PENICILLIN、閉塞した世の中をぶち壊す熱狂の「祭り 2021」ライブレポート到着
8月14日に、PENICILLINは東京・Veats SHIBUYAを舞台に「祭り 2021」公演を開催した。昨年も、今年の「祭り」でも、冒頭を飾ったのが「夏休み」らしい様子を歌に詰め込んだ「男のロマンZ」。千聖のギターが唸りを上げるのを合図に、祭りビートに乗って演奏がスタート。着物を着崩し、左肩を露出したセクシーな姿で「男のロマンZ祭りVer.)」を雄々しく歌うHAKUEI。メンバーみんな男の浪漫というよりも、男の妖艶さを振りまきながら、祭り特有の何かが起きそうなワクワクとした空気を作り出す。千聖の攻めたギターの演奏も、かなり冴えている。メンバーみんなで歌う「ブンブンブン、ブブンブブン」の声も、今宵は気持ちを嬉しく騒がせる。祭りビートに乗せ、童心に戻って無邪気にはしゃぐ。その感覚がたまらなく気持ちいい。
祭りとは、己を心の底から開放するイベント。その神髄をお前ら忘れてないだろうなと言うように、続いてPENICILLINは超攻撃的なスラッシュパンキッシュチューンの「Just a kiss on your 3rd eye」を観客たちへ突き刺した。浮かれはしゃぐのもいいけど、暴れることも忘れるな。それこそが、俺たちが求めている祭りの神髄だろうという意志を示す演奏だ。千聖のギターが、理性というボーダーラインを乗り超えてぶつかってこいよと煽るように音を響かせた。「border line」、身体の内側から気持ちを熱く沸き立てる楽曲だ。メロウで切ないHAKUEIの歌声に少し心を濡らしながらも、火照る気持ちを覚えていたせいだろう、何時の間にかメンバーらと一緒に感情を熱く高ぶらせていた。
HAKUEIの「暑さや雨をスカッと吹っ飛ばそう」の声を合図に演奏したのが、クールでスリリングな「DEAD or ALIVE」。途轍もなく熱を孕んだ演奏だ。その熱を巧みにコントロールしながら放出してゆくところも、熟練した手腕で観客たちの感情へ巧みにじらしと興奮を与えてゆくPENICILLINらしい攻め方だ。
騒ぎたいジレンマへ刺激を与えるように、PENICILLINは「BLACK HOLE」を突きつけ、もっともっと心を開放していいんだぜと言うように攻めてきた。観客たちもその場で手や身体を揺さぶりながら、高ぶる気持ちを少しでも解き放とうとしてゆく。
続く「Stranger」では、妖しげな闇の空間へ観ている人たちを誘い出す。切なさに浪漫を感じたいとき、この歌が気持ちに寄り添ってくれる。危険な香りを放つクールでスリリングな楽曲だ。でも、こういう曲が名バイプレイヤーのように、ライブへ必要な彩りやアクセントを与えてゆく。
メンバーみんな、この日は浴衣姿。O-JIROにいたっては、頭をお団子ヘアにして登場。千聖は浴衣ではなく着物だそう。みずから「浴衣を着てたらゆかった(良かった)と言おうと思ってた」と、さりげなくギャグをブチ込んでいた。場内にも浴衣姿の人たちも多く見かけたように、誰もが「祭り」というライブに相応しく、夏気分を楽しんでいた。
千聖のギターが荒々しい音を掻き鳴らし、駆けだした。飛びだしたのが「夜をぶっとばせ」。歌謡メロな要素も魅力の一つに据えていた90年代のPENICILLINらしさを象徴する楽曲だ。熱を持った演奏と、高揚し続けるHAKUEIの歌声。気持ちをスカッと一気に解き放つサビ歌の高揚感が堪らない。
黒い音の波紋を広げるよう重厚な演奏が会場中を包み込む。「バラ」の登場だ。闇が支配する世界へ身を浸すように、HAKUEIの艶かしい歌声や色気を持った演奏が、「バラ」が作り出した官能と倒錯の世界へフロア中の人たちを嬉しく溺れさせていった。
ふたたびダークでスリリングな空気が会場中を包みだす。途轍もない熱を孕んだ歌声や演奏が「透明人間パルサー」を通して沸きだした。サビで一気に感情を解き放った瞬間、僕らも一気に心解き放たれた気分になれる。その不思議な高揚感へ触れるたび、病み付きになる。
ここから一気に攻めてやるぞと言わんばかりに、PENICILLINは「赤裸の境界」を歌唱。気持ちを奮い立たせるように熱く歌うHAKUEI。その声をザクザクとした攻めた音で煽り立てる演奏陣。熱を抱きながらも、まさに破裂寸前の高揚を「赤裸の境界」を通して感じていた。言葉を、感情を殴りつけるように歌うHAKUEI。彼の荒ぶる感情を、ラウドでスリリングな演奏がさらに掻き立てる。「Justice」、魂を一気に解き放ち、触れた人たちの心をワイルドに塗り替えるとても攻撃的な楽曲だ。激しく身体を揺さぶりだす観客たち。でも…。
「暴れるな」「声を出すな」と煽るHAKUEI。PENICILLINが最後に突きつけたのが、感情の導火線を一気に燃やし爆発させる「イナズマ」だ。フロアでは、声は出せなくとも興奮できると言わんばかりに、大勢の人たちが身体を揺さぶりだす。どんな状況下へいようと、ビリビリとスパークした感情は止められない。どんな環境の下へ置かれようと、在りたい自分に彼らが戻してくれる。それが嬉しくて、PENICILLINのライブに僕らは触れ続けてゆく。
アンコールでも、PENICILLINは吠え続けていた。動ける範囲が限られていようと、声を上げられなくとも心はバーストさせられるだろうと、PENICILLINは「Mr.Freez」を叩きつけた。モニターに足を乗せ、観客たちを挑発するHAKUEI。同じく千聖もモニターに足を乗せ、攻撃的なリフを次々とぶちかます。その演奏を重いビートで煽り立てるO-JIROとChiyuのリズム隊。暴れろ、暴れろ、暴れ狂えと言わんばかりの姿勢だ。
その勢いを止めることなく、演奏は「スペードKING」へ。立て続けに攻撃的な楽曲を叩きつけ、観客たちのハートに熱狂という火を燃やしてゆく。いつものように容赦ない姿勢で演奏をぶち噛ますメンバーたち。終盤へ向かうほどに激しい演奏を重ね続けてきた今宵のPENICILLIN。まさに、祭りに相応しい、気持ちが騒いでこそのライブを今年も見せてくれた。
会場では、まだまだ熱狂は終わらなかった。ここからは会場へ訪れた人たちのためだけに演奏。しかも選んだ楽曲が「SEX」だもの。暴れないわけがない。観客たちは限られた空間の中、それでも限界を超える気持ちで騒いでいた。メンバーらも、攻撃的な姿勢で噛みつくように演奏。互いに、この日一番己の本能を曝け出した姿をぶつけあいながら、祭りに相応しい光景を作りあげていった。
次は、お馴染みO-JIROの生誕祭「とのさまGIG」だ。この楽しさを、これから始まるメンバーのバースデーシリーズへ繋げようか。
TEXT:長澤智典
セットリスト
- 男のロマンZ(祭りVer.)
- Just a kiss on your 3rd eye
- border line
- DEAD or ALIVE
- BLACK HOLE
- Stranger
- 夜をぶっとばせ
- バラ
- 透明人間パルサー
- 赤裸の境界
- Justice
- イナズマ
ENCORE 1
- Mr.Freez
- スペードKING
ENCORE 2
- SEX