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the engy・山路洸至、バンドの始まりから約2年越しのメジャー1stアルバム『On weekdays』での挑戦までを語る

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the engy 山路洸至 撮影=ハヤシマコ

the engy 山路洸至 撮影=ハヤシマコ

 京都で結成されたハイブリットな音楽を鳴らし、2019年10月30日にミニアルバム『Talking about a Talk』でメジャーデビューしたバンド、the engyが7月7日(水)に、待望のメジャー1stフルアルバム『On weekdays』をリリースした。2020年2月に配信リリースされた、ドラマ『LINE の答えあわせ~男と女の勘違い~』主題歌の「Diver」など15曲を収録した最新コンセプトアルバムは、ロックやソウル、R&Bやヒップホップなど、多彩な音楽要素が色鮮やかに鳴り響く、「1日の時間の流れ」を表現している。1組のカップルの日常を描いたアルバム制作の背景やthe engyというバンドの始まりについて、ボーカル&ギターの山路洸至に話を訊いた。

the engy 山路洸至

the engy 山路洸至

ーー京都で結成されたthe engy。京都の音楽シーンにはどんな印象がありますか?

京都は、地域性みたいなものがありつつ、「好きなことやったらいいやん」いう風潮があるので、僕らみたいな、それまであんまり京都とかにいなかった感じのバンドでも伸び伸び活動出来る雰囲気がありますね。

ーー結成当初は京都のどんなライブハウスに出演されてたんですか?

京都やと京都MOJO、GROWLY、Live House nano、ライブハウス ガタカとか。出演はあんまりしてないですけど、KYOTO MUSEの方にもすごくお世話になってました。

 ーー当時から今も交流のあるバンドはいらっしゃいますか?

 京都のバンドやと、今も交流があるのはthe McFaddinとかですね。

 ーーそもそも他のメンバーの皆さんとはどんなふうにthe engyを結成することになったのでしょうか。

僕自身は大阪出身なんですけど、京都の同志社大学に通ってて。最初に僕とベースの濵田(周作)が大学で知り合ったんです。濵田は僕と同い年なんですけど、1年遅れて入学してきたので後輩というか。バイトが同じやったこともあり、僕の作ったデモを聴いてもらったりしてて、いいっすね」と言ってくれてたんです。もともと濵田はギター&ボーカルだったんですよ。でも大学のサークルでバンドを組んでやることになった時に、ベースやってよ」と濵田にお願いして。未だにそのままがんばってもらってる感じですね。優しいやつです(笑)。

ーーほんとですね(笑)。ドラマーの境井(祐人)さん、ギターの藤田(恭輔)さんとの出会いは?

濵田とは大学の中だけで活動してたんですけど、外でも活動することになった時に、当時一緒にやってたドラマーが脱退することになり、僕と濵田がずっと行ってたスタジオの方から、ドラマーの境井を紹介してもらったんです。で、その後に今も京都にいるギターの藤田と知り合って、the engyを結成した感じですね。

the engy 山路洸至

the engy 山路洸至

ーーメンバー同士、音楽的なルーツは近いんですか?

ルーツは全員バラバラですね。僕自身はリンキン・パークレッド・ホット・チリ・ペッパーズがずっと好きで。多分、今の音楽からは想像がつかないと思うんですけど(笑)。リンキンとレッチリが一緒にやったら面白いかなというとこでずっと音楽をやってきてて。その後、エド・シーランチェット・フェイカーみたいな、1人でもやるけどグルーヴもある音楽を通って、だんだん今の形に流れていった感じですね。

ーーとなると、メンバー4人の共通項は……。

僕が作ったデモ音源をいいねと言ってもらえることだけが共通点、ですね。なので、メンバー同士で一緒に遊びに行こうぜとかはないです。もちろん、一緒にいたら一緒に呑みますし、仲は良い方だと思いますけどね。

ーーメンバーの音楽的なルーツが違うからこそなのか、the engyの音楽は多彩な要素が融合しているというか。そこに柔らかで詩情豊かな山路さんの歌声が合わさって、唯一無二の世界になる。

