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ヴァイオリニスト・川井郁子にとっての映画、そしてその音楽とは? 「その映画を観た頃の、宝物のような時間を思い出し、絆を温めてもらえたら」

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川井郁子 (c)Shintaro Shiratori, Sony Music Labels,Inc_up.

川井郁子 (c)Shintaro Shiratori, Sony Music Labels,Inc_up.

ジャンルのとらわれない幅広い活動を展開し、常に注目され続けているヴァイオリニストの川井郁子。2021年9月18日(土)には、大阪のザ・シンフォニーホールで『シネマパラダイス~名曲物語~』を開催する。

――『シネマパラダイス~名曲物語~』のプログラムについて教えてください。

毎年、ザ・シンフォニーホールで名曲のコンサートを開催していますが、名曲のなかでも今回は特に映画の音楽に絞ってお届けいたします。幅広い映画のジャンルのなかから選曲し、多くのみなさまになじみのある映画音楽を演奏したいと思っています。

たぶんフルの長さで聴くとある程度長い音楽を、ぎゅっと凝縮して、おいしいところを詰め込み、聴きやすく編曲し、たくさんの曲を聴いていただけるコンサートにしたいと思っています。

――どのように編曲するのですか?

それぞれの映画音楽には、それぞれ本来の編成がありますが、それをこのコンサートの編成のためにアレンジして、その編成ならではの魅力で聴いていただきます。

――編曲の秘訣を教えてください。

一番大事な要素のひとつは、ヴァイオリンの音色でメロディを聴かせる。そこはこだわってアレンジしています。ヴァイオリニストですから、ヴァイオリンで「聴かせどころはここだ」とか「こういう風に聴かせるのが一番よい」というポイントは分かっているので、そこはアレンジャーに相談して作ります。

川井郁子 シネマパラダイス ~名曲物語~

川井郁子 シネマパラダイス ~名曲物語~

――川井さんの映画の想い出を、ご紹介いただけますか?

映画に明け暮れていた青春時代……特に高校生のころは、雑誌も買ったり、映画館にもたくさん行ったりして、お小遣いはすべて映画へ消えていきました。それくらい、映画が好きでした。

私にとって映画を観に行くことは、特別な時間です。父と外へ遊びに行くことはほとんどなかったなか、映画館へ何回か連れて行ってもらいました。その時、父が涙を流すのを初めて見ました。父と映画を観たことは、私にとって宝物のような時間で、忘れられない思い出です。

映画そのものの素晴らしさもありますが、誰と一緒に観るか、人生のどの時期に観たかも、すごく影響していると思うのです。

――お父さまとお二人で?

そうです。今回、幅広い世代の人に来ていただきたいのは、やはりそういう映画自体の想い出もあるけれど、観た頃の自分の想い出をたくさん感じていただけたらと思っています。

言葉を交わさなくても、映画が繋いでくれ、お互いに良い時間を過ごし、感動を共有できたのが伝わるとかありますよね。父と最初に観た映画は、小学生の頃で、『ジョーイ』という映画でした。

――その時の映画の音楽のことは覚えていますか?

『ジョーイ』については覚えていないのですが、これも父と観に行った『炎のランナー』の、ヴァンゲリスの音楽は覚えています。

――映画の音楽は、街のなかでもよく流れていますね。

映画を観ることはなくても、音楽は聴く機会があると言いますか、音楽が想い出をずっと残してくれるようなこともありますよね。

中学生の私の娘は、昔の映画の音楽を知らないだろうと思っていたら、「これ、全部聴いたことがある」と言うのです。印象に残っているのだなぁと思いました。

――『シネマパラダイス』のプログラムで、とくに思い出深い作品を教えてください。

うーん、子どもの頃、学校から帰って観ていた『銀河鉄道999』。その音楽に作詞した奈良橋陽子さんの思いが心に残っています。その詞には、いじめで孤独感などを抱えている子どもたちに、もっと大きな世界が広がっていることをわかってほしいとのメッセージが込められているのだそうです。

『慕情』は、「これぞ映画音楽!」と感じた映画音楽のひとつなので、今回のコンサートには必ず入れたいです。それから、4月から東京と大阪でFMラジオを始めました。そのラジオのエンディングテーマ「So in Love」も演奏しようと思っています。この曲は、子どもの頃に観ていた『日曜洋画劇場』の淀川長治先生の解説のあとに流れていましたので、それこそ思い出深い映画の音楽です。

前回公演の様子(提供:ザ・シンフォニーホール)

前回公演の様子(提供:ザ・シンフォニーホール)

――このコンサートで共演するUF室内アンサンブルは、川井さんが教えていた生徒(※川井さんは大阪芸術大学教授)や関西の演奏家が集っているそうですね。

いつも大阪のこの公演のために集まってくれるアンサンブルです。教え子も入っていますし、教え子のお友だちも入っています。

とても一生懸命やってくれるのです。私が大阪でリハーサルを始める段階で、すでにアンサンブルはしっかりと固めてくれているのです。それよりも上をリハーサルでやることができるので、演奏のレヴェルが高くなります。

――若い演奏家が大きな舞台で演奏できる機会があるのは、とても素晴らしいと思います。

こういう舞台に立つのは勉強になるからとの気持ちが大きかったのですが、実際に音を出してみてびっくりしました。こちらの方が感謝しています。東京から来たアーティストから、「このメンバーを東京へ連れて行った方がいいんじゃない?」と言われるくらいなのです。

――UFとは、どんな意味があるのですか?

UFというのは、「アンフレームド(Unframed)」の略で、「越境」という意味です。

TOYO FMとFM大阪の番組のタイトル「Unframed notes」にも、いろんなジャンルを越境して演奏するという意味を込めています。

――川井さんは、クラシックにとどまらず、ジャズなどさまざまなジャンルの演奏にも取り組んでいます。『シネマパラダイス』もそのような趣きでしょうか。

そうです。それから、新しいアルバムがその時期に発売されます。ジャンルレスな名曲アルバムで、映画音楽も入っていますので、聴いていただきたいと思っています。

――読者のみなさまに、この公演にかける思いをお願いします。

私が小さなころから映画が大好きになったのは、先ほどお話しました家族との想い出につながっているところが大きいのです。家族や大切な方と一緒に来ていただけたら、きっといろんな想い出を語り合って、お話も膨らむと思います。幅広い世代のお客さまに楽しんでいただける、耳なじみのある曲ばかりですので、ぜひ連れ立って来ていただけたらと思います。このようなご時世ですので、明るくなりたい、絆を温めたいという思いにもなっていらっしゃると思いますので、そういうテーマのコンサートにもしたいと考えています。

取材・文=道下京子

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