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Maki バンドの第二章を告げる新作『creep』での新たな挑戦、そして前作『RINNE』以降の心境の変化やコロナ禍で見つめ直したこととは

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Maki

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これからぐんぐん頭角を現していくことだろう――。
“日本語ロックバンド”を掲げる名古屋の3人組・Makiが2020年9月2日にリリースした1stフルアルバム『RINNE』を聴いた時の印象どおり、全国50か所を超える『RINNE』のリリースツアーを成功させた彼らはさらなる注目を集め始めていた。
『RINNE』のリリースから10か月。彼らが7月21日にリリースする1st EP『creep』は当然、そんな追い風を感じながらの制作だったと思うのだが、メンバーたちは追い風に乗ってその先を目指すなら、その前にまず自分たちの音楽を今一度、研ぎ澄ませる必要があると考えたようだ。轟音のギターロック・サウンドの中で持ち前の叙情性が息づいているという意味ではMakiらしさは何も変わっていない。しかし、『creep』の5曲がリスナーに与えるのは、メンバーたちも言っているとおり第2章の始まりだ。
そう、これは始まりに過ぎない。
自分たちのユニークさを皮肉交じりに表現した『creep』というタイトルに賛否どちらも外野の声には惑わされず、自分たちのスタンスを貫き通すというコロナ禍におけるツアーの中で噛みしめた思いが込められていることを知った今は、すでに始まったMakiの第2章がどんなことになるのか楽しみでしかたがない。
山本響(Ba/Vo)、佳大(Gt/Cho)、まっち(Dr/Cho)の3人が『creep』における新たな挑戦に加え、『RINNE』以降の心境の変化とコロナ禍で見つめ直した自らの矜持を語ってくれた。

――いただいた資料に<2020年9月2日1st Full Album『RINNE』をリリース。全国約50か所を超えるリリースツアーを敢行。2021年3月RINNE Release Tour「大四喜」-Final Series- / 大阪Music Club JANUS・渋谷CLUB QUATTRO・名古屋CLUB QUATTROは全て即完>とつるっと書いてありましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期になったライブがあったことに加え、山本さんがポリープになったことを考えると、実はかなり大変だったんじゃないですか?

まっち:大変でしたねぇ。

佳大:うん。

山本響:予定を立てても変わっちゃうんで……。

――まぁ、大変だったとしか言えないですよね(苦笑)。コロナ禍でツアーを行うわけですから、決意と覚悟を持って臨んだと思うのですが、途中で気持ちがめげることはなかったですか?

山本:めげることはなかったんですけど、新型コロナウイルス感染防止のガイドラインに沿った上でツアーを始めた当初は、やらなきゃいけないことが増えると同時にやったらいけないことも増えるという変化にちょっとびっくりしましたね。

――やりづらいと思うことも?

山本:いえ、それはなかったです。ツアーを始める前に自分たちのライブのスタンスを貫こうって決めていたんです。だから、僕たちがやることは変わらなかったんですけど、お客さんはライブの楽しみ方が変わったという印象を持ったんじゃないかなと思います。

――なぜ、自分たちのライブのスタンスを貫こうと考えたんですか?

山本:変える必要がないという考えに至ったからですね。フロアにいるお客さんが盛り上がるのはうれしいし、お客さんが楽しそうにしている姿を見るのも好きですけど、そういうライブができなくなったからって自分たちがやりたいことを曲げてまで変える必要はないんじゃないかって思ったんです。もちろん、そこで良い方向に変わっていったバンドがたくさんいるのも知っているし、そういう状況でもお客さんが楽しめるようなライブをするバンドも観てきましたけど、自分たちがそれをやるのはまだなのかなと思って。とりあえずこの状況でも、自分たちのライブのスタンスでどこまで伝えられるのかっていうのは、やっぱり感じておかないと。それを感じておくのと、感じておかないのとでは、この先が違うんじゃないかなと思ったので、スタンスは曲げずに行こうと決めました。

――伝えられたという手応えはありましたか?

山本:僕は伝えられたと思います。すごくいいツアーだったと思うんですよ。これからコロナ禍でもツアーはたくさんしていくと思いますけど、『RINNE』のリリースツアー『大四喜』は、2度はないんじゃないかと思います。ああいう感覚のツアーは。

――佳大さんとまっちさんもツアーの感想を聞かせてください。

佳大:響と同じように最初は戸惑いがありましたけど、これまでお客さんの盛り上がりにちょっと甘えて、自分が気を抜いていたところをちゃんと気にすることができるようになったと思います。当たり前のことですけど、演奏をちゃんとするとか……お客さんが声を出したり、体を動かしたりできなかったとしても、かっこいいライブをすれば、ちゃんと伝わるんだって改めて思えたのは大きかったですね。

