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どんぐりず、Kroiを迎えて開催された熱狂の『4EP2 NO RELEASE PARTY』渋谷公演をレポート

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どんぐりず 撮影=Kanade Hamamoto

どんぐりず 撮影=Kanade Hamamoto

どんぐりず 『4EP2 NO RELEASE PARTY』 2021.07.09 渋谷WWW X

どんぐりずが2021年7月9日(金)渋谷WWW Xで主宰イベントを開催した。

もともとこの公演は『4EP2』リリースパーティの予定だったが、諸事情のため『NO RELEASE PARTY』に。そんなアクシデント(?)はもちろんまったく気にせず、メンバーの森、チョモランマ(この日“チョモ”に改名することを発表)は、変幻自在のビートメイク、快楽的なフロウに溢れたボーカルとラップによってオーディエンスの心と身体を揺らしまくる、鮮烈なステージを繰り広げた。

最初に登場したのは、Kroi。内田怜央(Vo.)、長谷部悠生(Gt.)、関将典(Ba.)、益田英知(Dr.)、千葉大樹(Key.)による新世代のハイブリッド・バンドだ。最初のナンバーは、彼らのライブアンセムの一つである「Monster Play」。オーセンティックなファンクに根差したグルーヴが瞬く間に会場全体を包み込み、観客は気持ちよさそうに身体を揺らし始める。内田が放つフロウの気持ち良さ、強靭にしてしなやかなアンサンブルからは、2018年に結成以来、ライブの現場で鍛えられた音楽性と“俺たちを見ろ!”と言わんばかりの絶対的な自信が真っ直ぐに伝わってきた。

Kroi 撮影=Momo Angela

Kroi 撮影=Momo Angela

Kroi 撮影=Momo Angela

Kroi 撮影=Momo Angela

「どんぐりずファンのみなさん、調子はいかがですか? Kroiです。(拍手を返し,反応を見て)いいねえ、いい客持ってるね!」(内田)と軽く挨拶し、長谷部のギターカッティングから「Custard」へ。BPMと演奏の強度を一気に上げ、会場のテンションをナチュラルに引き上げてみせる。曲をブレイクさせ「久々の対バンだから緊張するわ。今日は“NO RELEASE PARTY”なんだね。おめでとう」(内田)とトークを挟む余裕もカッコいい。Kroiは現在、メジャー1stアルバム『LENS』を携えたリリースツアーの真っ最中。バンドのコンディションは完璧だ。

ソウルフルなグルーヴをたたえた「Page」(終盤、「LET’S GROOVE」のリフを挿入するアレンジも)でさらに観客を躍らせた後、どんぐりずとの交流についてトーク。2020年1月に行われた新宿LOFTでのイベント「J.C.T」で初めて対バンした両者は、互いに「かっこいいね」と称え合ったという。「それから1年半経って、こんなデカいところで一緒にやれてうれしいです」(内田)というコメントは、同世代のKroiとどんぐりずの躍進ぶりをはっきりと証明していた。

Kroi 撮影=Momo Angela

Kroi 撮影=Momo Angela

Kroi 撮影=Momo Angela

Kroi 撮影=Momo Angela

この後は「Balmy Life」「夜明け」「selva」「帰路」とアルバム『LENS』の収録曲を次々と披露。「人間にはこんなふうにバカになれる空間が必要。どんぐりずのライブでバカになってください」(内田)という言葉から、極上のファンク・チューン「Fire Brain」を放ち、「楽しんで!」と呼びかけてステージを去った。ファンク、ソウル、ヒップホップ、ロックなど融合させた音楽性、グルーヴと歌心を持ち合わせた内田のボーカリゼーション(挑発的にしてキュートな存在感も魅力的だ)を軸にしたパフォーマンスはインパクト十分。90年代に起きたミクスチャー・ロックのムーブメントから30年。高い演奏能力と自由奔放なアティチュードを兼ね備えたKroiの登場を心から祝福したい――そんなことまで考えてしまう圧巻のステージだった。

