氷川きよし「きよしこの夜」祝20回公演のインタビュー&ライブレポートを公開
デビュー以来、年の瀬の恒例公演として積み重ねてきた「きよしこの夜」の第20回が、2020年12月15日・16日、東京・東京国際フォーラムホールAで行われた。
定員の50%以下という集客制限ルールを守り、2日間4公演で約1万人を動員。以下、本人へのインタビューを軸に、記念すべき公演を振り返っていく。
――コロナ禍という未曽有の状況下、コンサートを成功裏に終えられました。
氷川きよし:心配な気持ちもあったんですけど、万全の感染防止体制をした上で、開催させていただくことができました。お客様には楽しんでいただけたようですし、“待っていてくださったんだな”と実感しましたね。
――冒頭はアマビエ風の青い衣装で「大丈夫 2020」を披露。どんな意図を込めたのですか?
氷川:オープニングは明るく行きたかったんです。やはりこの状況で、皆さん精神的にも参っておられると思うんですね。だから、少しでも背中を押せるような、励ましの言葉を贈る曲でオープニングを飾りたいな、と。そこから「きよしのズンドコ節 2020」へと繋げるハッピーな流れにしました。
キラキラとした幕開けから一変、タキシードに着替え真剣な面持ちで歌ったのは「母」。続く「残雪の町」から「櫻」まで8曲のメドレーも含め、氷川はそこに、ある深遠なストーリーを描き込んでいた。
氷川:「母」から人は生まれて、最後は死を歌った「櫻」へと、生と死のストーリーを構成しました。今年が東日本大震災から10年なので、追悼の想いを込めて、「石割り桜」や「二度泣き橋」、まさに震災の時にできた「出発」も歌いまして。年月が経つと人間は忘れがちですけど、忘れてはいけないですし、だからこそ歌いたい、という想いがあるんです。
緩急のメリハリを付け、テンポ良くコンサートは進展。紋付袴姿の和のコーナーでは、最新曲「生々流転」に続けてデビュー曲「箱根八里の半次郎」を披露した。スクリーンに映し出される過去の氷川きよしと、それを背に歌う“今”の氷川きよし。イメージを掻き立てられる演出である。
――デビューから21年を経た今、当時をどう振り返っていらっしゃいますか?
氷川:当時は、歌に自分を投影するというよりも、架空の世界の主人公になりきって演じるように歌っていました。その後、この歌の道で山あり谷あり、自分なりに日々精一杯努力してきて……「皆さんの期待にお応えしたい」と必死だった原点を大切にしながらも、“今”の自分自身も大切にして愛さないといけない。そう思うようになっていったんです。
――氷川さんが作詞された「Never give up」は、“恐れずに”“強くなってゆこう”という決意表明のような歌詞が印象的です。どんな想いを込めて歌われましたか?
氷川:「Never give up」というメッセージをまずは伝えたいな、と思っていました。自分自身、どんなに周りから「歌手になんかなれない」と言われても、決して諦めずに生きてきたからなんですね。「何を言われようが貫く!」という信念を持っていれば、必ず人は付いてくると思うんです。自分が変わっていけば、周りも変わって行く。強くなっていくことでしか、幸せを掴めないですもんね。元々は弱くて、周りのいろんな言葉が気になる自分だからこそ、そう気付けたんじゃないかな?とも思います。
――「エンターテインメントの灯を消さないように……やっぱり続けていかないといけないですし」というMCにも、強い信念を感じました。
氷川:衣食住と比べれば後回しにはなってしまいますけども、人は、エンターテインメントからもらえる心の栄養や人の励ましがないと、(困難などを)乗り越えられないんですよね。歌を発信して、それが皆さんの生きる力になればいいな、という純粋な想いから出た言葉でした。それに、コンサートで一緒に頑張ってくださっているバンドさんやスタッフさんにしても、自分が止まると活動の全てが止まってしまうので……やはり自分が舞台に立ち、前へ進んでいかなければ!という想いがありましたね。
氷川のコンサートでは衣装も重要な演出の一部。色やデザインにも意味を持たせ、ストーリーを込めている。
氷川:演歌を中心とした前半とはガラッと人が変わったように、後半は怒りや嫉妬、人を好きになった苦しさ、恋が実らない悲しさ、といった感情を出したいと思っていました。氷川きよしの表と裏、陰と陽、人間なら誰しも持つ多面性を表現したくて、衣装もいろいろ考えましたね。「限界突破×サバイバー」の衣装の肩の部分が大胆に開いていたのは、よく行く大阪のブティックの方にいただいたアイデアです。下はきわどい部分までレースを入れてみました(笑)。そうやって楽しみながら、衣装でも挑戦して、氷川きよしの新しいエンターテインメントを表現するショーになったんじゃないかな?と思います。
“氷川きよしというジャンル”を確立したように見えるが、「それをつくりあげるためには、ここから10年ですね」と謙虚な氷川。道はまだ始まったばかりだという。
氷川:2021年は、今のこの世界的な状況ならではのことを楽曲で伝えたいですね。ジャンルを超えて、万人が「そうだよな」と思える前向きな、でも押し付けない希望の歌を歌いたいです。つらいこともあるけど希望を見つけて、「とにかく生きていこう!」って。
深いメッセージを込めながらも、あくまでも楽しく。クリスマスソング「きよしこの夜」を久しぶりに披露した理由を問うと、「クリスマス感があったほうが楽しんでいただけるかな?と思って。現実から離れられるのもまた、歌の良さですよね。ハッピーなものを贈り続ける“kiiちゃん”でいたいです」と笑顔。生粋のエンターテイナーである。コンサートは2月13日19:00、WOWOWプライムにて初回オンエアされる。
氷川:今回の見どころは、2時間半のすべてがマイストーリーでもあり、皆さんのストーリーでもあるところかな?と思います。WOWOWさんは再放送も多いですし、部屋で好きなだけ観られるのがいいですよね。もう何回も自分のポップスコンサートや大阪城ホール公演を観ていて、オンエアのたび「ラッキー!」って得した気分になっています(笑)。皆さんも是非、何度もご覧ください!