まっち:正直、僕はツアーが始まる前は、こんな状況でツアーをやって楽しいんだろうかって思ってたんです。僕は楽しいから音楽をやってるし、バンドもやってるし、ライブもやってるってところがまずあるから、基本、楽しくないことはやりたくないんです。でも、いざ始まったら自分たちも楽しいし、お客さんも楽しんでくれていたので、もちろんこれまでとは違う楽しみ方ですけど、こっちがかっこいいライブ・いいライブをすれば、やっぱりお客さんも楽しんでくれるんだなっていうのがわかって。なので、ほんとにやってよかったと言うか、ツアーをすることによって、どういう状況でも自分たち次第でかっこいいものを見せられるっていうことがわかったんです。

――その経験がまた1つ自信になった、と?

3人:(声を揃えて)そうですね。

――そんなふうにツアーをしていたこともきっかけの1つになったんじゃないかと思うのですが、バンドも注目度もぐーんと上がりましたね。

山本:どうなんでしょうね。

――わかりやすいところで言えば、『バズリズム』の「これがバズるぞベスト10 2021」で第9位に選ばれましたが。

山本:あぁ! はい。

――『RINNE』がスマッシュヒットしたり、段々、ライブの規模が大きくなっていったり、確実に注目度は上がってきていると思うのですが、そんな状況をどんなふうに受け止めていますか?

山本:『バズリズム』のランキングに入った時は、何も知らされてなかったので、オンエアを見逃したんですよ。普通に見たかったですね(笑)。

まっち:見てないんだ?

佳大:ちゃんと見たよ。

山本:あとから聞いて、うれしいなって思ったんです。バズることがいいことなのか、悪いことなのか、自分ではまだ判断しかねているんですけど、どういう状況でも、そんなふうに注目してくれる人がいて、評価してくれる人もいるっていうのはうれしいことだと思いました。会場のキャパも大きくなっていって、コロナ禍だから入場者数は制限されますけど、経験としていろいろな場所でできるのはうれしいですね。その経験を生かせるようにがんばれたらって最近は思ってます。

――じゃあ、「俺たちきてるな」っていう思いはそんなにないんですね?

まっち:ないですね。

山本:それこそ給料が爆上がりしたら思いますけどね(笑)。むしろ、気を抜かないようにしようと思ってます。ここでちょっとでも怠けたら、それこそ注目してくれてる人たちにはバレると思うんですよ。

――『RINNE』をリリースしてから9か月。そんなに気持ちの変化はなかった、と?

山本:ツアーしながらバンドが良くなってきてるとは思ったし、応援してくれる人が増えてきたってことも感じたし。でも、「俺ら、いい感じに軌道に乗ってるよね」とまでは、まだ思ったことはないです。

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――そういう気持ちが今回の『creep』というタイトルに繋がったんですか? Creepには、這うとか、のろのろ進むとかという意味もあるじゃないですか。

山本:いやぁ、そこまで考えてつけてないです。

――では、『creep』というタイトルはどんなところから?

山本:今回の5曲は挑戦することも多かったせいか、これまでと比べてちょっと変わった曲ができたという意味と、自分の好きなバンドに「Creep」という曲があって。

――レディオヘッドですよね?

山本:そうです。レディオヘッドの「Creep」がすごく好きなんです。しかも、この間のツアー中にボーカルのトム・ヨークの思想に感銘を受けたこともあって、指標という意味でも残しておかなきゃいけないと思って、『creep』とつけたんです。

――トム・ヨークのどんな思想に感銘を受けたんですか?

山本:僕たちは、自分たちのスタンスを変えずにツアーをやるって自分たちで選んだわけじゃないですか。トム・ヨークって自分の中に“これだ”という世界観を持っていて、それを提示さえできれば、それに対して周りから何を言われようが我関せずという人だと思うんですよ。ツアーを回りながら、そういうところを見習わなきゃと思ってました。

――ですが、よりによってキモい奴という意味もある『creep』をタイトルにしなくても(笑)。

山本:でも、僕自身もキモい奴って言われることが多いんで(笑)。

佳大:そうだね(笑)。

山本:でも、気に入ってるんです。別に悪いことだとは思わない。キモい奴って言われても、自分が正しいと思ってたら、僕は変わらないと思うんですよ。ただ、信念が揺らぎそうになることもあるかもしれない。だったら、指標として掲げておかないとって思ってタイトルにつけました。

――ところで、今回はどんなことに挑戦したんですか?

山本:これまで僕が弾き語りしたものをスタジオに持っていって、セッションしながら3人でアレンジしてたんですけど、僕がある程度DTMで曲を作っていったんです。

――それはどんなきっかけから?

