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キングレコード民族音楽シリーズ「THE WORLD ROOTS MUSIC LIBRARY」全150タイトルをハイレゾ配信

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2008年7月9日にキングレコードよりCDで発売された民族音楽シリーズ、「THE WORLD ROOTS MUSIC LIBRARY」全150タイトル(CD191枚分)がハイレゾ化され、e-onkyo music、mora他ハイレゾ配信サイトにて5回に分けて配信が決定した。

その第1弾として7月28日からヨーロッパ、アフリカ、西アジア、中央アジアの32タイトルを配信開始(第2弾は8月25日、第3弾は9月29日、第4弾は10月27日、第5弾は11月24日に配信開始予定)。

音源は日本の民族音楽学の巨人、故小泉文夫東京芸術大学教授が1960〜70年代に行った貴重なフィールド・レコーディングから、2008年の最新高品質デジタル・レコーディングまでを網羅。地域では、最強のレパートリーを誇るアジア(日本を含む)をはじめ、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ各地域にわたり、またその中には、ユネスコの世界無形遺産に設定されているジャンルのものも多数揃えており、まさに世界最強の民族音楽シリーズにふさわしい内容となっている。民族音楽音源のこれだけ大規模なハイレゾ化は世界初の試みとなる。

CD発売当時の2008年7月9日に発行された「the world roots music library」のカタログには音楽家の坂本龍一氏からのコメントも掲載された。

そして、今回のハイレゾ配信開始に合わせてe-onkyo musicのWEBサイトにて音楽評論家、中東料理研究家としても知られるサラーム海上氏による「THE WORLD ROOTS MUSIC LIBRARY」紹介記事第1弾が掲載。その国や地域の音楽についての話や、特におすすめのアルバムをピックアップして紹介をしている。5カ月の連載形式で今後も記事が掲載される予定である。

坂本龍一氏コメント

※2008年7月9日発行「the world roots music library」カタログより

人類の共通遺産として次世代に

最近のDNAの分析によると、人類は約6万年前にとても少ない集団で、東アフリカを出たそうです。ぼくはいつもその頃の人たちが、どんな唄を歌い、どんな音楽を楽しんでいたのか想像します。そして、その人たち━つまり私たちの共通の祖先ですが━の音楽の痕跡がどこかにまだ残ってはいやしないかと、あちこち嗅ぎまわります。もちろんぼくが生きてきたたった数十年という歳月を眺めても、世界の音楽は大きく変化してきましたから、それに比べると6万年とは気が遠くなるほど長い時間であり、そんな遠い過去の痕跡なんかあるはずがない、と思う方もいるでしょう。どちらにしろ調べようがないことですので、ぼくはこの想像を楽しむ権利をこれからも行使することにします。

6万年という時間の中で、その人口の増大と生息圏の拡大につれて、人類の言語や文化がおどろくほど多様化したように、その音楽も世界のあちこちで多彩な花を咲かせました。まさに百花繚乱です。その中には、先祖たちが何十何百世代も大事に受け継ぎ、発展させてきた音楽もあるでしょう。空気の振動という、形に残らない音楽だからこそ、極めて注意深く誠心誠意守ってきたのです。

ところが20世紀に始まったメディアの発達と急速なグローバル化のせいで、その多様性が急速に世界から失われつつあるのは、こと音楽だけではなく言語や伝統的民族文化も同じです。この百年だけでも数千の言語が失われたとも言われます。音楽はどうでしょう。研究者に発見されず、登録されないまま失われた唄や音楽も、数知れずあるかもしれません。ぼくたちは、このような世界の多様な音楽を、これ以上失うわけにはいきません。それだけでなく、一度失われそうになったアイヌ語やゲール語が復活しつつあるように、なんとかそれらがこれからも人類の共通遺産として次世代に受け継がれることを、せつに願うものです。

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