ありがとうございます。僕、もともとはボーカル志望じゃなかったんですよ。ギター志望だったんですけど、一緒に活動してくれるボーカルがいなくて、手探りで弾き語りをしていて。普通の男性とキーが違うというか、普通の男性の方の曲が歌えないので、ずっと歌が下手やと思ってたんです。

ーーなんと! しかし、確かに言われてみれば今お話されてる声も、いわゆる男性声としてはキーが半音ほど高いかもしれない。かと言って声質が細いわけでもなく……不思議ですね。

そうなんですよ、なぜか。ただ、当時はもっと潰した声でわーと歌ってたんです。1人でエドシーランみたいなやり方で弾き語ってたんですよね。友達がいなかったもんですから、1人でルーパー(演奏フレーズを記録して再生し続けるエフェクター)を使って(笑)。

ーールーパーは使いこなすのが大変でしょ?

そうなんですよ。なので、それを褒めてもらえるかと思ったら、せっかく歌うまいんやから、もっと歌をちゃんと歌ったらいいのに、みたいなことを言われて(笑)。歌がいいなんて、自分では思ってもいなかったから驚きましたね。最近気づいて意識してるのは「あほんだらっ!」という気持ちと、「愛してるぜ……」の気持ちを半々で出すといい声になる気がしてて。「あほんだら」が勝つと迫力は出るんですけど、突き放す感じになってしまったり、「愛してるぞ」が勝ち過ぎると押しが利かず、迫力がなくなってしまうので、半々で出ると、ちょうといい感じになるのかなと思いますね。

the engy 山路洸至

the engy 山路洸至

ーー今回のメジャー1stフルアルバム『On weekdays』からは、歌以外にもその辺のサジ加減が今まで以上に明確に感じられるかもしれない。ヒップホップとかソウルとか、the  engyの持つ多彩な音楽性のひとつひとつの要素が、かつてないほどはっきりと鳴り響くというか。そんな今回の「進化」には、何か理由が?

今回のアルバムは、去年の自粛期間で作ってたんですけど、音楽ぐらいしかやることがなくて。機材を買うことにのめり込んでいった……ということが、自分の中で進化につながったのかなと思います。

ーー今までと違うアプローチに挑戦することへ躊躇はなかったですか?

飽き性で、むしろ常に何か実験的なことや新しい要素を入れてないとしんどいタイプで。それに、僕らのバンドについてくれてる方は、本当に音楽を好きでいてくれる方ばっかりといいますか。別に僕ら、ビジュアルがキャッチーなわけでもないですし(笑)、音楽の良さやクオリティさえ出せていれば聴いてもらえるかなという思いがあるので、挑戦することへの怖さはあんまりなかったですね。

ーー英語詞の歌を聴く気持ち良さもthe  engyの魅力だと思います。今回、そこを超えた日本語詞やラップ的なアプローチが増えつつあるわけですが。

日本語詞についてはもともと、やってみたらとか、聴いてみたいとは結構言っていただいてたで、チャレンジしたら意外と出来ましたいう感覚が自分の中ではあります。英語がわかる方でも、意味がよくわからない言われる英語詞もありますし、絶対中身をわかってほしいと思って歌ってるわけではなく、世界観が伝わって欲しいと思って歌ってるので、日本語という武器が増えたことで、そういう部分がより見せやすくなったりするのかなという気はします。

ーーただ、日本語だと英語詞よりは意味がダイレクトに伝わるような……。

そうですね。とは言っても、ちょっとは何かわかってもらわないとイメージしづらい部分はあると思うんですよね。でも、そのフレーズを聴いただけでは何かわからないような曲もあると思っています。今回、「Driver」がいちばん最初に出来た曲なんですけど、<朝まで離さないでいて欲しい でもまた>というところだけ日本語で歌うことで「今日はもう何も(進展が)ないんやな」ということが伝わるかなと思っていて。

the engy 山路洸至

the engy 山路洸至

ーーだとしたら、まんまと術中にはまりました(笑)。<朝まで離さないでいて欲しい>の部分は、女性目線のフレーズかなという先入観があったけど、聴いているうちにどっちかわからなくなる面白さもあったというか。

