコギの二重奏だったんです。金属恵比須に『武田家滅亡』というアルバムがありまして、その中に僕が弾いてるクラシックギターソロが入ってる曲(内膳)があるのですが、それを陛下が聴かれて、「せっかくだからアコギではなくクラシックギターの独奏で弾いてみてはどうだ」という提案をされたので、「是非弾かせていただきます」というやりとりがありました。結果的にアコギで弾くより、重厚感のある曲に仕上がったと思っています。

陛下:めちゃくちゃ泣かせる。私はな、最初聴いた時、涙出そうになった。

栗谷:泣いてないんですね。

一同:爆笑

高木:栗谷のクラシックギターの講師という職業を活かした適材適所のパートだね。

栗谷:それと「新月のメヌエット」はギターソロ的なものが4回ぐらい入っているのも聴きどころです。その中の一つに宮嶋が考えたスティーヴ・ハケット風なフレーズがあるのですが、そこは高木が演奏しています。

宮嶋:プログレっぽいギターソロをやっぱり入れておかないとだめだと(笑)。こんなにメロトロンとか入れて、こんなに場面展開が多くて長くて。きっとプログレが好きな人が気に入ってくれる曲だろうと。だから、メタルテイストだけじゃなくて、プログレ感のあるギターソロっていうのを一箇所入れたい!って思って、僕がデモを作って提案しました。

栗谷:最初あれを聴いた時に陛下はOKかな?って心配しました(笑)。

陛下:最初に聴いた時はよかったのだが、トラックダウンで聴いた時は、そこの部分があまりにも強調されてて、“なんだこれ?”って感じになってしまった。で、次に三重奏的なバランスにしてもらったら、なんとなくしっくりきた。もともと入ってるツインリードと、そのスティーヴ・ハケット風のソロの3つが正三角形になるような良いバランスになったので。これはちょっとおもしろい感じだと思ったな。

陛下:これはもう、金属恵比須ならではの聴かせどころ(笑)。プログレ感満載のところと、ジルの腕の見せどころも遺憾なく発揮したところだな。金属恵比須ならでは!の出来栄えじゃないかと思うぞ。

大地 “ラスプーチン” 髙木

大地 “ラスプーチン” 髙木

――次は高木さんお願いします。

高木:私が印象的だったのは「Which Do You Like?」。この曲は聴くからにレインボー、ディープ・パープル路線でしょう。陛下の「趣味爆発!」というテイストをすごく感じた曲だったので、デモテープにも楽譜にも入っていないフレーズを勝手に入れました。リッチー・ブラックモアを意識したプレイで(笑)。「陛下お望みのアームプレイじゃなくて、70年代風の、というかディープ・パープル『LIVE IN JAPAN』の感じですみません」と思いながら。蓋を開けてみたら意外と使われていて、僕がびっくりしちゃいました。これを“改臟人間のクーデター”って表現していまして(笑)つまりは“改臟人権宣言”なんです。王政から共和制に変えようとがんばっている感じが、この曲の最後の最後のフレーズに詰め込まれてます。このクーデターは成功するのか、失敗するのかは次作に続く、みたいな。

一同:笑

ケン“アレイスター” 宮嶋

ケン“アレイスター” 宮嶋

――じゃあ、最後に宮嶋さん。

宮嶋: そうですね。キーボーディストとして選びたい曲はもうみんな出ちゃってるんで、ベーシストとしてやっておもしろかった曲を一つピックアップしましょうか。「Lady into Devil」。これのベースラインがすごい変わっていておもしろかったですね。まず、ベーシストなら思いつかない。音が不規則に並んでるみたいな感じ。その中からどうアクセントを抽出したり、解釈したりするのかって考えながら弾くのがけっこう楽しかったです。で、あらかじめ陛下にはメールで“ベースの音はスティーヴ・ハリスやクリス・スクワイアはだめ”って言われてたのですが、この曲はリッケンバッカーをピックでゴリゴリ弾くことにして。

高木:そのメール、衝撃的なメールでしたよね。好きなんだけどそういう路線じゃないんだなっていうのが。

陛下:今言ったベーシストは好きなのだが、私の曲に合わないかなっていうのがあってな。

宮嶋: あの曲はキーボードが似合わない感じで入れなかったので、そのぶんベースをゴリッと前に出した方がバランスもよくなるかなと思って。ギターソロに入る前のところで、ビーン!ってデカめに音が鳴ってるので、それを聴いていただけたらと思います(笑)。

――ライブなどの予定や目標を教えてください。

陛下:ライブはもともと想定しておる。そのための金属恵比須なので。

高木:大丈夫かな?

宮嶋:ライブ用にアレンジを変えたりは必要でしょうね。アルバムを完全に再現するとなると、ギターが4人に増えたりとかしないと難しいですからね……(笑)。

一同:笑

――わかりました。当然ファンの方から“第III章いつ出るんですか?”って言われると思うんですけど、いかがでしょう。

陛下:もう準備は始まっておる。今すぐでも。何曲出せるかな? まあ、4曲ぐらいだったらすぐバーッと、ハイこれって。

一同:笑

ダミアン浜田陛下(H.M.Damian Hamada)

ダミアン浜田陛下(H.M.Damian Hamada)

――では、陛下、締めていただけますか。

陛下:金属恵比須もボーカルのシエルもクラシックロックがとても好きで、そこらへんで周波数が合うというか私が目指すところをよくわかってくれているのではないかな。私の指向性ってそんなに広くないのだ。せいぜい30度とか60度ぐらいしかない。たとえば聖飢魔IIだったら、構成員がいろんなジャンルを好きなので、180度どころか360度をカバーしておる。私から発散する音楽の範囲の狭さを金属恵比須もシエルもよくわかってるんじゃないかな。わかってるというよりも、同類だから労せず自然にわかってしまうのだと思うぞ。

稲益:ちなみに金属恵比須のキャッチコピーは「プログレというジャンルに囚われた幅狭い音楽性のバンド」なんです(笑)。普通は「ジャンルにとらわれない、幅広い音楽をやる」と言うところを、あえて逆に言うという(笑)。

高木:音楽家はそれぞれ得意分野って決まっているから、そこをあえて他のジャンルに広げるっていうよりも、これを深化させた方がいいと思うし。今回の陛下の趣味嗜好は確かに狭いかもしれないけど、これを広げるんじゃなくて、伸ばしてさらに深くさせる、っていうことができたんじゃないかなと思います。それによってリスナーの方々はよりマニアックに聴けるのではないでしょうか。

陛下:ハマったらな。ベクトルっていうか、指向性がとても狭いから、多くの人の琴線には触れないと思う。しかし、そのぶん強力で、ひとたびハマったら蟻地獄のように引き込まれ、逃げられなくなるのだ。

取材・文=森本 智

 

 

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