まっち:『RINNE』までが第1章で、次からが第2章というイメージで作ろうっていう時に「勢いで作っちゃダメだよね」って話になったんです。「今まではその勢いが良かったけど、第2章というイメージを形にするなら、じっくり考えて、練って練ってってやらないといけないよね」って。それでそういう曲の作り方に変えたら、けっこう曲作りがするすると進んでいったんです。

――つまり、今回は明らかに第2章のスタートという意識があったわけですね?

山本:そうです。

――第2章をスタートするにあたって、自分たちはどうしていったらいいと考えたんですか?

山本:伸ばせるだけ足を伸ばしていきたいんですけど、それにはいろいろなジャンルのバンドと対バンしながら、「Makiってかっこいい」と思ってもらえるようなバンドにならないと今後がないと思ったんです。そこから、自分たちにできることと言うか、自分たちの武器を増やしていかないとと思って、これまでの勢いにプラスして何が必要なのか考えました。

――『creep』には全5曲が収録されていますが、他にも候補曲はあったんですか?

まっち:いくつかボツになった曲はあった気がするけど、全然憶えてないなあ。

――たくさんある中から5曲を選んだのではなく、作る中でこの5曲が残っていったわけですね。

まっち:曲のタネが何個もあって、それを響が持ってきたとき、「これはいいんじゃない?」「これは作りたいよね」って、そこからちゃんと完成したのが今回の5曲だったんです。

――『RINNE』の時よりもアレンジがストレートになったという印象がありました。

山本:『RINNE』の曲は勢いもありつつ、歌に伴奏がついているというイメージだったんですけど、それを今回はシンプルで、かっこいいバンド・サウンドとして成り立たせたかったんです。

――成り立たせるために、どんなことをしたのでしょう。

山本:今回、メロディがあるところだけがサビなんじゃなくてというイメージで全曲作っているんです。その中でギター、ベース、ドラムのキメの印象を際立たせたり、メロディも削るところはけっこう削ったりしました。かなり削ぎ落したんじゃないかと思います。

――まっちさんは曲作りを振り返って、いかがでしたか?

まっち:勢い以外にもいろいろな武器を増やしていこうという意味で、曲を作る響から求められるドラムが変わってきたと感じました。その中で、好き勝手にやるだけじゃダメだと思って、引き出しを増やそうと考えたんです。そういう部分ではドラムはけっこう引き算していきました。足していくほうが簡単なんですよ。だから、そのあたりはちょっと苦労したところもありますけど、新しいことと言うか、今まで自分がやってこなかったようなことをいろいろやっているので作っていて楽しかったです。

――どの曲が今までと一番違いますか?

まっち:一番わかりやすいのは、3曲目の「車窓から」。単純に拍子が違うんです。4分の4拍子じゃなくて、4分の3拍子で曲が進んでいくんですけど、Makiの中で今まで3拍子の曲ってなかったから、一番苦労したけど一番おもしろかったです。3拍子のドラムのフレーズという引き出しがなかったのでいろいろ試しました。

――佳大さんはいかがでしたか?

佳大:僕は逆に足しました。5曲中、リード・ギターがしっかりと入っているのは2曲しかないんですけど、その2曲は全編通してずっとリード・ギターが鳴っていて。

――それは「車窓から」と。

佳大:あと、1曲目の「Soon」がずっとリード・パートが入っているんですけど、今までずっと入っていることがなかったんです。『RINNE』を作った時は、『RINNE』の前の曲よりもリードをガツっと入れたんですけど、サビには入ってなかったんです。だけど、今回は逆にサビにリードを入れてみて。全体の割合としてはリードが減っているんですけど、より印象に残るものになっていると思います。

 

――「車窓から」は歌の裏でずっとリード・ギターが鳴っていますが、ボーカルとは別にもう1つメロディがあるというアプローチなんですか?

佳大:はい。歌えるギターが好きなんです。そこは意識しました。

――「車窓から」と最後の「from」の歌詞からは、ツアーの中で改めて歌うことを意識したことが窺えます。

山本:「車窓から」はツアー中から歌詞を書いていたので、ツアー中に自分が感じたことがもろに出ているんじゃないかと思います。「from」はライブハウスのことを思いながら書いた曲です。帰るところなのか、行くところなのかわからないけど、自分たちにとってライブハウスがどういうところなのかという思いが出ているんじゃないかな。

――「from」の<金にはならないが 僕はずっと歌うのさ>の歌詞は、これからずっと歌っていくんだという改めての宣言にも思えますが。

山本:そうなのかな。年も年ですし、もう後戻りはできないと思うんですよ。もっとも後戻りする気はさらさらないですけど、その時思っていたことが自然に出たんだと思います。特に<金にはならないが>は(笑)。ほんと、金にならないと思いますもん。

まっち:普通に働いていたほうが稼げるもんな。

山本:うん、ほんとに。でも、それがまたロマンがあって最高だと思いますけどね。

――お金には代えられない体験ができる、と。曲作りに時間を掛けた分、レコーディングはスムーズだったんじゃないですか?