それは「Driver」(ドラマ『LINEの答えあわせ~男と女の勘違い~』主題歌として2020年2月に配信リリース)をリリースした当時も言ってもらったんですけど、今回のアルバムには男女のカップル、2人の登場人物がいて。その2人がくっついたり離れたりしながら平日を過ごすコンセプトだったので、歌詞の視点はどっちでもいいというか。ジェンダーみたいなものをある程度なしにして作ったところがあったので、どっちで捉えてもらってもいいですし、男性にもそういう感覚があるので、出来るだけフリーな感じで聴いてもらえたらなという気持ちで作りましたね。

ーーアルバムに登場する2人の物語……前半は穏やかな感じで始まりますけど、中盤以降、ああ、これは何かが起きたないう展開になりますよね。

おっしゃる通りで、朝2人で目が覚めて……朝はすごいポジティブなイメージで。『On weekdays』=平日なので、片方が仕事に行っちゃうんですよね。で、会えなくなると気持ちがどんどんすれ違っていって、夜に大げんかして、片方が出ていっちゃうんですよ。それが「Sleeping on the bedroom floor」という、取り残された側の曲で。次の「Words on the paper」がもう1人の出ていった方の歌という感じで、アルバム全体の時間の流れだけ決めといて、曲ごとに時間帯をはめていくとストーリーが出来ていく感じですね。

ーー平日という日常にフォーカスしたアルバムが、それまでの日常が覆された自粛期間に作られたこと……すごく腑に落ちます。それにしても、登場人物を設定してからアルバムを作るのは、小説とか映画みたいな発想ですね。

曲作る時も映画音楽のイメージで作る時が多いですね。この映画に勝手に主題歌書こうとかの感覚があったりするので。映像とか、具体的なイメージみたいなものからインスピレーションをもらうことは多いですね。

ーーじゃあ、ミュージックビデオも山路さんたちが自らアイディアを?

今までは、この監督さんかっこいいよねという方にオファーして、その方に作品を仕上げてもらおういうテンションでお任せしてました。今作くらいからは、もっと曲を知ってもらうために、いくつかテーマをお伝えして作ってもらう機会が増えましたね。

ーーメンバーが野菜になるという発想もユニークな「Words on the paper」のミュージックビデオは?

あの頃ものすごく忙しくて、曲を作りながら頭の中でなぜか野菜が回ってたんですよ。で、野菜かっこええな、野菜は可愛いな思ってて「野菜でMV作ってください」と制作会社のプロデューサーの方にオファーしたんです。で、声をかけてくださった中から「野菜になれる」という案をくださった方がいらして、「これは面白い!」ということでできました(笑)。

the engy 山路洸至

the engy 山路洸至

ーーなるほど(笑)。アルバムもできたことですし、ライブで聴ける機会が待ち遠しいですね。

近いところだと7月24日(土)にワンマンライブ『WelcomeBackエビバデ』が心斎橋JANUSであるのと、8月1日(日)に大阪の舞洲で開催されるフェス『OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 20>21』に出演する予定です。

ーーちなみに、出演者としてのフェスの雰囲気は楽しめるタイプですか(笑)。

ああー(笑)、ふふっ。京都の『ボロフェスタ』に出させてもらった時に、めっちゃライブが重なってた上にまだ若かったこともあ、バーカウンターで満タンのウィスキーを飲んでライブしてしまいまして。大好きなMOROHAを見て、会場で知らんおっちゃんと一緒に号泣したことがあって以来、フェスのバックヤードではおとなしくしてます(笑)。でも『ジャイガ』は初の野外フェス出演なので、今からすごく楽しみですね。   

取材・文=早川加奈子 撮影=ハヤシマコ

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