どんぐりず 撮影=Kanade Hamamoto

どんぐりず 撮影=Kanade Hamamoto

どんぐりずのアクトも、既存のフォーマットを軽々と刷新する、新世代アーティストの才能を強く実感させられた。オープニングを飾ったのは「dambena」。浮遊感漂うチルなトラック(途中でドラムンベース的なビートを挿入)のなかでシャープなラップを突きさす森、滑らかなメロディを響かせるチョモ。瞬く間に会場の雰囲気を一変させ、心地よい一体感を生み出す。さらにプリミティブなビート、ニューウェイブ的シンセサウンド、“超どうでもいいよ/オンボロのエゴ”というラインが溶け合う「マインド魂」、80年代後半のハウスミュージックの進化型と称すべき「ジレンマ」をシームレスつなげた後、「遊ぼうぜ、適当に。最高」(森)という軽い挨拶とともに「NO WAY」へ。バウンシーに飛び跳ねるトラックが身体の深い部分まで届くこの曲は、どんぐりずの特徴の一つである、言葉の鋭さとフロウの気持ち良さが端的に示されたナンバー。<死ぬまで死なない適当やっとけ/life is a one game/そんなん当たり前やることやっとけ/money丸儲け>に象徴される、彼らのアティチュードが刻まれたラインを浴びながら、心と身体を思い切り解放させる。このドラッギーな効果こそが、どんぐりずのライブの魅力なのだ。

「今日は“NO RELEASE PARTY”ということで。でも、曲は全部できちゃったんだよ。今日はそんな新曲を……」

「やるよ」

「めちゃくちゃ最高だから。ビックリするよ」

「偉そう(笑)。そんな感じになってくんだ?」

どんぐりず 撮影=Kanade Hamamoto

どんぐりず 撮影=Kanade Hamamoto

どんぐりず 撮影=Kanade Hamamoto

どんぐりず 撮影=Kanade Hamamoto

というやり取りの後は、7月7日に先行配信された新曲「ベイベ」。オーセンティックなR&B、ファンクのエッセンスを近未来的なダンストラックに昇華させ、「行きたい遠く どこまでもどこまでも」「遊び足りない遊び足りない」というフレーズを漂わせるこの曲は、彼らの音楽が自由に広がり続けていることを示していた。

一瞬のギターカッティングを合図にドープなビートが鳴り、「powerful passion」へ。ストイックかつコミカルな森のラップ、「とりあえず歌えばいい疲れたら踊ればいい」と気持ちよく歌い上げるチョモのボーカルのコントラスがめちゃくちゃ気持ちよく、観客もハンドクラップで応える。

どんぐりず 撮影=Kanade Hamamoto

どんぐりず 撮影=Kanade Hamamoto

どんぐりず 撮影=Kanade Hamamoto

どんぐりず 撮影=Kanade Hamamoto

「かなりアガったから、ゆるめにのんびりいきましょう」(チョモ)という「domingo」でクールダウンした後、「4EP2」の収録曲「Just do like that」「Woo」を続けて披露。楽曲の内容はぜひリリース後に確認してほしいが、彼らの超ハイブリッドな音楽がさらなる進化を果たしているのはまちがいない。

「音楽くらいやりてえよな。めちゃくちゃ楽しい。ラスト1曲やって、アンコールもらってもう1曲やるから」(森)と「E-jan」「nadja」を放ち、ライブは終了……と思いきや、BGMとして流していた新曲に反応した森が「あ、これも歌うわ」といきなりパフォーマンス。拍手喝采のなかで、ライブはエンディングを迎えた。グライム、UKドリル、トリップ・ホップ、ハウス、フューチャー・ベースなどを行き来する独創的なトラック、“死ぬまで生きて、楽しいことをやり続ける”というスタンスに貫かれたリリック、観る者の感情を解き放つ森、チョモの存在感をたっぷりと見せつけたどんぐりず。新作「4EP2」は8月18日リリース。この日のライブでも「かなりやばいEPになったと思う」(チョモ)「いちばん気持ちいいから」(森)と語っていた本作によって、彼らの評価はさらに上がるはず。2021年後半、どんぐりずは音楽シーンのど真ん中に向かって突き進むことになるだろう。

 

取材・文=森 朋之

どんぐりず / Kroi 撮影=Momo Angela

どんぐりず / Kroi 撮影=Momo Angela

どんぐりず「ベイベ」

 

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