山本:いや、大変でしたね。レコーディング当日に足したいと思ったものを思いついたら足したりとか、逆に要らないと思ったら削ったりとかっていうこともありつつ、もう1曲作らないとってなったりして、けっこう大変でした。最後の「from」はレコーディング中に作ったんですよ。

まっち:最初のリフだけ元々あって、それをどう曲にしていこうかってスタジオで話し合いながら作っていったんです。

――今回の推し曲を1人ずつ教えてください。

佳大:僕は2曲目の「fall」です。

山本:あ、僕も!

まっち:そうだね。

――え! みんな「fall」なんですか?

佳大:大好きです。

山本:マジでいい曲ですね。

まっち:名曲だと思います。優劣はつけられないけど、「fall」だけはね。でも、誰か1人ぐらいはリード曲の「Soon」を言っておいたがほうがいいんじゃない?(笑)

山本:確かに。いや、「Soon」もすごくいい曲なんですよ。

佳大:ただ、気に入っている度合いで言ったら「fall」っていう。

――佳大さんは「fall」のどこが気に入っているんですか?

佳大:何て言えばいいのかな……この曲ってそんなに気張ってないじゃないですか。僕たちの曲ってガーンっていうのが多いから、そういったところで聴きやすいっていうのもあるし、秋の曲だから好きっていうのもあるし。

山本:僕も季節だったら秋が好きだな。「fall」は、サウンドとか全部を通しての情景描写とか、自分の中の課題が一番こなせた曲なのかなって思います。そういうところで苦労した分、一番気に入っていますね。

まっち:曲が進んでいくにつれ、いろいろな情景が見えると言うか、聴きながら明確に映像が浮かぶんですよ。あと、やっぱりメロディがすごくきれいだから、ドラムを叩いていても楽しいんです。

山本:誰もリード曲を選ばないというまさかの事案が発生するっていう(笑)。

まっち:念のためリード曲バージョンも録っておきますか? 誰か1人ぐらい(笑)。

――逆に「fall」は、なぜリード曲にならなかったんでしょう?

佳大:うちの社長がリード曲は「Soon」って決めたんですよ。

まっち:どれがリード曲でもいいんです。もちろん「Soon」も好きですよ。というか、全曲が好きです。

山本:曲を作りながら、今までどれをリード曲にしたいって思ったことはないんです。好きじゃないんですよ、リード曲って言葉が。優劣がつく気がして。聴いている人は、これがリードだねって思うことはあるかもしれないけど、リード曲って文化はなくなったほうがいいと思いますけどね(笑)。個人的には。

Maki

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――『creep』のリリース後は、『「creep」Release Tour「人和」』と題した長いツアーが始まります。初日となる8月10日のZepp DiverCity TOKYOはMakiにとって最大キャパになるわけですが、最後にその意気込みを聞かせてください。

山本:誰からいきますか?

まっち:佳大君からいく?

佳大:がんばりますだけじゃダメだよね?(笑)

山本:それはもう限界が来てる。がんばりますがかわいそう(笑)。

――(笑)。キャパが段々大きくなることは、どんなふうに受け止めていますか?

山本:たくさんの人に同じタイミングと言うか、同じ時間に見てもらえることはうれしいです。同じ時間を共有できる人の母数が増えるわけじゃないですか。それは素直に、とても貴重なことだと思います。

――では、そこでどんなライブを見せたいと考えていますか?

佳大:『RINNE』が第1章の終わりと言っていたので、第2章の始まりの1歩目にふさわしいライブができたらいいと思ってます。

まっち:変わった、変わったとは言いましたけど、Makiの大元は全然変わってないと思うので、やることはZepp DiverCityだろうが、小さいライブハウスだろうが変わらないし、心持ちも変わらないと思います。その上で、変わってないけど変わった、変わったけど変わってないライブを見せられたらいいなと思います。

山本:Zepp DiverCityか。会場も大きいし、ステージも大きいし、いろいろな人も見てくれるということで。第2章の幕開けという位置づけのライブなので……いつもどおりがんばります!

まっち:あぁ~。ボーカルがそれを言っちゃダメだって(笑)。

山本:大きなガンダムがあるところですよね?

まっち:それが楽しみなんでしょ?

佳大:ガンダム、楽しみだよね(笑)。

山本:ガンダムぶっ壊そう(笑)。

まっち:あぁ、それくらいの爆音でね。

山本:大きな会場だからめっちゃ大きな音を出せるのが楽しみですね。

取材・文=山口智男 撮影=大橋祐希

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