KOTORI 撮影=藤川正典
スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2020~仕切直始の宴~ 2021.3.13 EX THEATER ROPPONGI
KOTORI、Suspended 4th、ズーカラデル、ハンブレッダーズによる『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2020』。2020年2月に始まったツアーは9公演中3公演目を終えたところで中断、4公演目以降が中止となったが、約1年ぶりに4組が再び集まった。“仕切直始(しきりなおし)の宴”というサブタイトルを掲げて開催中の東名阪リベンジ公演のうち、この記事では、3月13日に行われた東京・EX THEATER ROPPONGI公演の模様をレポート。なお、Suspended 4thは、新型コロナウイルスによる感染症の濃厚接触者に該当するメンバーがいたため、やむを得ず出演キャンセルとなった。
ズーカラデル
ズーカラデル
トップバッターはズーカラデル。ジングルと映像が流れるや否や席から立ち上がり、「ズーカラデル、始めます!」の声にわーっと拍手する観客の姿を見て、ツアーの再開を誰もが待ち望んでいたのだと改めて実感させられる。後にハンブレッダーズもツッコんでいたように、最初の一音が笑っちゃうほどデカい。1曲目は「アニー」。そうだ、素晴らしくも美しくもない世界だからこそ、この歌と共に生きたいのだと胸が熱くなった。
ズーカラデル
ズーカラデル
MCでは吉田崇展(Vo/Gt)が「残念ながら友達が4人ほど来れなかったのですが」とサスフォー不在に触れ、「それを補って余りある何かを我々3組が――」と意気込む。また、観客は“とても他人”と認識していたが「1年経ってそれだけの話じゃ全然なかったと感じています」と語り、「私から、このバンドから、音楽をやる人間から、すべての方へのラブソングを唄います」と「友達のうた」に繋げた。リリースはされていないがライブでは度々演奏されているこの曲は、“薄暗い小屋で偶然居合わせた1匹と1匹”の物語が唄われている。つまりそれって……という部分は、この場にいる人ならば想像に難くない。
ズーカラデル
Suspended 4thはおそらく2番目に演奏する予定だったのだろう。次のバンドが登場する前に、ここで、Suspended 4thのライブ映像(2020年に実施できた公演のダイジェスト)が流された。その映像を観て「うわ、これは生で観たかった!」と思ったのが正直なところ。彼らの地元である名古屋公演での復活、(翌日の大阪公演も含め)4組共演の可能性に期待したい。
ハンブレッダーズ
ハンブレッダーズ
「スペースシャワーが企画し続けて、あなたたちが待ち続けてくれたから、今日この日が来ました。ありがとう!」。ハンブレッダーズは1曲目に「銀河高速」を鳴らすことで、ライブという場所をそれぞれの立場から守っているバンド、ツアースタッフ、観客のことを讃えた。握り拳を突き上げる観客の動きは力強く、みずみずしいバンドサウンドを前にして昂る気持ちと、大声で唄いたくなるようなメロディを前にしても声を出せない状況に対するもどかしさがないまぜになっている印象を受ける。そんな観客と対面するバンドは、疲れも何もかも恐れぬ勢いでぐいぐいとアクセルを踏んでいく。
ハンブレッダーズ
ハンブレッダーズ
MCでは「生の熱量に勝るものは今のところないと思っています」とムツムロ アキラ(Vo/Gt)。さらにズーカラデルの出だしの一音に(声出しをしていたムツムロを除く)メンバー一同「ああ、これだ!」と感じたことを明かした。観客と熱を渡し合い、対バン同士刺激を受け合う醍醐味を味わいながら、ラストの「ライブハウスで会おうぜ」まで駆け抜けていく。締めのキメを何度も鳴らしながら、自身の楽器を弾き倒す姿からはライブハウスに対する愛情が滲み出ていた。
ハンブレッダーズ
KOTORI
トリを務めたのはKOTORI。2020年7月、つまりコロナ禍に発表された「We Are The Future」は日の出のように美しい曲だ。曲が進むにつれて音の重なりが増えることで――タム中心だったリズムワークの重心を上がっていくことで、全体がじわじわと熱を帯びていく。逆光の照明を背負いながら演奏するメンバー。<音楽で大切なものを守れますように><We are the music.><We are the future.>と唄うこの曲が1曲目に選ばれた意味がしっかりと伝わってきた。
KOTORI
KOTORI
KOTORI自身ライブをするのは半年ぶりらしく、MCでは横山優也(Gt/Vo)が「半年分の鬱憤を解き放って帰ろうと思いますので、最後までよろしくお願いします」と語る。鬱憤といえども一人よがりにぶつけるようなことはなく、ときには前2組のライブによって興奮しきった観客の心を包み込み、ときには燃えきった芯の部分をもう一度熱くさせてくれるような(フロアの熱気に横山が親指を立てて返す場面も)、ラストにふさわしいライブを行った。観客の手拍子に応えてのアンコールでは、「トーキョーナイトダイブ」を演奏。この夜をまるごと抱きしめる。
KOTORI
KOTORI
冒頭に書いた通り、『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2020』は確かに例年とは異なる形になった。しかし厳しい2020年を経て、この東名阪を走り切ったあとに得られるものは、どの年の出演バンドとも違う“2020年組”特有の経験となることだろう。単に仕切り直すのではなく、ライブの価値を再確認し、ここから新しく始めようとしている4組のエネルギーをぜひともライブハウスで目撃してほしい。彼らのリベンジは4月13日の愛知・名古屋 CLUB QUATTRO公演、そして4月14日の大阪・BIGCAT公演へと続いていく。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=藤川正典
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